第21話

 別に七之上が恥ずかしい死に様を晒したとしてもエリザベスとしては苦ではない。

 が、彼が死んだ瞬間に、『はぐれ』と呼ばれる魔物となってしまうそうだ。


 召喚者との繋がりが切られて、『はぐれ』の魔物になってしまうと、全ての能力が半減するという枷が掛かることになるらしい。

 そうなると十中八九、悲惨な結末が待っているに違いない。

 ゆえに七之上が死にやすい平原を進むという選択は彼女にとっても望ましくはないのだ。


「つまり、平原を強行突破するのは無しです」


 平原を無理に進むくらいなら、多少の危険は目を瞑って、森に入る方がずっと良いとエリザベスは言う。

 森の中ならば木の実や小動物などの食料を確保できるだろうし、平原よりは水場を確保できる可能性も高いと言うのだ。


 加えて、水場を確保できれば、拠点の構築もより容易となるだろう。


「なるほどねえ」


 七之上としては、文句のつけようもなかった。

 そもそも彼はこういったサバイバルな状況が初めてであり、まず何を優先して考えるべきか分からないのである。


 頼りない自身の考えを元に動くくらいなら、美人で有能そうな高ランクゴブリンであろうエリザベスに、思考・判断・行動の指針など、全てを委ねた方が賢いだろうと判断したのだ。


 つまりは、思考放棄による丸投げである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る