第9話

「まあ仮に、最低ランクを引いたとしてもガチャの魔物だからね。

 そこらにいる魔物より強いから安心しなよ。

 それよりもほら、異世界だよ?

 剣と魔法のファンタジー世界だよ?

 強い従魔を引き連れて手強い魔物をバッタバッタとなぎ倒そう!

 そして、ギルドの依頼をどんどん受けて大活躍をするんだ!

 君にはそれができるんだよ!

 だって、僕が選んだ魂なのだから!」


 神様は腕とこめかみに力を込めて、七之上に異世界の楽しさを吹き込んだ。

 七之上は神様の甘言に乗せられ、生前に読み込んできた異世界転生系ラノベでの、数々の大活劇を思い起こす。

 今でも思い出せる物語のハーレム系主人公たちに感情移入し、どんどんテンションを上げていく。


「そ、そんなにテンプレでファンタジーな世界なのか?」


「そう、ファンタジーな世界なのだよ!」


「もしかして、可愛い女の子たちからたくさんモテちゃう?」


「そりゃもう、えっさかほいさかモテちゃうかも、ね!」


 神様も七之上もノリノリであった。


 しかし、命の価値が軽いという世界である。

 凶暴な魔物がうじゃうじゃと存在している世界が、そんなに甘いわけがない。

 そのことをよく知っているからこそ、神様は不安を持たせないように七之上を持ち上げているのである。

 七之上は、そんな神様の掌の上でホイホイと踊らされる道化の様なものであろう。


 が、その本人は楽しそうなので、まあ別に良しとしておくこととする。

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