第四話 面談という名の恋バナ

 クロサキ先生からの追及は何とか躱した(?)が、これから定期的に面談を組むことに…めんどくせえ。

 (あー、何も面談じゃなくていいんだけどなぁ…)

 「デートしよ」とか「つき合ってよ」とかそういうのだったら歓迎なんだけど。


 授業中、面談のことを考えている内に、いつの間にか帰りの時間になっていた。

 (やっと終わったよ…)

 帰りのホームルームが終わり、机の中の許可書をすべてカバンに突っ込むと、そそくさと教室を出る。

 (先生に見つからないといいけど…)


 「あっ、ナオト君」


 (…あっ)

 この声は…。


 「せっ、先生」


 ですよねー。あんな事バレて、簡単に帰れる訳ないよな。そりゃ。


 「ねぇ、今日も…その…面談しようと思うんだけど」


 「わ、分かりました…」


 (どんな頻度で面談やるんだよ…)

 断れねえ。ここは大人しく従わないと、マジに報告される。


 「良かった!それじゃあ、生徒指導室に」


 「は、はーい」


 で、そのまま先生に続いて、僕は今、生徒指導室にいる。

 僕は前に座った椅子に再び腰を掛け、先生はその向かい側に座った。


 「それで、面談って…何話せばいいですか?」


 「えっ!…うーんと」


 これは何も考えてなかったな、先生。

 それでは、こちらから話題を振らせてもらおう。


 「いい人、いましたか?」


 「えっ…?な、なんのこと?」


 「ほら、出会い系のやつ…」


 先生は落ち着かない様子で、しきりに髪の毛をいじっていた。

 

 「あ、あれはもう止めたわ」


 「そうなんですか…。誰か気になる人でもできたんですか?」


 ここは揺さぶりをかけてみよう。あの夜のフォローが効いてるはずだ!


 「ま、まあ。そうね…」


 先生の頬がぽっと赤くなる。…よし、フォロー成功だ。


 「もしよかったら、アドバイスとかしましょうか?」


 (童貞、彼女歴なしだけど)


 「ほ、ほんと?た、助かるわ!」


 「ええ、僕で良ければ」


 「そんな謙遜しなくても…。そっ、その…ナオト君、結構モテててるんでしょ?」

 

 「モテてる?そうなんですか?」


 「え、ええ。クラスの子からはそう聞いてるけど…」


 言ったやつ許さん。

 

 「そうかな?…僕、今彼女いないですよ」


 「それは…他の女の子からの告白を断ってるからじゃない…の?」


 「僕、告白されたことないですよ」


 「えっ!そ、そうなの?」


 「ええ。本当ですよ」


 なんか今ホッとしなかったか?…気のせいかな。

 

 「てっきりタイプじゃないから断ってるのかと…」


 「そもそも、告白すらされてないってオチです。悲しいけど」


 窓から差し込む光が、オレンジ色になっていく。結構時間経ってるんだな…。


 「そ、そういえば…ナオト君のタイプって…どんな人?」


 来た。先生なりに遠回しに聞いたんだろうけど、お見通しだ。


 「タイプ?そうですね…お茶目で、可愛くて、優しい人…ですかね?」


 「へえ…そうなんだ…」


 め、メモしてる…。怖え…。


 「先生の気になってる人ってどんな人なんですか?」


 「へっ?…ひ、ヒミツかな…」


 先生はそう言うと、笑った。


 「気になるなぁ…もう遊びに行ったりとかしたんですか?」


 「う、ううん。まだ…行ってない」


 「そうなんですか?誘ったらいいじゃないですか」


 「で、できない」


 先生は顔を赤らめると、両手で顔を覆い隠す。…可愛いな。


 「なんでですか?」


 「だ、だって…その…男の人と遊びに行ったこととかないし…何話していいか分からないから…」


 (ここで一気に仕掛ける!)


 「そしたら、僕と遊びに行きますか?」


 「へ?」


 呆気にとられたのか、しばらくぼーっと僕のことを見つめた後、再び照れ臭そうに顔をそむけてしまった。何か返事してくれよ…。


 「…」


 「ほら、僕と行けば練習になるじゃないですか」


 「い、いいの?」


 「ええ、もちろん。先生の助けになるなら」


 しばらく沈黙が部屋を支配する。そして、先生が先に口を開く。


 「じゃあ…お願い…しようかな?」


 「よし、決まり。じゃあ行きましょう」


 「へ?い、行くってどこに?」


 「もちろん遊びにですよ」


 「い、今から?」


 「ええ、早い方がいいですよ」

 

 僕はカバンを背負うと、半ば強引に先生を学校から連れ出した。


 

 


 


 


 


 

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