Ⅲ 魔導書
古い本の山の中に僕が見つけたもの……それは、
黒い革表紙で装丁されたもので表には何も記されていないが、中を見ればそれは明らかだ。
外からでは見えない中表紙には『Goetia』という書名が記されている。
魔導書――それはこの世の森羅万象を司る悪魔を呼び出し使役することで、様々な事象を自らの思い通りにするための方法が書かれた魔術の書である。
その絶大な効力から、宗教的権威であるプロフェシア教会やその影響下にある国々では無許可での所持や利用が厳しく禁じられている。
それでもまあ、その魔術はあらゆる面で有益なので、こうして違法に海賊版が出回っていたりするわけだが……。
航海にも海や風を司る悪魔の加護が不可欠だし、海賊にしても欲しがりそうなものなのだが、やつら、ろくに調べもせずに見過ごしたのだろか? あるいは、もうすでにやつらの航海士が同じ写本を持っていたか……。
いずれにしろ、これは僕にとって一筋の光明である。ここに記された魔術の中に、何かここから逃げ出す方法があるかもしれない!
格子天井から充分に光は入ってくるし、皮肉にも読書をする時間は充分過ぎるほどある……僕は海賊達の目も気にせず、その魔導書を読み耽った。
「ヒャヒャヒャヒャ、こいつ、読書なんか始めたぜ! どうせ絵しかわからねえだろうによ!」
幸い僕が字を読めるとは思っていないらしく、無知にもまったく見咎められることはなかった。
読み進めると、それは太古の昔、ソロモン王が使役していた72柱の悪魔を操るための術が書かれたものだった。
その悪魔達にはそれぞれ得意とするものがあり、どの悪魔がどんな利益をもたらしてくれるのかもちゃんと書かれている。
「……あった! こいつの力を使えば、なんとか逃げ出せるかもしれない……」
そんな72柱の悪魔の中に、今の僕の望みにぴったりな悪魔をついに見つけた。
さあ、次はどうやって召喚の魔術を行うかだ。無論、そんな儀式などしたことないが、式次第は魔導書に書いてあるので問題ない。それより問題なのはそれに用いる道具である。
当然この船倉内で調達するしかないので、僕はまたそこにあるガラクタ類を漁り、手に入れた材料で必要な道具を作った。
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