ヒートソード
廃墟と化した村の南部。
ダンタリオンは、あらゆる建物をなぎ倒し原液で溶かし飲み込み、まっすぐにカムラへ向かって移動していた。
転移石へ達するのも時間の問題といったところだ。
しかし想定していたよりもダンタリオンの進行が遅いのは、グレンたち第一陣の必死な戦いの成果に他ならない。
「皆、よくぞこの場に立ってくれた。こんなにも勇敢な戦士たちと肩を並べ、カムラに
「「「おぉぉぉぉぉっ!」」」
ゲンリュウの声を合図に、討伐隊とハンターたちは一斉に駆け出した。
イービルアイのレーザーやアラクネの糸が降り注ぐ中、数十人の戦士たちが勇猛果敢に駆け抜ける。
「放てぇいっ!」
後方から複数のレーザーが飛来する。
それらはイービルやデビルテングの翼に直撃し、地面へと落とした。
彼らはカムラのありとあらゆるものを使ってダンタリオンを足止めするつもりだ。
後方支援の部隊には、カイシン用の砲台を加工したビームアイロッドが配備され、前衛もジャックボムやフラッシュボムを駆使して魔物たちを地面へ引きづり下ろす。
「はっ!」
熱量を纏った一閃。
クロロが剣を大きく薙ぎ、急降下して襲いかかってきたデビルテングを切り捨てる。
付着した血を払うように、無造作に振るわれた剣の刀身は、灼熱のマグマのように赤く輝いていた。
討伐隊に配備すべく、ファランが秘かに量産を進めていた『ヒートソード』だ。
原理は電撃剣と似ているが、刀身には電気で発熱するジュール鉱石が使われており、柄に加工された雷の杖のよって発熱させ切れ味を上げる機能を持つ武器だ。
「クロロ隊長!」
切羽詰まった部下の声で、クロロは遅れて気付く。頭上でイービルアイが光を収束していたことに。
彼が慌てて左腕を上へ突き出すのと、レーザーが放たれるのはほぼ同時だった。
だが上へ向けられたクロロの左腕に盾はない。
「――アイスシールド!」
白銀の籠手の上に氷結の盾が出現し、レーザーを受け止める。
アイスシールドもヒートソードと同様、量産を進めていたのだ。
「ぐぅぅぅっ」
クロロがレーザーの熱量に耐えていると、近くにいた部下二人がわき目も振らず駆け寄り、アイスシールドを展開した。三人分の盾があろうと、あまりの熱量に氷は削られるが、そのたびに魔力を込め、盾を再生させていく。
照射が止むと、すかさず部下の一人がジャックボムをイービルアイに投げ直撃させる。
「キィィィッ……」
ボムは咄嗟に閉じられた瞼に直撃し、衝撃で背から落下するイービルアイ。
もう片方の部下は既に走っていた。
そして、ヒートソードを振り抜き灼熱の斬撃を見舞う。
「――クロロ隊長、ご無事ですか?」
「ああ、助かった」
クロロは礼を言うと、エーテルを飲んで部下たちと共に次の標的へ駆け出した。
瞬く間に積み上げられていく
魔物たちの死骸は、やがて進行してきたダンタリオンの原液に飲み込まれ、本体の動きが止まる。
だがすぐに新たな個体が生まれ、再び戦士たちに襲い掛かる。
ハンター側にはハナも遅れて合流し、状況は悪くないように思われた。
しかし――
「――ガウンさん!」
「なっ!? ジードっ!」
「ぐはぁっ!」
「ヴィダン! よくも二人をぉぉぉっ!」
一瞬のうちに仲間二人が深手を負い、クラスBハンターのガウンは怒り狂う。
しかし我に忘れたことで大きな隙が生まれ、ノーマークだったデビルテングに背後から襲われた。
ガウンは目を見開き、直撃を覚悟するが、
「――おらぁっ!」
アンが大斧を豪快に振り回し、デビルテングを叩き斬った。
彼女の背後から、リンが倒れたハンターへ駆け寄っていく。
「おいっ! 大丈夫かい!」
アンが声をかけるが、助けられたガウンはばつが悪そうに顔を背け、舌打ちして駆け出した。
戦い続けていれば、どんな歴戦の勇士だろうと疲労が蓄積していくのは止められない。
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