第7話 女神と子ども二人の樹上生活を向上させた場合(1)
おれの隣で、ジルとウルは寝入っている。
寝顔はとても穏やかだ。
二人の頭を優しくなでながら、おれはセントラエムに話しかける。
「セントラエム、いるんだろ」
・・・はい。もちろん、です。私は、スグルの守護神、ですから。
「今日はありがとう。セントラエムの言葉がなかったら、大牙虎とは戦わなかったし、美味しい肉も食べられなかった」
・・・全ては、スグルの力、です。
「そうなのかな。そうだと嬉しいけれど、偶然の力って気がするな」
・・・偶然、ですか?
「大牙虎が来る前、セントラエムが、何か言いかけてたよな。あれ、転生する前の、スキルのことを聞こうとしたんだろ?」
・・・そうです。転生の広場で、どうやって、転生ポイント以上の、スキルを、獲得したのか、聞きたかった、のです。
「セントラエ・・・ムが、瞑想していた間のことだよな。あの時・・・」
あの時はまだ、セントラエルだった。
おれは、あの時のことを思い出しながら、セントラエムに説明した。
スキル選択の説明文を読んだら、頭の中に、スキル獲得の知らせが聞こえてきたこと。
一般スキルのうち、基礎スキルは一回、応用スキルは二回、発展スキルは三回、説明を読んだらスキルが獲得できたこと。
特殊スキルと固有スキルは何度説明を読んでも獲得できなかったこと。
転生ポイントは、消費されなかったこと。
その後、転生ポイントを使って、固有スキルと特殊スキルを選んだこと。
セントラエムは、時折、質問を返しながら、おれの話を聞いていた。
・・・やはり、通常ではない、状態だと、思います。
「・・・おれは、原因は『学習』スキルがレベル最大だったことにあるんじゃないかって思ったんだけど」
・・・『学習』スキルが、あの場で機能していて、スキルが獲得できた、ということ、ですね。
「でも、特殊スキルや固有スキルでは、そうならなかったし、転生してから、『神界辞典』でいろんな一般スキルの説明を何度読み返しても、どんなスキルも獲得できなかったんだ」
・・・それは、あくまでも、『古代語読解』、のスキルで読ん、でいたので、説明への、理解が十分、ではなかった、ということは、ありま、せんか?
「なるほど。じゃあ、実験してみよう。セントラエムに読み聞かせてもらってから、おれが反復するってので、どうかな」
セントラエムも協力的で、二人ともスクリーンに『神界辞典』を開き、同じスキルのページを確認した。
いくつかのスキルの説明を、セントラエムの読み通りに復唱する。そして、それを繰り返す。
スキル獲得の声は聞こえてこない。
十種類のスキルの説明を3回ずつ読み上げるのを繰り返した時のことだった。
『「神聖語」スキルを獲得した』
説明を読んでいたスキルではなく、セントラエムに読み上げてもらっていた言葉、『神聖語』スキルを獲得した。
・・・レベルが上がりました! スキルを獲得したのですね?
「いや、説明を読んでいたスキルじゃなくて、獲得したのは『神聖語』スキルだね」
・・・『神聖語』スキル。それはそれで、すごいですけれど。
「やっぱり、説明を読んでも、スキルは獲得できないみたいだね」
・・・今、『神聖語』スキルを獲得したのなら、私が読み聞かせなくても、スグルが自分で読めるようになったはずですよね?
「そうか。自力で読めば、獲得できるかもしれない・・・」
今度は、セントラエムの力を借りずに、『神界辞典』にあるいろいろなスキルの説明を繰り返し読んでみる。
それでも、やっぱりスキルは獲得できない。
このままでは、単なるスキル博士になりそうだ。『記憶』スキルが暗記を可能にしているため、膨大な辞典の知識が脳内に保存されていく。
「自分で読んでも、やっぱり、スキルは獲得できないな」
・・・説明を読んでも、スキルは獲得できないということですか。
「でも、あの時は、説明を読んだだけで、スキルが獲得できた」
・・・違いは、場所ですね。
・・・転生の広場という天空島と、スキル選択用のスクリーンの存在が、現状との大きな違いです。あそこは転生者にスキルを与えるための場所、ということでしょうか。
「『学習』スキルは関係ないのかな」
・・・いいえ、『学習』スキルのレベルが最大だったことは、関係あると考えられます。
・・・それに、スグルの転生後のスキル獲得のペースは、私たち下級神が上級神さまから教えられたものとは全く違いますから。
「どれくらい、違うんだろ」
・・・一般人は、一生を終えた段階で三~七レベル程度。つまり、人生五十年として、獲得できるスキルは三~七個、十年でスキルは一つか二つというところですね。スグルは約半月で五つのスキルを獲得しています。この数は異常というほかありません。
「やっぱり、『学習』スキルの影響かな」
・・・それ以外にも、基礎スキルは全て最大レベルなので、それぞれが何かの影響を与えているのかもしれません。
セントラエムの言葉に、おれは自分自身の存在がとてつもなく異常なもののように感じられた。
実際、前世の自分とは、大きくかけ離れている実感がある。
まあ、気にせず、やっていくしかないのだけれど。
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