第3話

 ルカとロゾを乗せた飛行艇は多くの街や枯れた木々の森を、そして大きな水の流れない砂の川を越え、また幾つもの太陽の輝く世界と月の世界を飛び続けてゆきました。

 ルカはロゾと一緒だったので寂しくありませんでした。なぜならロゾが沢山の話をしてくれたからでした。

 それはルカにとって初めて聞く話でとても驚くものばかりでした。一番驚いたのは空が青く、そして緑豊かな森が昔はどこにでもあって、我々の身近な友人だったということでした。

 また嵐の王サンベルジュが非常に人間を嫌っていることも聞きました。

 理由は人間が美しい大地や海や空を、鉄を焼いた火と油で汚し続けたからでした。

 だから夏になるとサンベルジュと彼ら嵐の一族たちは怒って人間に害を成すのだと言っていました。

 そしてロゾはその話の途中でルカに言いました。

「夏至の夜、君と同じように私にサンベルジュへの道を訪ねた飛行艇乗りの男がいた。私は彼にサンベルジュへの道を伝えるとその男は“ありがとう”といって飛行艇の鐘を鳴らしてサンベルジュのもとへと向かっていった。多くの飛行艇乗り達が夏至の夜に飛び立ち伝説の青い楽園を目指していたが誰もそこにたどり着いた者は居なかった。しかし、その男だけは瞳の中に輝く星を持っていた。もしかするとその男だけは、“光の主の囁き”に答え、サンベルジュの嵐の壁の門を抜け伝説の青い楽園に着いたかもしれない」

 ルカは心の中で思いました。

(それは、きっとお父さんに違いない)

「ルカよ、サンベルジュは北に輝くおぐまのしっぽと南に輝く白鳥が見える夜に現れる。その夜とその場所に我々は行かなければならない。右手に蠍の輝く赤い星が見えるだろう、それを見てこのまま進むのだ。あの赤い星が丁度地平線に消えようとする夜、空におぐまのしっぽと白鳥が輝くだろう、それがサンベルジュの現れる夜だ」

 ルカは静かに頷きました。

「行こう、渡り鳥のロゾよ、嵐の王サンベルジュのもとへ」そして飛行艇は進んでゆきました。

 ルカはお父さんの心に気持ちを寄せるように静かに口元を引き締めて空を見つめました。

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