第5話:幼馴染は料理上手
雪羽は家に居るときは、基本的に一人だ。
両親は離婚していて母親と一緒に暮らしているが、日中は仕事で居ないとのこと。いわゆる母子家庭ってやつだ。
そんな状況だからか、ほとんど一人でいる。
俺が何度も雪羽の家に行けるのはこういった事情を知っているからだ。
小学校からの付き合いだからか、雪羽の母親からも信頼が厚い。昔から雪羽のことをよろしくと言われているからな。
合いカギを持ってるのも母親から貰ったからだ。
つまり、俺が家を自由に出入りできるのは親の公認ってわけだ。
雪羽の母親は仕事で忙しいらしく、家に帰ってこない日もよくある。
そんな日はチャンスだ。
何故なら――
「雪羽ー。今日のメシは何だ?」
「えっとね。お魚の煮つけでもやろうと思うの。安かったからいっぱい買ってきちゃった……」
「おー。いいね。楽しみにしとくわ」
「うん。美味しくなるようにがんばるね」
こういう日は雪羽の家に泊まれるからだ。
今日はこのまま泊まって、明日は一緒に家を出て学校いく予定だ。
もはや何度もやってるせいか、雪羽もすんなり受け入れてくれる。
そんなこんなで日も暮れて、晩飯の時間となった。
「リョウくーん。ご飯出来たよー」
「おう。今行くわ」
読んでいた漫画を置き、居間のテーブルへと移動した。
椅子に座ると、次々と料理が置かれていく。
「なかなか美味そうじゃんか。卵焼きもあるな」
「リョウくんは卵焼き好きでしょ? 少し甘くしたやつ」
「おう。大好物だ。さすが雪羽だな」
「ふふん。リョウくんのことなら色々知ってるんだからね」
「んじゃ。いただきまーす」
まずは魚の煮つけからだ。
一口食べて味を噛みしめる。
「……おお。うめぇ。これイケるぞ」
「そ、そぉ?」
「ああ。めっちゃ美味しい。いくらでも食えるな」
「ほ、本当? よかったぁ。えへへ~」
雪羽はずっと自分で家事をしているせいか、料理の腕はかなり上達している。正直言って、下手な店に行くよりも美味しい。
俺が泊まりに来るのも、美味い料理が目当てだったりする。
しかも朝食まで作ってくれるんだから、いたれりつくせりだ。
「お魚はまだあるから、お代わりするなら言ってね」
「おう。サンキューな」
長い付き合いだけあって、俺の舌に合わせて味付けをしてくれている。
こういう時は本当にありがたい。
食事が終わった後、雪羽は後片付けをし始めた。その間に、俺は風呂入ることになった。
この流れもいつも通りだ。
風呂から上がって部屋で漫画を読んでいると、パジャマ姿の雪羽がドアを開けて入ってきた。
「ふぅ。いいお湯だった~」
雪羽が幸せそうにな顔をしながらベッドへと向かう。
風呂上りなせいか、妙に色っぽく感じる。
「……リョウくん? どうかしたの?」
「い、いや。別に何も……」
「?」
つい顔を背けてしまう。
雪羽はベッドの上に座り、ドライヤーを取り出した。
いつもああやって髪を乾かしている。
「……なぁ」
「なぁに?」
「俺がやってやろうか?」
「え? な、何が?」
「髪乾かすの」
「え、ええ? リョウくんが? ど、どうしたの急に……」
「いいから。それ貸せって。やってやるから」
「う、うん……」
ドライヤーを受け取ると、雪羽の後ろに座った。
スイッチを入れて髪を乾かし始める。
まだ洗ったばかりなせいか、フワリとシャンプーの香りがする。
「今日のリョウくん……優しいね」
「何だそりゃ。いつもは優しくないってか?」
「そ、そうじゃないけど……いつもと違うというか……変なことしてこないし……」
「いちいちうるせー奴だな。じゃあもっと好き放題していいってか?」
「それはいつもやってることなんじゃ……」
こいつも生意気なこと言いやがるな。
そっちがその気なら……
「……よーし。んなこと言うなら、明日はノーパンで登校してもらおうか」
「え、ええええええ!? な、なんでぇ……?」
「お前が生意気なこと言うからだろ。口は災いの元だ。学校に到着するまでパンツ履くの禁止な」
「うぅ……やっぱりイジワルだぁ……」
全く。こいつも学ばないな。
変なことを口走るからこうなるんだ。それぐらい分かっているはずなのにな。
まぁいい。明日は存分に楽しむとしよう。
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