第72話 腹を裂いたら玉の様な獣が……!

 ケルトさんに連れられ、屋敷の中へ入る。猫耳メイドは「この童貞がっ!」と吐き捨てて、屋敷の奥に行ってしまった。


「あー猫耳メイド様がいなくなって、テンションが激落ち君なんだけどー」


「まあ良いじゃないか! それより私の研究を見てくれ!」


 地下室に案内され俺は目を背けた。そこには容器に浸された、獣人や魔物が大量にいたから……。


「うげっ! ケルトさん、あっあんた何を?」


 ケルトさんは狼狽える俺を見て、ニヤリと笑う。寒気のする笑顔、正直不気味だ


「フヒアハハハハ」


 ゲラゲラと笑い出す、ケルトさん。


「いやー! 予想通りの反応で、面白かったよ。安心して良い、これは、解剖実験と新たな種を創造する為の実験だから」


 おいおい何処にも安心できる要素がないぞ……いきなりこんなもん見せられて、俺にどうしろって言うんだよ。


「国は、国は知ってるのかよ……こんなイカレタ研究を」


「もちろんさ。それで君に協力して欲しいんだがどうかな?」


 国公認かよ、それが本当だとしたらこの国はイカれてる。認識を改めたばっかりなのにな。


「まあ新しい種に関しては、僕の趣味。本来の目的は解剖学と魔物の生体研究のだめだよ。医療に役立てる為には、身体構造を、知らなければいけないからね」


「なっ何だよ……医療のためか……びっくりさせないでよ」


 蘭やリュイが、なにも言わなかったのは分かってたからかな? 俺が、ビビりすぎてただけなのかな?


 あれ? 何だあの白い毛の塊?


「ケルトさん、白い毛の塊が落ちてますよ?」


「えっ? 何処に?」


 俺、指差してるんだが、ケルトさん目が悪いのか?


「何処ってそこに……ああもう、拾って来ますよ」


 俺は、白い毛の塊の側に行き、白い毛の塊を掴む。


「ーーんぎゃ!」


「えっ? 誰か何か言った?」


 ケルトさんは首を振ってるし、リュイは寝てる。蘭は、なにかを警戒してる? ん? なにを警戒してるんだ? ケルトさんか?


「そおーれい!」


「痛いのじゃああああああ!!」


 知らない女の子の絶叫が、響き渡る。


「何をするのじゃ! この粗チン野朗め!」


 真っ白な髪、真っ白な毛、真っ白な耳、真っ白な肌、瑠璃色の瞳。


「誰だい君? 僕の研究所で、一体何を……」


「そっ粗チンじゃねえ!! ビックマグナムだ! 見せてやろうか!?  ああん!?」


 俺が、ズボンを勢いよく脱ごうとした瞬間


「不埒物がああああ!!」


「ひいやあああああああああ!」


 強烈なキックを、俺のビックマグナムに喰らわせてきやがった。


「あああ、俺の、俺のビックマグナムが……あああああああ」


「ワッチに粗チンを見せようとした罰なのじゃ!」


「(はあ。何やってんだが、ヒール)」


 蘭が、俺のビックマグナムを回復させてくれた……。サンキュー蘭。オカマにならないですんだぜ。物理的に性転換させられる話なんて、不幸過ぎて笑えないしな。


「ワッチの名前はアーレイ・ディエルマ! 白狐にして、妖の王なのじゃ!」


「ほほう。俺は柊洋一、蘭の家族であり、蘭のパートナー! そして堺さんの加護を持つ、ビッグマグナムマンだ!」


「怪人……粗チンマンなのじゃ! もう一度粗チンをぶっ潰してやるのじゃ!」


 蘭が、白狐の金玉スレイヤーを睨みつける。


「ひっ!! 何じゃその鳥は! ワッチを睨むな! 怖いのじゃ!」


 白狐金玉スレイヤーは、箱の影から顔を出して文句を言っている。蘭が怖いんだな。


「ワッチはワッチは、そこの黒い狼に囚われた仲間を、助けに来ただけなのじゃ!」


 ケルトさんを指差し、文句を言っている。


「ケルトさん、あんた怪しげな研究だけじゃなく人拐いまでしてたのか……」


 俺が、軽蔑の眼差しを向けると


「えっ、ちょっと待って! 全く身に覚えがないよ! そもそも、ここにある死体は死罪になった獣人達だけだし、魔物は冒険者から買い取った物だよ! 僕は、戦うスキルなんて持ってない!」


 ケルトさんが、身振り手振りを交えながら否定をしている。うーむ、実にコミカルな動きだ。


『(うるさ〜い!! 急に叫ばないでよ! 寝てたのに!)』


 きーきー喚くリュイの方がうるさい、念話だから耳を塞ぐ事もできない、まさに聴覚へのダイレクトアタックだ。で? リュイ、ケルトさんは嘘をついてるのか?


『(ついてないわよ! そこの狐ちゃんが言ってるのは奥から二番目の死んだ振りしてる魔物? でしょ!)』


 うわーリュイめちゃくちゃキレてるよ。激おこぷんぷん丸だな。


「奥から二番目の魔物が、まだ生きてるってほんと?」


「粗チンマンの言う通りじゃ! 彼奴は、仮死状態で寝ているだけじゃ! 解放しないと、粗チンマンの粗チンを蹴り砕くのじゃ!」


 なっ何故だ! 俺の息子は無実だ! 冤罪だ!


「えっ? あの新種のバイソン生きてるの? 首取れてるんだけど?」


「「えっ?」」


 金玉スレイヤーと俺が同時に声を出す。ケルトさんはほらとバイソンを容器から出し、持って来てくれた。


「ほら? 死んでるでしょ?」


「ほんとだ。仮死状態ってレベルじゃないな。首チョンパで死んでるわこれ」


「こいつじゃないのじゃ! 見た目が全然違うのじゃ!」


 あれ? こいつじゃないのか? リュイが、教えてくれた場所にあったのはこいつなんだが


「(洋一、バイソンの腹の中に何かいる)」


「腹の中?」


「ヨーイチ君、腹の中になにかあるのかい? あるなら裂いてみるけど」


 ケルトさんは、バイソンの腹を躊躇なく裂いた。すると、なんと言う事でしょう、中から白い小さな狐が出てきました。


「桃太○風に語ってる場合じゃねえ! この狐生きてるのか?」


 どう見ても死んでいます、本当にありがとうございました。


「フーシェンなのじゃ! フーシェンよ、はよう起きるのじゃ!」


「━━━━マスターおはようございっまああああああす!」


 えっ? 狐が跳ね起きた? 生き返った? どう言う事?

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