第3話:幼馴染はパシリ

 いつも通り、合い鍵を使って幼馴染の家へと入る。

 今日はとある物を持参している。


「入るぞー」

「……! も、もう……だから……いきなり部屋に入ってこないでよぅ……」

「いちいちうるせーな。何年の付き合いだと思ってるんだ。いい加減なれろ」

「うぅ……」


 さてと。準備しなくては。

 部屋に置いてあったPS4を引き寄せ、買ったばかりのソフトを入れて機動した。

 コントローラー握ってロード画面を眺めていると、雪羽が話しかけてきた。


「それ……どうしたの?」

「ん? このソフトか? 実はさっき買ってきたんだよ。面白そうだったからな」

「ふ、ふーん……」


 その後は特に会話も無く、ゲームを進めていった。




 ふぅ。そろそろのどが渇いてきたな。

 ぶっ続けでやってきたからな。何か喉を潤すものが欲しい。


「なぁ雪羽」

「な、なに?」

「コーラ持ってきてくれよ。喉が渇いたからさ」

「もう……」


 雪羽は読んでいた小説を閉じ、渋々と立ち上がって部屋から出て行った。

 少し待っていると、コーラを注いだコップを持って戻ってきた。


「はい。こぼさないでね……?」

「んなことするかっての。アホなことで心配するなよ」

「で、でもぉ……リョウくんはゲームに夢中だし……」

「大丈夫だっての」


 受け取ったコーラを一気に飲み干し、すぐにコップを空にする。


「ほら。これでいいだろ?」

「う、うん……」

「んじゃお代わり持って来いよな」

「…………」


 何か言いたそうにしていたが、すぐに空になったコップを持って出て行った。

 なんだかんだで用意がいいやつだ。

 俺がコーラを飲むと分かっていたから、予め買っていたんだろう。

 本当に優秀なやつだ。




 しばらくゲームを進めていると、道中のボスモンスターに敗北してしまった。

 何回かトライしてみたが、やっぱり勝てなかった。どうやらレベル不足のようだ。

 ここまでレベリングもしてなかったし、最短で進めてきたからな。

 さすがにこのままでは先に進むことが出来ない。

 かといってレベリングも面倒なんだよな。


 ふーむ……あっ。そうだ。


「おい雪羽」

「な、なに?」

「お前が代わりにレベリングしてくんね? 正直ダルいんだよな」

「え、ええ……」


 そう。雪羽にレベリングをさせればいいんだ。

 こいつはそういう時に役に立つからな。


「わ、私はやったことないんだけど……」

「ただのRPGなんだし、複雑な操作は必要ねーよ。お前でも出来るって」

「そ、そうかな……?」

「いいから。早くやれよ。先に進めないだろ」

「わ、分かったよぅ……」


 コントローラーを渡すと、雪羽が慣れない手つきで動かし始めた。

 けどすぐ慣れるだろう。こいつは意外と器用だしな。


 さてと。

 俺は漫画でも読んで待っているか。

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