第79話 女神降臨(二つの世界)

「シュンさ~ん、起きて~。あ、違う。半分起きて~♡」


 あれ? 気のせいじゃないよな…。

 まあでも、こんなとこに出てくるわけないし。


「焦らしちゃイヤですよ~♡」


 いやいや、お前相手に焦らしプレイなどできるはずないだろ。

 と、いつの間にか俺はテントの外に出ている。


「お疲れさまです。女神様」


「シュンさん、いろいろ大変ですね~」


 なんか他人事みたいな言い方だな。

「いえ、俺が無能なだけですから」


「何怒ってるんですか~可愛いエルフちゃんとラブラブなくせに~♡」


 ちぇっ、知ってて当たり前か…。隠し事できないからな。

 少しはプライバシーって言葉を考えてみて欲しいもんだ。


 って、あ、そうだ。魔族!


「早速で悪いけど、ドニテルベシュクって奴知ってる?」

「ん~、知ってますよ~」


 禅問答みたいになりそうなので、きっぱりと問う事にする。

「あいつダンジョンで何やってるのかな?」


「彼らは~、ダンジョンそのものには用はないはず~」


「彼ら? 魔族は他にも居るってことなの?」

「居ますよ~、人間ほど多くはないですけど~」


 やっぱりそうなのか。

「という事は、俺が居たから出てきたってことで間違いないのか…」

「シュンさん、モテモテ~♡」


 こいつ…。今日は、茶化す気満々だな。

 もう少し威厳のある降臨できないもんかね。


 ま、でも今更か…。


 ということで、こっちも勝手に話すことにする。


「ちょっと質問。時空魔法で空間転移。地球で言っていたところの瞬間移動って可能だよね?」

「出来ます~。時空を制御できると、そういう結果も得られます~♡

 私が降臨しているのとは違う、もっと簡易で実用的なものです~。ダンジョンの中にはそのうちの固定転移魔法がありますね。解析すれば具体的なヒントが得られますよ~♡」


 そう。ダンジョン深層には転移トラップがあると聞いている。

 そして女神は、空間転移の概念について教えてくれた。それを受けてやり取りしていると、空間を捻じ曲げるような考え方はまだ距離に囚われてるから駄目だとダメ出しを食らう。

 はあ…、これも前途多難。


「もう一つ教えて。亜空間の共有やってるんだけど。2回目から分離しちゃうのは何故?」

「シュンさんは~空間一つに固執してますね~

 その方向で行くなら繋ぎ止めたままにすればいいですよ~♡」

「ん…? 繋ぎ止めたまま?」


「それで考えてみてください~♡」


「分かった…」



 あ、そうだ。全然話変わるけど。


「魔石を持った人間が魔族だよね」

「シュンさん、唐突なうえに直球でくるんですね~その理解でいいですよ~」


 ふむ、やっぱりそうか。


「あと、なんか最近、やたら魔導書に縁があるんだけど」

「可愛いエルフちゃんのおかげ~」


「エリーゼの? ちょっとそれどういう意味だ?」

 聞き捨てならぬ。


「魔眼は、それを持つ者に必要なものを引き寄せるのです~」


 え? そこで魔眼の話に飛ぶの?


「シュンさんも魔眼と同じ力持ってるでしょ~♡(超可愛い」


 うん、それはそうなのだ。俺の当初の気配察知とか、今の探査も鑑定も魔眼と似てるからなぁ…。

 って、もしかして俺も引き寄せる力があるのか?


「シュンさんは、今はそんなに無いかな~。可愛いエルフちゃんも少しずつ治まってくるはず~。シュンさんといっぱいエッチしてるから~♡(微笑」


 その話題やめて。


「フフッたくさん子ども作ってくださいよ~♡」

「なんか、女神の掌の上で踊らされてるみたいだから、素直にハイとは言えん」

「でも~可愛いエルフちゃんの事大好きでしょ~?」


 そんな当たり前の事聞くんじゃないよ。

 

「シュンさん、私を捨てないで~♡♡♡(超超絶妖艶で色っぽい」


 その攻撃やめろって、男の性に付け込むな~!

 身体が反応してしまうじゃないか。

 今でこそエリーゼとエッチできるからいいけど、彼女ナシだとどれだけ辛いか。


 て言うか、女神の色っぽさマシマシになってね?

 これ童貞じゃなくても死ねるレベルだぞ。



 あ、そうだ。


「古き世の使徒がダンジョン魔法を作ったんだよね?」


 女神は一瞬で眉を顰めて少し考え込んだ。


「いつ知ったんですか? びっくりしました~もうその結論を得ていたんですか」


「いやほとんど俺の想像、いやなんとなくだな」

 と言うか、今ひらめいただけだったりする。


 女神はニッコリ微笑んでしばらく俺を見つめた。


 そして、この世界での神話に相当する話を少しだけしてくれた。

 二つの世界が交わってデルネベウムが出来たこと。

 魔核を持つものが暮らしていた世界と、持たないものの世界。

 衝突して砕け消えてしまいそうな二つの世界を救う為に、神と二つの世界樹が力を尽くしたこと。



 え? じゃあ、エルフと魔族の大戦は何のために行われたんだ?



「シュンさんは~私が見込んだ以上の人ですね~♡

 その答えは、いずれ得られると思いますよ~♡(超絶美の化身の笑顔」


 ドキッとしてしまうが何とかスルーして。

 やっぱり、エルフの伝説とかそういうのをもっと読んでみないといけないな…。


「そうですね~。あ、長居してしまいました~。では、そろそろ帰ります~。

 今日も指輪を残しておきますから、ハイオーガの子に上げてくださいね~♡」



 そして女神は俺を抱き締めて、濃厚なキスをした。

 とろけてしまいそう。と言うか溶けた。

 

 (私にもシュンさんの子どもを産ませてくださいね♡)


 女神は俺の耳元でそう囁くと、すぐに光に包まれて消えていった。

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