第100話 皇国を破壊した男
俺達は、一度魔獣の森に戻る事にした。
「師匠は、魔獣の森って初めてですか?」
「僕が最初に落とされた国は、確かエルフが沢山いたよ? なんかさー人間だからって、攻撃してきたんだよね。仕返ししまくったら、大人しくなったけど」
「しっ仕返しとは?」
嫌な予感がめちゃくちゃする。絶対にただの仕返しじゃない、下手したら国が滅んでいるかもしれない……。
「うん? 軍と首都をぶっ潰しただけだよ? 二度と逆らえないようにしてやったさ」
はい、きたー。エルフの国に入れない事が確定だよ。
『あんた、人の良さそうな顔をしてとんでもない事するのね……』
ほら、リュイも引いてるぞ!
「えっ? エルフの国に入れるかなあ……」
蘭も、不安になってるよ……。はあ、レイ先生になんて説明したらいいのやら……。
「とりあえず、戻るか」
♢
何度も見た、懐かしい我が家。落ち着くわあ。師匠は、キョロキョロと辺りを見ている。
「おー! 懐かしの我が家!」
「ヨーイチ! 帰ってきたのね?」
ああ、眩しい! レイ先生の笑顔が眩しい! 久々に会うと、笑顔の破壊力がやばい。惚れてまうやろ! エプロンに、お盆がめちゃくちゃ似合う!
だけど、だけど素直に受け入れられない。師匠がした事を考えると、素直に再会を喜べない……。
「ヨーイチ? こちらの方は?」
「あっああ。こちらは、神宮葵さん。同郷の人で、俺の師匠です」
「ヨーイチが、お世話になっています。レイ・コーラルと申します。元探索者で、今は此処に住んでいます」
「へえ。君、エルフにしては強いね。ただ、成長限界が近いね」
師匠! 恥ずかしいから、ちゃんと挨拶してくれ!
「えっ? あっ、ありがとうございます?」
ほら、レイ先生が困惑してるじゃないか!
「うんうん。周りの森にいる魔獣は、エルフの国の軍隊よりは強いけど、だめだね。面白い気配が、一つもない。つまんないなー。この国には勇者っていないの?」
うわー。師匠が、飽きはじめてやがる。
「勇者ですか? 勇者は大昔にいたとしか……」
「あれ? おかしいな? 勇者の気配は、この世界に落とされた時に、感じたんだけどなあ」
勇者の気配ってなんだ? 勇者がこの世界にいるのか?
「あっあの、お話を戻してしまい申し訳ないんですが、エルフの軍隊って? 皇国の軍隊ですか?」
ゲゲゲッ! 聞こえてたのかよ! やばい……冷や汗が止まらない……。
「皇国? うーん。なんかエルフの軍隊がさー。めちゃくちゃ絡んできたからさー。戦える奴は一人残らず、叩き潰したんだけど、大将首の奴が、余りにもしつこくてさー」
━━━ガシャン。
レイ先生が、持っていたお盆を落とした。
「えっ、それは、あの、本当でしょうか?」
「なんなら、大将の首出そうか? 好戦的だし、弱いくせにうざったいから、刈り取ったんだけど」
あっ師匠が、アイテムボックスから生首を取り出そうとしている……。
「刈り取っ? えっ?」
「見る?」
チラッと、耳と金髪が……! ひえっ! やばいやばいやばいやばい! 怖い、怖すぎる!
「いっいえ、チラッと見えましたから……。本当に皇国の軍隊を潰したんですね……」
あばばばは、どっどうしたら、やばい……どうしよう……。
「いっよっしゃああああああああ!!」
レイ先生が、ガツポーズと雄叫びをあげた。
「これで、私の里帰りの邪魔者はいなくなった! YES! YES! ヨーイチ、今夜はパーティーよ!」
皇国の軍隊を、潰して、エルフの大将首を刈り取ったら、パーティーなのか?
「あっあの? なんで? え?」
「私にフラれた事を腹いせに、私を皇国から追放しやがった、クソ野朗なのよ! そいつが、死んだらパーティーじゃない!」
異世界の価値観がわからない! 死んだらパーティーって怖すぎるし! フラれた腹いせに、国外追放とか色々酷すぎだろ!
『パーティーね? パーティーなのね?』
リュイは、パーティーって言う単語だけで、お祭りモード全開になってるし。
「洋一、ツッコミは任せた。私、見回りして来るから」
「蘭! 俺を置いて行くなー! ちょっと! 俺には、荷が重過ぎるのよおおお!」
「なんじゃい、うるさいの。おー! ヨーイチ、帰ってきたのか! 装備の不具合はないか? そこの剣、異世界の物じゃな? 鉄の比率もそうじゃが……素材が珍しいの! 見せてみい!」
ふぎゃっ!
エレン爺いに、突き飛ばされた。いつもなら、レイ先生が、優しく助けてくれるのに今回は……。パーティーの準備にウキウキしてて、俺を見てくれない。酷い! パーティーの準備より、俺の心配をしてくれ!
「僕の装備が見たいの? そろそろ何処かに、研ぎに出そうかと考えてたから、研げるならやってほしいんだけど」
「儂の工房に来い! 精霊が窯にいる工房じゃ!」
「へー。楽しみだな」
みんな、いなくなってしまった……。
『ヨーイチ、ドンマイだね。葵とエレン爺いが、直ぐに仲良くなってびっくりしたね』
「あっああ。師匠達より、レイ先生の喜び方に、びっくりしてたよ。国に追放された理由もそうだけどさ……」
『レイのあんなにはしゃぐ姿初めてみたね』
レイ先生もやっぱり異世界人なんだなあ。恨みがあるとは言えなあ……。価値観の違いって凄いな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます