第157話 顔面格差社会……!
アナスタシアを励ましながら俺達は、神樹へと歩を進める。神樹への道のりは真っ直ぐで、時折「神樹はこの先30m→」みたいな日本語の看板がある。
「神夜の仕業か……。中途半端に日本の看板を意識してやがるな。どうせやるならコンクリも作れよ」
『ヨーイチ、コンクリってなに?』
「人をドラム缶に入れて、海に沈める為に使うものだよ。主に悪い人達が使うものだな」
『ふうん、悪い人って神夜みたいな人?』
「あれはまた違うんだよなあ、うーん大人の不良みたいな感じかなあ」
『ヨーイチ、物知りなんだね』
リュイが純粋な瞳で、俺を見てくる。まっ眩しい! その可愛さが眩しい!
「洋一君、リュイちゃんに適当な事を教えちゃダメだよ。コンクリは、人を殴る武器を作る物だよ」
『武器なの? ふーん。強い武器なの?』
「地球では強い方だよ」
『葵の方が物知りなのね! ヨーイチも見習わなきゃだめよ!』
一瞬で俺の株が師匠に奪われた……! 師匠恐ろしい子!
「二人とも変な事ばかりリュイ様に教えないの。道路や家を作る時に使う材料ですよ」
虎次郎の上から蘭が冷静なツッコミをしてくる。
『二人共嘘ついたの!?』
リュイから疑惑の眼差しを向けられる。さっきまでは、尊敬に満ち溢れた目だったのに! 一瞬でゴミを見る目に変わってやがる!
「嘘じゃない! テレビで見たし!」
「僕のだって嘘じゃないよ? 実際に武器として使われていたし」
『もー知らない!』
頬を膨らませてプイッと、そっぽを向くリュイ。せめて、虎次郎の上でビリビリだけはやめてあげてくれ……リュイの静電気で、毛がゴワゴワしてるから。
「それより洋一、あれが神樹じゃない? 近くに来ると物凄く大きいわね」
蘭と共に神樹を見上げる、でっでけえ! 下からじゃ天辺が見えないぞ。幹も枝も太いし、立派なんだが……違和感があるな。
俺は違和感の正体を確かめる為に、神樹に近付き幹に触れてみる。
「お前、弱ってんのか?」
理由はわからないが、神樹が弱ってる気がする。
「お前の言葉はわからないけど、弱ってるのはわかるぞ。蘭! なんとかならいかな?」
「うーん? 原因がわからないからなあ」
『原因ならアースに聞けばいいじゃない』
リュイは簡単に言うがなあ。
「アースに聞けばいいじゃないって、そんなパンが無ければ紅茶を飲みなさい的に言われてもなあ」
『パン? 紅茶? わかんないけど、アース出てきてー。神樹が弱ってる理由教えなさいよー』
『お断りしまーす!』
『ちょ! なんなのよ! 手伝いなさいよ!』
『悪質な勧誘はやめてくださーい!』
『勧誘なんてしてないわよ!』
なんだ? リュイが地面を睨みながら怒鳴り散らしてるけど、どうしたんだ? モグラに話しかけたりしたい年頃なのかな?
「洋一、アース様の声が聞こえたり、姿が見えたりは?」
「見えん! リュイが地面に怒鳴ってるようにしか……。なんかここ神樹の魔力かな? それが強過ぎてあんまり見えないんだよな」
師匠が剣を地面につけ
「やれやれ。魔力の見分けはまだできないみたいだね。仕方ない、僕が捕まえてあげよう━━そおっれ!」
師匠の剣から魔力が伸び、リュイが怒鳴っている方向に非常に濃い魔力の線が見える。
「精霊の一本釣りだっ! フィイイイイイッシュ!」
『おい! 人間! 離せ! なんだこの魔力! リュイ助けて!』
『知らない……あっ! ヨーイチに加護をあげてくれたら助けてもいいけど? どうする?』
『脅す気か!』
「アース君だっけ? 僕の魔力の糸は少しずつ締まっていくから、その内身体が輪切りになるよ?」
師匠がニヤニヤしながら、剣先に向けて話しかけている。精霊が見えない人から見たら、師匠は頭のおかしい人にしか見えないだろうな。
『どーするう? アタチの言う事聞くなら解放するけどお? アースも精霊なんだから、葵が嘘を言ってないってわかるわよね?』
うわあ、どう見てもこっちが悪人だよ……。可愛い顔した極悪人だよ。
『クッ! わかったよ! そこの顔面偏差値がマイナスな男に加護あげればいいんだろ!』
いきなり土が俺の目に向けて飛んできた。
「ぎゃっ! 目が! 土が口に!」
『これでいいんだろ、なんで僕がこんな奴に加護をあげなきゃいけないんだよ……不本意! 超不本意! あーやだやだ、加護あげたんだから離してよ!』
茶髪で短髪に茶色い瞳のリュイと同じくらいの身長の精霊が、俺に向かってめちゃくちゃキレてる。
「おい! お前なんで俺に土をぶつけたんだよ!」
『不細工だから。僕を捕まえてるカッコいい人なら、普通にあげたけど、加護をあげたくなかったから』
てめえ! 師匠と俺の顔を見比べて不細工だと! 師匠はイケメンだけど、俺は普通だ! 不細工じゃない!
「俺は不細工じゃねえ! 普通だ!」
『ハッ鏡かそうか?』
俺の顔を見ながら煽ってきやがる! コイツ嫌いだ!
「殺す! コイツは殺す!」
「洋一、殺しちゃだめだって。神樹を元気にしてもらうんでしょ?」
蘭に宥められている最中にアースの顔を見ると、舌を出して、親指を下に向けてやがる!
「あああ! 今! 親指を下に向けやがったぞ!」
「洋一! 煩いからあっちで虎次郎と遊んでて!」
蘭に怒られた……理不尽過ぎる! 俺は悪くないのに!
「洋一君、どんまい」
師匠が俺の肩を叩きながら慰めてくる。目は笑っていたけどなあ!
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