第152話 普段着ない服を着ると魅力が何倍にも上がる


 アナスタシアと俺を聖水のツンとした香りが包む。アナスタシアは泣いている、俺は苦笑いをしている。師匠は、こっちをチラチラ見ている。


「おい、ションベン垂れ供」


 玄同さんが俺達をションベン垂れと一括りにしてきた。悲しいが事実だから、否定できない。


「俺は邪神と事構える為に、修行に行く。お前らはまあ、死なない程度に適当にな。それとそこの小僧」


 玄同さんが師匠を指し


「日本に戻れたら、玄同流実践剣術の門を叩け。お前なら師範位にはなれんだろ」


 剣術の先生だったのかよ……だから強いのか?


「ションベン垂れ、俺の強さはうちの流派とは関係ねえよ。それじゃなあー」


 玄同さんは軽く手を振り、俺達の来た道をゆっくりと歩いていく。


「はあ、なんだか苛烈な人だったなあ」


「洋一君……臭いんだけど」


「師匠その言葉、アナスタシアにも刺さってますよ」


「あっアナスタシアちゃん違うんだよ? これは洋一君の尿臭がキツくてね……!」


 俺をディスりながら、アナスタシアをフォローしているが、俺より漏らしてる彼奴のが臭いんじゃないか?


「蘭変えの服くれー後アナスタシアをどうにかしてくれー」


「洋一のはアイテムボックスにあるでしょ。アナスタシア様のは、どうしよう取り敢えず丸洗いするまで、洋一の服着るくらいしかないよ」


「あーじゃあ川で水浴びするか。アナスタシアもそれでいいかー?」


「アナスタシアちゃんが水浴び!?  あっダメだ鼻血が」


 鼻血を盛大に吹き出し、赤い顔で気絶する師匠。めちゃくちゃ幸せそうな顔をしてる。まだ見たわけでもないのに……。


「蘭、今のうちに水浴びを終わらせよう」


「そっそうね。アナスタシア様、虎次郎に乗ってください。葵は魔法で運びますから」


 虎次郎が一瞬めちゃくちゃ嫌そうな顔をした、そりゃ嫌だろうな。ションベンまみれだし。


「さっ行こう!」


 俺達は猛スピードで川まで走った。師匠が幸せな夢を見ている間に、ミッションを遂行しなければならないから。

 

 川に付き先ず俺が水浴びをする。水浴びをして着替え終わると、俺と師匠は分厚い石の箱に閉じ込められた。天井には空気穴が空いている。側面に穴がない辺り、蘭の本気のガードだと言うのがわかる。


「らっらあん? ここまでしなくても見ないよ?」


「だめよ! 洋一はスケベなんだから」


 はあ。早く水浴び終わらねえかなあ、正直アナスタシアの裸なんて誰得なんだよ。レイ先生とかアーレイの母ちゃんとか桜さんなら、めっちゃ見るけどさ。


 師匠は未だにニヤニヤしながら、眠っている。この人強いしイケメンなんだが、こう言うところが女ウケするのか? ギャップ萌えか?


 30分が過ぎると石の牢が解除される。


『服借りたから……』


 俺の服のダボダボ具合がなんとも、可愛いな。こいつポテンシャルの化け物か……!


『なっなに見てんのよ。にっ似合わないって言うんでしょ!』


 赤い顔をして頬を膨らむアナスタシア。こいつ! これがギャップ萌えの威力か! 可愛すぎる!


「こっここは……アナスタシアちゃんが裸でえっと」


 師匠がアナスタシアを見て、時が止まる。


「うっうおおおお! めちゃくちゃ可愛い! 最高じゃないか! 天女降臨!」


『やっやめてよ……』


 モジモジするアナスタシア。


━━パシャッ! パシャッ! 


 パシャッ? なんの音だ? って師匠スマホ持ってたのかよ! アナスタシアは気付いてないが、超スピードで写真撮ってやがる。なんて言う才能の無駄遣い。


「ってかでけえ川だな。端が見えねえぞ、こんな川からどうやって探せば……? なんだあれ?」


『ヨーイチ、あそこ魔力が渦巻いてる! 飛び込んでいい?』


 静かにしてると思ったら、魔力の渦に興味津々かよ!


「だめだよ! 危なかったたらどうすんだよ!」


「洋一君あれがゲートだよ。もう蘭ちゃんが向こうの安全を確かめに行ってるし」


 蘭!?  行動速すぎだろ! 帰ってきたら注意しなければ! 危なかったらどうすんだよ。


 蘭は10分ほどで帰ってきた。


「ただいまって、洋一なに変な顔をしてるの?」


「いや、危なかったらどうすんだよ。ゲートの先がどうなってるかもわかんないだしさ」


「ごめんね。転移する前の危険を調べて起きたかったからさ」


 向こう側の危険かあ、それがあるから心配なんだが……。


「次は一言言ってくれよ? 心配だからさ」


「わかったよ」


 ふう。蘭もわかってくれたか、取り敢えず向こう側の状況を聞くか。


「蘭それで、向こう側どんな感じなんだ?」


「うーん。危険な感じはしなかったかな、瘴気も薄い感じだったし取り敢えずは大丈夫かな?」


「取り敢えず行くか。リュイも行きたがってるし、師匠、アナスタシア、そろそろ行きますよー」


「了解!」


 師匠がめっちゃ生き生きしてる。アナスタシアはモジモジしたまんまだが。


「虎次郎、アナスタシアを頼むな」


 虎次郎さん頭を撫でると、気持ちよさそうにしている。可愛いがコイツ……良く今まで生きたこれたな。


『流国かあ、上からは見てたけどワクワクするわね!』


 観光気分かよ。


『アタチも楽しみ! 美味しいお菓子あるからなー』


 リュイも観光気分だった……。

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