第87話 九尾のおっぱい


 城に着くと、様々な化け物がいた。多種多様な化け物、日本、中国、ありとあらゆる化け物がいた。怖すぎる……。俺は、ずっと下を向いて歩いていた。皆んなは、誰かと小難しい話をしているみたいだが……。チラッと周りを見てみると、妖怪変化のお祭りだ。夜の墓場で運動会しててくれよ……。


「もう、この国嫌だ……」


「洋一君、困った事がある」


 師匠が真剣な顔で話しかけてきた。


「何ですか? 俺は正直、この国の人々が怖くて怖くて仕方ないですよ……」


「それは置いといてさ。強い奴が、城にいないんだ。それにここの化け物達は、巨乳ばかりだし、人外でもOKな僕でも流石に悲しくなってくるよ」


 師匠は真面目に悩んでるんだろうが、後半はマジでどうでも良い。人外でもOKな意味もわからないし……そもそも妖怪変化の類じゃないか………………ん? 巨乳?


「師匠、巨乳って言う部分だけ詳しく」


「アーレイのお母さんも巨乳だし、ろくろ首も口裂け女も妲己も雪女も濡れ女も飛頭蛮もお歯黒も百々目鬼もニロ女もさ〜皆んな、巨乳で嫌になるよ! 全く!」


 そっそんなに巨乳がいるのかよ! 下向いてたから全くわからんかった! あれ? アーレイのお母さんなんて、会ったか?


「アーレイのお母さんって、会いましたっけ?」


「うん、そこに」


 言われて前を見ると、玉座に座っている、九本の尾を持つアーレイに、そっくりなボインボインな美女がいた。着崩れた着物から見える乳房がエロい! めちゃくちゃエロい!


「はじめまして、おっぱいさん、私柊洋一と言います。一揉み如何でしょうか?」


「え? 私の名前はフェネシア・ディエルマと申します。柊様、おっぱいは名前ではありませんよ? それと私を口説いて下さるのは大変嬉しいのですが、私結婚しておりますゆえ」


「おっぱい・ディエルマさんですね! 結婚してるとは残念です! 本当に残念です! ああ、一度でいいから一揉みしたかっアババババババババ」


 リュイに電撃を落とされた。


『おっぱいさんじゃないでしょ! フェネシアさん! 全くヨーイチはスケベなんだから!』


「すいません、洋一が失礼をしました。それで神殿への立ち入り許可の話何ですが」


 神殿に立ち入り許可とかいるのか? 場所さえ分かれば雷砲をぶち込んでやるのに。


「神獣様と契約者様に精霊様に勇者様なら、戦力としては充分なのでしょうが━━」


 おっぱいさんが、俺を見ている。なんだろうか? 一揉みフラグかな?


「神殿を壊さないで欲しいのです……。大丈夫でしょうか? 彼処は歴史的価値もあり、更には国の柱としての意味合いもあるので」


「任せてください! 神殿は大事ですもんね、壊しませんよ!」


 ………………おや? 何故か皆んなで俺を見てるな。うん? 何でだ?


「洋一が雷砲で、フーシェンの神殿を更地にしたのを知ってるから、警戒しちゃってるのよ」


 あーなるほど、雷砲使用不可か。俺はアイテムボックスけら紅夜叉と魔銃を取り出す。


「こっちを使うぜ! 師匠がいるなら、出番は無いかもしれないけど」


「僕は、強い奴がいたら戦うし。いなければ手は出さないよ」


 わー清々しい返事だこと! 蘭は、あまり神殿に近寄らせたくないから、実質俺とリュイで頑張るしかないか。


「リュイ、雷砲はダメみたいだからサポート頼むな! おっぱいさんの神殿は壊したらダメだから、中々難しいかもだが」


『ヨーイチ、私は雷の精霊様よ! 眠くならなきゃ大丈夫よ! 任せなさい』


 何故盛大なフラグを立てるんだ。怖いじゃないか、リュイが寝たら俺一人か? だが……やらない訳にはいかないし……。


「死にそうになったら助けてあげるよ。おっぱい好きな同士だしね!」


 逆に言えば死にそうになるまでは放置かよ……。はあ、気が重い。



 城の地下に歩いて行く。地下に進む毎に嫌な空気が濃くなっていく。


「あー怖い、マジで怖い。海外のホラーゲームみたいだよ……」


「洋一君、目を瞑って良く歩けるね」


「目を開けたら妖怪がいっぱいで、怖いから……苦肉の策です」


 俺は情けない事にアーレイに手を引いて歩いて貰っている。笑えよ、おっぱいさん以外の妖怪を見て、漏らしながら気絶したんだからな。


「ワッチの伴侶が、これでは前途多難じゃ……」


 伴侶じゃないと否定したら手を離されるかもしれないから、否定が出来ない。


『ヨーイチ、もう直ぐだよ! 気合い入れなさい!』


「う、おっおう! 任せろ! 蘭は後ろにいるんだぞ?」


「分かってるよ。でも洋一そろそろ目を開けなよ、多分あの扉の奥だよ?」


 俺が目を開けると、デカイ石の扉があった。デザインは詳しくないから分からないが、植物の蔦と花が彫られていた。


 ドアの隙間から、嫌な空気が溢れ出ている。


 ズガンッ! ズガンッ!


 中から、なにがドアに体当たりする音が聞こえる。


「グウウウオオオオオオ!!!」


「やべー、絶対強キャラだよ。リュイ頼むぞって……おいいいい! 寝るなよ! 律儀にフラグ回収すんなよ!」


 起きてくれよー! やばいマジでやばい! 


「うーん、あんまり強くないかあ。がっかりだなあ」


 師匠のやる気が上がらない……! 絶対絶命の大ピンチだ。


「粗チンよ! 一緒にイヌイ様を鎮めるのじゃ! フーシェンでは、イヌイ様と相性が悪くダメだったのじゃ。魔王に認められた御主となら、やれるはずなのじゃ!」


 認められたんじゃなくて、助けられただけな!

 

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