第5話

 男の子だけではなく、女性も特典という言葉については心が躍るに違いない。

 しかも、その特典が一つではなく三つも頂けるのである。かなりお得な話であろう。

 老若男女の誰もが諸手を挙げて喜ぶに違いない幸福の時間が、確かにそこにはあったのだ。


 神様が指をパチンと鳴らすと、七之上の目の前に白い大きな箱がポンッという音と共に転がり出てきた。

 上面には、握った拳が入るくらいの丸い穴が開いている。


「転生特典は、この中から紙を引いてもらって、そこに書かれている内容とします」


「あれ、好きに選ばせてくれないわけ?」


「だって僕の持ってる権限以上のことを願われても、叶えてあげられないからね」


 叶えられる特典を紙に書いて引かせた方がコストも安いし、時間も早いし、ハズレもあまり無いから安心だよ、とどこかの料理店のようなフレーズを神様は謳った。


 なるほど、確かにハズレを引かないのは嬉しいことだ、と七之上は考える。


 例えば、異世界には魔法が付き物だというのはラノベやゲームや漫画などといった、物語の中の話である。

 転生する異世界に魔力が存在しないのなら、膨大な魔力を転生特典として願っても意味が無いだろう。


 もし仮に魔力がある世界だったとしても、その量ばかりが無駄に多くて制御できなければ意味が無い。

 魔力があって魔法が使えないという悲しい可能性も、十分に考え得るのだ。

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