第16話 女神との対話で考えてきたことを説明した場合(3)
滝に直接は設置しないで、短い二分割の竹を用意して、取り付けたり、取り外したりできるようにした。
途中で90度、水道が曲がり、そこからは実験用の水田まで、竹の水道をつなげた。
「ノイハ、短い竹を取り付けて、滝の水を流してくれ」
「おう、任せろ」
ノイハの声がした後、水音が近づいてきた。
90度に曲げたところで少しこぼれるが、実験用の水田に水が入っていく。
「わあ・・・」
スーラが嬉しそうだ。水遊びが好きだからかもしれない。
流しそうめんの会場のような水道だが、これで水田が潤うのなら十分だ。三十分もすると、二メートル四方の実験用水田に水が満たされた。
ここの土が水となじんでいくように、水温がこれで少し高くなるようにしておきたい。
それから三十分くらい、網や縄梯子を作るなど、いろいろな作業をしながら様子を見たが、水が抜けて行くこともない。排水路は用意してあるが、竹板と石で堰き止めてある。
並行して、新しい実験用水田も耕してある。竹板が足りないので、水はまだ入れられない。
戻って、出来上がったスープを食べながら休憩させる。
その間におれは『高速長駆』で下流へ走り、根元から刈り取った稲を五十束くらいと、スイカをひとつもぎとって戻った。
スイカはとても好評だ。
食事中に、刈り取った稲を脱穀して、種もみは竹筒へ入れた。
食後は、土兎と森小猪の様子を確認し、雨よけに使った竹板を減らして、その代わりに稲わらを並べた。いずれ乾燥して、屋根代わりになるだろう。雨よけには少し弱いが、日除けには丁度よい。
竹板はそのまま、新居の建築に流用する。三段目の床板兼屋根にするのだ。
一人では苦労した樹上間の吊り橋づくりも、これだけの人数がいれば、ロープや縄梯子を投げ渡すことで、簡単に作れる。やはり人手は力だ。
まだ屋根はないが、晴れているなら、樹上のスペースは三つ増えたことになる。
また小川に移動して、棒術の修行や文字の学習をする。ジルやウルに教わったカタカナをみんなが確認し合って書きとっている間に、ジルやウルには、おれが漢字を教える。
日本語も少しずつ、教えている。『南方諸部族語』とか、『神聖語』とかのスキルがあるんだから、文字や言語の学習はスキル獲得の可能性を秘めているはずだ。
いつかは、『神界辞典』に書かれている文字も教えて、『神聖語』も勉強していきたい。
棒術はアイラがみんなに教えているが、おれも見よう見まねでやってみて、棒を振り回している。
これを続けて棒術のスキルが身に付いたとしたら、さらに、そこから剣術とかに発展しないだろうか、とたくらんでいる。
一時間ほど棒術をみんなに教えたら、アイラはおれに挑戦し、もてあそばれて敗北するというのが棒術の修行の流れだ。アイラと手合わせするとき、おれは棒など持ってはいないけれど。
滝シャワーは男が先、女が後、と決めた。ノイハの強烈な希望でそうなった。
たぶん、濡れた身体にはりつく服が透けて見えそうだから、先に水を浴びて、後から戻ってくるようにさせた方が乾かないと考えたのではないだろうか・・・というのはおれの思い込みかもしれないが。
寝る前にセントラエムに話しかけたら、普通に会話ができたので安心した。昨日のクマラのことでずっと話せなかったら困るので、本当に良かった。
しかし、クマラのことはあきらめたようだが、今度は、アイラと二回目を! とか言い出したので、それも華麗にスルーしておく。
まあ、アイラとなら成人同士、合意があればおれもそのつもりがない訳じゃない。おれにだって人間らしい性欲はある。
そう考えると、ノイハやセイハは、どうなんだろうか。当然だが、滝シャワーにあれだけ反応するノイハに性欲がないはずがない。
いつか、二人にもいい相手が見つかるようにしないといけない。
周縁部の二つの村を大牙虎から救って、交流できる人間を増やさなければ、二人のお嫁さんを見つけられなくなるかも、などと考えてしまった・・・。
次の日も、その次の日も、さらに次の日も、もうひとつ次の日も、アコンの村での生活向上を一番に考えて、いろいろな作業を重ねた。
きのこ類の採取地や岩塩の採掘地への、道案内ロープを張ったし、岩塩掘りはかなり真剣にやった。
最初に石斧でやった時よりも、大牙虎の牙がある今は簡単に岩塩が採れた。
周辺の探検により、どう見てもパイナップルだよな、という果物を発見した。
他のみんなは、それが食べられるし、美味しいなんて、その見た目から、全然信用しなかったけれど。
パイナップルは群生していたので、ここにも道案内ロープをつないだ。
それとうるしの木も発見した。これで、接着剤的なものが手に入った。幹に傷をつけて、樹液を竹筒に入れる。
接着剤代わりのうるしはすぐに使った方がいいと思ったので、河原での隙間時間に、弓を作った。
既に用意していた、太さが足りずに建築資材としての竹板には使えない、竹の上部の細目のところから割っておいた材料を利用した。
幅3センチ、長さ50センチくらいのものを核に、その中央部分に長さ10センチくらいのものを腹同士でうるしを塗って合わせた後、細い芋づるでぐるぐると巻いて結ぶ。
ここが弓手、つまり左手で握るところだ。長い方が内側で、細い方が外側になる。反対にすると反り易いが、弓は弱くなってしまうだろう。
さらに長さ30センチくらいのものを二本用意して、それぞれに弓弦をかけられるくぼみを削り、まずは上部に10センチ分だけ腹合わせでうるしを塗って、ここも芋づるでぐるぐるに固めていく。
同じように下部10センチ分だけ腹合わせでうるしを塗って、ここも芋づるでぐるぐるにする。
これで中央に反りにくい背中向きの部分と、上部と下部には反りやすい腹向きの部分ができた。
上部に細い芋づるから作った弓弦をかけて、大木に押し当てながら、弓をくねらせて下部にも弓弦をかけてみた。なかなかの張りで、素引きしてみると、いい反発力を感じた。
同じく竹の上部の細めのところから、矢も何本か用意した。鳥の羽が手に入れば、矢の直進性もより高くできるから、日常的に意識して探すように全員に頼んだ。
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