第8話
ヤバスの出で立ちは魔術師のほとんどがそうであるように、ローブであったが、他の誰とも違ってその柄が、黄金の筋をあしらった紫と紺のタータンチェックであったことに息をのんだ。
「久しぶりやから楽しみやなあ。どこまで潜るつもりなん?」
遠足前の子どものように浮かれるヤバスに、苦虫を噛み潰したような顔を向けるガンドウの視線に気付き、フィルもヤバスも一様に戸惑う。
「いけねえ、それじゃあいけねえね」
「いけねえって何やねん。何があかんねん。腹立つわー」
「お前が美しくなりすぎて、宝石が釣り合ってねえ」
まるでビンタでもされたかのような顔付きでヤバスが固まる。
「魔術師は宝石から力を貰うが、宝石とお前の間で釣り合いが取れちゃいねえ。今こそ義王さま
「でもあれ…」
「自信を持ちねえ」
ガンドウがヤバスの両肩を後ろから
待つうちに現れたお色直しを終えたヤバスを見て、フィルはまたもや息をのんだ。義王拝領ともなるとこういうものかという品。日輪をかたどったダイヤモンドの輪が五つ額を囲み、それぞれの輪の上に
肩で風を切って歩く着流しにうきうきと付き従うシャンデリア女と
迷宮の入口で三人の兵士が守衛をしている。この40年迷宮は沈黙を保っている。よって彼らの役割は外へ出てくる者の見張りというよりは中へ入ろうとする者を追い払うことにある。そのうちの一人、眼帯の大男が何だ何だと口にしながら近づいてくるが、ヤバスの宝冠とフィルの
「やあやあご苦労。精が出るね。隊長はいるかい」
これまた大男の隊長が歩み寄る。
「俺が隊長だ。チンドン屋なら大通りへ行け。許可のない者は迷宮に入ることかなわんぞ」
「お許しがないわけではない」
ガンドウは体調に近づくと声を
「
「迷惑な。
「いや、御役目ご熱心頭が下がる。実はその件もお耳に入っておってな、守衛の方々へのお心づけを預かっておるのよ」
と言いながらガンドウが隊長にいくばくかを握らせる。
「手間は取らせねえ。見た目は大人だが、お
「二時間」
ぶっきらぼうに言い置くと番所へ合図を送る。番所も心得たもので
「お出で、入るよ」
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