第13話 女神と相談して、人命救助に向かった場合(2)
レベルは一番高くてノイハの3だ。ムッド、ヨル、クマラがレベル2で、セイハは7歳のスーラと同じレベル1だ。
セントラエムの話によると、レベルは年齢とかに関係なく、所有するスキルの数で決まるのだけれど、こうやってステータスを見ると、セイハが弱過ぎる気がしてしまう。妹のクマラよりもレベルが低いというのは、兄としてのプライドにかかわるだろう。
まあ、みんなはこうやってステータスを見られる訳ではないので、数値として気になることはない。その代わり、ステータスの差は、はっきりと行動にあらわれてしまう。竹を運ばせると、14歳のセイハよりも9歳のムッドの方が役に立つ、とかね。
続けて、縮尺を可能な限り小さくして、スクリーンに出せる最大の地図を出す。
ああ、スキルレベルが上がったんだな、と分かる。
今までよりも、広い範囲が示されている。
アコンの群生地を中心として青い点滅があり、大森林をほとんどカバーして、南側の石灰岩の台地も範囲になっている。
大森林外縁部の北北東にある青い点滅は虹池の村のジッドたちだろう。
そうすると、北北西の赤い点滅は大牙虎の群れだ。ここが、ダリの泉の村なのだろう。
西北西に、黄色の点滅がある。花咲池の村ではないか、と予想する。
あれ? と思うのは花咲池から大森林に入ったところで、やはり黄色の点滅がある。日没した後に、大森林の中にいるのは不自然な気もするが、泊まりで狩りをしているのかもしれない。
「セントラエム、西北西に、何か動きはあるかな?」
・・・私が把握できることでは、スグルに伝えられることはないようです。
「そうか。花咲池の村で何かがあったのかもしれない。夜間の警戒を頼む。問題があればすぐに起こしてほしい」
・・・はい。任せてください。
「空気が重い気がするけど、明日は雨かな?」
・・・おそらく、そうでしょう。その気があれば、晴天祈願はできますが?
「そんなこともできるんだ。セントラエムはすごいな。でも、雨でいい。ここに来てから、みんな休みなく頑張ってるし、雨なら明日はこのツリーハウスでのんびりできるさ」
・・・スグルはすばらしい族長だと思います。村人たちの休息にまで気を配るとは。
「族長、ねえ・・・。まあ、一番強いし、しょうがないか。
本当は別に強い訳じゃなくて、レベルが高いから能力値がダントツに高いだけなんだけどね・・・。
ノイハやセイハが大牙虎を蹴ったり叩いたりして与えられるダメージの何倍もの力を一度に加えられるだけ。だけど、それが圧倒的に飛び抜けているから強い。
まあ、族長と言われてもまだ実感はないかな・・・。
それでさ、セントラエム、『鳥瞰図』のスキルレベルが上がったみたいで、たぶん、だけど、この前行った虹池の村なんかも、地図内におさまるようになった。
おかげで、大牙虎の動きはかなり把握しやすくなるけど、これでスキルレベルは10とか、そういう感じかな?」
・・・いいえ。スキルレベル10というのは、ほとんどならないものです。正確に『鳥瞰図』のスキルレベルを確認してみますか?
「どうやって、確認するの?」
・・・オーバに対してであれば、わたしは『神眼看破』のスキルで、ステータスを細かく確認できるのです。
「いや、今はいいよ。また、知りたいと思ったら頼む。それよりも、今日はありがとう。言われた通り、川を下って探索したら、最高のものが手に入ったよ。これが、セントラエムが教えてくれたものだろう?」
・・・そういう訳ではないです。『神楽舞』というスキルを使って、占いのようなことをして、それで感じたことを伝えただけですから。何かが見つかるとは思っていましたが、何が見つかるのかは分かっていませんでした。
「そっか。それでも、女神の守護に感謝するよ」
・・・明日も、気をつけて。
「ん・・・」
さすがに興奮し過ぎて、おれも疲れた。
でも、米を見つけて、興奮しないはずがない。
狩猟、採集の生活でもなんとかなりそうなくらい、食料は豊富だが、稲作が出来れば、さらに安定した食料が保存できるので、農耕定住が期待できる。
先に進めていた栽培実験中の豆は既になんとかなりそうだし、今回はスイカも発見した。
教室のベランダで、ペットボトルでの稲作体験を何年も続けて試したが、まさに一粒万倍、秋の家庭科での調理実習は自作した米で、カレーライスを作っていたくらいだ。
品種改良だの、なんだの、といった現代の米とは違うかもしれないが、確保したまさにその場所と同じ気候での栽培だ。成功する可能性は高いと期待できる。
今夜はいい夢を見たいものだ。
翌朝、雨の音で目が覚めた。
ジルとウルも目を覚ましていたが、雨だとできることも少ない。
とりあえず、ハンモックがない東階の二段目、セイハとクマラがいるところに移動する。セイハはまだ寝ているようだが、クマラは目を覚ましていた。
「オーバ、どうしたの?」
「雨だと、作業はできないからな。ここはハンモックがないから、こういう時は、みんなが集まる場所になる。寝床なのにすまないな」
「いいえ。それは気にしないで。それよりも、ウサギやイノシシに、雨よけがいると思うけど」
「ああ、そういや、あのままじゃ雨ざらしだな。ちょっと、竹を持って行ってこよう」
「わたしも行くわ」
「ジルも」
「ジルはここでみんなを集めて待っていなさい。女神へのお祈りも忘れずに。竹は大きいまんまじゃ、まだジルには運べないからね」
「分かった、そうする」
おれは、クマラをともなって、ツリーハウスを下りた。
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