第12話 女神のアドバイスで周辺を探索した場合(3)
食事以降、いろいろと話して、仲間たちのことが分かってきた。
セイハやクマラは頭の回転が速い。話が通じやすくて助かるし、クマラは、声は小さいが、とても協力的だ。ノイハの明るさは仲間の雰囲気を支えている。ノイハがいれば、逆境も前向きに乗り越えられそうだ。ヨルは、まだ、よく分からないが、何か、心配事があるような感じだ。
ジッドの子どもたちは、遺伝なのか、才能の塊という気がする。
ジルとウルは、おれに対する信頼が厚く、教えられたことを全力で吸収しようとしている。
このメンバーなら、どんな困難も、乗り越えられそうな気がしてきた。
ツリーハウスは、樹上の寝室にジッドの子どもたち、東階の二段目の毛皮の上で、セイハとクマラの兄妹、一段目にはハンモックを設置してノイハ、西階の二段目には同じくハンモックを設置して、ジル、ウル、ヨルのオギ沼の村三人娘、一段目にもハンモックを設置しておれが寝ることになった。
ジルとウルは、ちょっとだけさみしそうだったが、何も言わなかった。今回の旅の間で、離れて眠ることにも慣れてきていたからだろう。
夜にはセントラエムと相談する。
もらえたアドバイスの中で一番は、小川の流れに沿って北へと探索すること。
女神の神託だとか言って、みんなにも伝えよう。
翌日から、いろいろな作業を一緒に行い、生活の改善に取り組んだ。
最初は、竹の確保だ。竹を切り倒して、資材を確保する。ツリーハウスは今のところ十分なスペースがあるが、他のアコンの木を使って、セイハたちの家や、ノイハの家、それからいつかは来てくれると信じて、ジッドの家も必要になるだろう。それに、土兎や森小猪を捕まえて、逃がさないようにするための柵づくりも竹が欠かせない。
ジルが一人で頑張るので、ムッドとスーラも、一人で竹を伐り倒そうとしている。道具の数がたりなくなるので、おれはセイハやクマラ、ヨルに指示を出しながら、ノイハとウサギやイノシシを生け捕りにする方法を考え、芋づるロープで網をつくった。
ひとつめの竹林はまだ竹が残っているが、近いうちに切り倒してしまうことになりかねない。まあ、基本、竹は地下茎だから、また生えてはくるんだろうけど、この辺りの日当たりはだいぶ変化しているので乾燥してしまうと問題がありそうだ。そうなると、早めにもうひとつの竹林に伐採箇所を変更した方がいいのかもしれない。
竹を運んでアコンの群生地に戻った後は、小川で粘土掘りをした。セイハのアドバイスは的確で、川沿いの数か所から掘り出した粘土が岩陰に集められた。土器づくりの材料になる。セイハが得意分野で活躍できて、兄よりも嬉しそうにしていたのは妹のクマラだ。この二人は仲が良くていい。
一日目はここまでで、あとは水やりくらいしかできなかった。食事と滝シャワーを済ませて、ツリーハウスに帰宅。ハンモックで寝たいというジッドの子どもたちには、ジルとウルが寝床を交代してあげた。
二日目、二分割の竹板を立てた竹柱に結んで、五メートル四方の囲いを四つ、漢字の田の字のように設置した。ビワ畑予定地の近くだ。アコンの群生地周縁である。
捕まえたウサギやイノシシを入れて、逃げられないように、高さは約一メートル。ノイハによると、これで飛び越えられるようなことはないはず、とのこと。なぜ五メートル幅なのか、と聞けば、それ以上広くすると、助走が十分で、森小猪なら柵を飛び越えてしまうかもしれないからだ、とのこと。
ノイハにしては、よく考えている、と言うと失礼かもしれない。
思ったよりも早く片付いた。人数が増えたことによる作業効率の変化だろう。これからは、そこも計算に入れて考えたい。
余った時間で、ネアコンイモの芋掘りをした。
芋掘りはともかく、その後の芋づるの確保は、ノイハとムッドの琴線にふれたらしい。アコンの木をらせん状に、のぼったり、おりたりしながら、芋づるを確保していく。
フィールドアスレチックのような感じだったのかもしれない。大自然の遊具か。セイハは、そういう運動的な感じはお断りします、みたいなところがある。
掘った分だけ、種芋を埋めて、水をやる。こっちはジルとウルが先頭に立って、女子組がてきぱきとやってくれた。セイハもクマラに促されて手伝っていた。
種芋を育てている栽培実験室では、水だけでなく、アコンの根元の土を少し混ぜたらどうか、というクマラの提案におれも同意して、さっそく実行した。
クマラは、これまでのいろいろな場所でつくってみたネアコンイモの違いについて説明した時に、それを思いついたらしい。
後で分かることだが、アコンの根元の土をほんの少し混ぜるだけで、種芋から生えてくる芽の数が段違いに増える効果があった。
これは、イモの生産に関して、完全に余裕が生まれる状況をつくった。クマラがいて本当に良かった。セイハもそうだが、この子はそれ以上に賢い。
午後からは、みんなでウサギとイノシシを追い回した。ノイハの言う通り、本当にたくさんの土兎と森小猪がいた。
そういえば、セントラエムも、大牙虎とかが逃げた代わりに、弱いウサギなんかが集まってきていると言ってた気がする。
わーわー、きゃーきゃー、と言いながら、ノイハの指示に従って、追い立てる役、捕まえる役に分かれ、最終的に狭い二本の木の間にうまく追い込むことで、土兎を五羽、森小猪を六匹、捕まえることができた。
こんなに楽しい狩りなら、毎日でもいいかも、などと思ってしまった。
捕まえた土兎は、オス三匹、メス二匹。森小猪はメス四匹、オス二匹。
四つの柵に分けて、とりあえず閉じ込めてみた。
ノイハの予想通り、森小猪は飛び越えようとしても助走距離が足りず、逃げられない。土兎については、逃げようともしない。森小猪は成獣で体長六十センチくらい。竹の柵に突進していたが、跳ね返されていた。
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