第71話 慣れって怖いよね

 えっ? あれ? 日本かここは? 


「ようこそ、アバドンへ」


 不自然な景色、日本の江戸時代に似ているが看板の文字や売っている物は異世界その物。歩いているのは獣人ばかりとアンバランスな光景。


「えっ? えっ?」


コスプレ会場にでも迷い込んだ様な感覚に、俺は戸惑いを隠せないでいた。


「どうだいアバドンは? アスベルクと比べてみた感想を教えてくれ」


「えっ? いや俺の故郷にそっくり? いや違う路面は土だし江戸時代みたいな?」


「エドジダイ? なんだいそれは?」


「いやあの、なんでこう言う街並みに?」


「ハハハ。立ち話もなんだから、僕の研究所に行こう。ケイナ、茶請けと新しい茶葉を買ってきてくれ」


「わかったっす! 人間、師匠になにかしたら金玉引き裂くっすからね!」


 金玉引き裂くって、怖過ぎだろ。


「なにもしねーよ!」


「シャー!!」


 爪を出してまで威嚇しなくても良いだろ……。


「ハハハ、さあ行こう」


 ケルトさんの後ろを歩きながら辺りを見回す。着てる物は、アスベルク王国の人間とそう変わらないが、色々な種類の獣人がいる。


「ケルト、気球はどうなったんだ?」


 でっでけえ! 厳つい顔に熊耳が、アバンランスすぎるだろ! 身長が2mはあんじゃねえか? 俺の身体が小さくなったせいか、余計にデカく見えるぞ。


「ハハハ。あれは着陸に問題があってね、中々難しいよ。空の魔物対策もしなきゃだし」


「お前さんならやれるさ! 期待してるぞ! ところでそこのちっこい人間は何だ? 奴隷か?」


 値踏みする様な目で見てきやがる……悔しいけど、反抗できない! 絶対に勝てないからな。


「ハハハ違う違う。彼は遥々、アスベルクから来たお客さんだよ。研究用の素材を僕に提供してくれるんだ」


「ほーう。ちっこいのに大冒険してんだなあ」


 満面の笑みで、ガシガシと頭を撫でられた。熊の肉球って硬いイメージだったが、やっ柔らかい、マシュマロみたいだ!


「もっと肉食え、肉! でっかくなれよ!」


 と言い、笑いながら熊人は去って行った。


「すげー熊だ熊。あっケルトさんアバドンってどれくらいの種族がいるの?」


「ベア種、さっきの彼だね。キャット種、これはケイナだね。ウルフ種、これは僕だ。後はフォックス種、タイガー種、ドッグ種、ホース種、リザード種、バード種、後は王族のレオ種が代表的だね。まあ、王族は一種類の種族だけじゃないけど」


 思ったより多いな。


「すげー! いっぱいいるんですね。でも肉食と草食じゃ、トラブルとかおきないの?」


 確か漫画であったはず、堪えきれない野生の本能で、草食動物を襲っちゃう感じのが。


「中心街意外は、種族毎に住む場所が別れてるから基本的には無いよ。昔は、色々あったけど今じゃ気にする人の方が珍しいよ」


 日本よりよっぽど優秀だな。日本じゃ差別だ何だと揉め事があるのに、揉め事起こす人が稀なんて、すげーな。


「それに、王の権威が偉大だからね。今の制度を変えたいなら王を倒すしか無いけど無理だろうね、毒物無効スキルもあるから、先ず暗殺なんて無理だし」


 王様すげーな。強者こそ正義とか言っちゃうキチガイだと思ってたけど、認識を改めないといけないな。ってか今、さらっとスキル言わなかったか!?  国家機密とかじゃないのか!?


「あのケルトさん今、さらっと王様のスキルバラしたけどいいの? 機密情報的な感じじゃないの?」


 ケルトさんは、一瞬不思議そうな顔をしたが、ぽんっと手を打ち


「人間の国は隠すのが、一般的だったね。でもアバドンは違うんだよ。それに王族のスキルは公開されてるよ、力の証でもあるからね」


 周りの家に比べたら、やたら頑丈そうな壁に囲まれた館に入って行く。


「ここがケルトさんの家? でけー」


 サッカーコート位あるんじゃないかここ。


「研究所兼自宅だからね。それなりの防音対策と防壁をつけとかないと近隣から苦情がきちゃうからね」


 騒音トラブルは何処の世界でもあるんだな。地球に居た、引越しババアは元気にしているだろうか?


「お帰りなさいませ、ご主人様」


 リアル猫耳、貧乳メイドが現れた! 色白、目がくりくりだし可愛すぎる! お付き合いしたい!


「わ! 本物だ! 蘭! リアル猫耳メイド! 秋葉原とかの偽物じゃないぞ! 三次元だ!」


「ご主人様、この頭の残念な方は?」


 リアル猫耳メイドが、冷たい視線を向けて来る。


「ツンデレだー!!」


「(洋一、ちょっと落ち着いて)」


「うひゃー!! すげー!! ひゃっほー!」


「(リュイ様、お願いします)」


『(ラジャ! 反省しなさい!)』


 天から落雷が、俺に向けて落ちる。ああいつものお仕置きか。


「アババババビハババババ」


 いつもより強めにやり過ぎだろ! 俺でも痺れるんだぞ! 人目もあるって言うのに!


「ヨーイチ君、大丈夫か!?」


「あっはい、いつもの事なんで」


 当然の様に無傷で立ち上がる俺を見て、猫耳メイドとケルトさんが、めちゃくちゃびっくりしてる。


「よっヨーイチ君? 今雷にうたれたんだよ? 普通死ぬと思うんだけど……」


「慣れたら雷位、平気なもんですよ?」


 二人にドン引きされたが、事実だから仕方ない。

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