第68話 三倍の速さで動く! それはニュータイプ!?

 これは忍んで動かないとだな。魔王が、うろちょろ街を歩くって言うアホな状況になってしまう。俺、魔王じゃないけどな! くそー何なんだよ、久々に感じたよハードモード感。


「相変わらず俺にだけ、ハード過ぎるぞ異世界……」


 途中の村に寄ろうとしたら、「死ね人類の敵!」って言いながら小さな子供にまで石を投げられた。まだアリアが居た街の方が安全だった。危険なのはアリアだけだし、アリアはリュイと蘭で無力化できていたからな。


「はあ。子供に泣き叫ばれて、化け物呼ばわりは傷つくぜ……。俺は東北にいるナマハゲかよ、悪い子はいねかーってか」


「(洋一、堺さんにお願いして、紗香さんに連絡つけて貰いなよ)」


「堺さーん! 俺か魔王じゃないって紗香さんに神託出して貰ってよー!」


 ……………………無視かよ!


 くそーどうでもいい時は返事する癖に! ファンキー爺いでもいいから神託しろよ!『やだ』でたよ天の声! しかもやだって一言だけ。こいつやる気あんのかよ。


「何故か顔バレもしてるし、アバドンに入れるのか俺達……」


 ラプダを走らせ、村から大分離れた河原で休憩をする。何故離れたかって? 村人が俺を討伐しようと探し回ってるからだよ! ちくそうめ! 魔王を、石で討伐しようって気概は凄いけどな


 ドゴーン!!


『ふっはははは! 我が名は魔王軍四天王 アリメリア! 魔王様を名乗る不届き者は何処のどいつだーい?』


 いきなり空から降って来たのは、残念な感じの高身長、ボイン、紫色の肌、頭には角、鞭を持った、赤いボンテージにピンヒールの頭のおかしい女? が現れた。


「魔王様をお探しで?」


『ええそうよ! さっき村人から、こちらに逃げたと言う話を聞いたから間違い無いわ!』


「魔王様を語る不届き者なら確か……アリアって名前で街の方にいたような……」


『情報感謝するわ! とう!』


 赤いボンテージの変態は、翼を背中から出し、飛び去って行った。良きかな良きかな。


「洋一、あの人多分堺さんの部下でしょ? 街に向かわせたらまずいんじゃない?」


「大丈夫だろ。村人に話を聞く事が出来るんだから街中でアリアを探す事くらいできるだろ? アリアが魔王だって広まったら、俺の噂も多少は薄まるかなって、策略でもあるしな!」


『ヨーイチ、ずっこいわねー』


 まあボンテージさんもいきなり、殺すとかはしないだろ。ただ周りに人がいる前で魔王扱いされたら、アリアにも俺の苦しみが少しはわかるだろう。


「ささやかな、復讐だ!」


 俺達は何事もなかった様にアバドンへ続く道へと進む。日が落ちかけ、そろそろ野営の準備をしなきゃかなー、なんて考えていると。


『ちょっとおおお!!』


 ボンテージさんが半泣きになりながら戻って来た。


「無事に魔王様には、会えましたか?」


『人違いだって言われたわよ! しかも私を見て人間達が襲いかかってくるし! 最悪よ!』


 人間に襲われたのか、まあ見た感じからして、魔族だし仕方ないのかな?


「まさか、魔王軍四天王だって名乗りました?」


『なっ名乗ったわよ! 当たり前じゃない、戦いは名乗りを上げてなんぼよ! ちゃんと名乗らないと誰と戦ったのかわからないじゃない!』


「戦国時代の武将みたいだなあ」


 ボンテージさんが泣き出した。


『あーん! あーん! 魔王様の力も感じたし、魔王様に会えると思ったのに、ずっとずっと待ってるのにー!』


「ボンテージさんは、堺さんじゃなくて魔王が好きなの?」


『魔王様、一筋よ!』


 おのれ堺さん! いや魔王め! 許さないぞ! 嫉妬の炎で焼き尽くしてやる!『柊君、醜い嫉妬はやめたまえ!』


「魔王、あーもうめんどい。堺さんなら、俺の世界に居て魂の分体? みたいなんは俺に取り憑いてるから、話しかけたら話せるんじゃないか? 俺の頭の中で嫉妬はやめたまえ! って叫んでたし」


『本当か!? 魔王様! そこにいらっしゃるのですか! 姿は見えませんが、私は私今でも貴方を推したい申しています!』


 ぐぬぬぐぬぬぐぬぬぐぬぬ! すげえムカつく! 堺さんダンマリを決め込んでるし、だけどおかしいぞ? 洋一スカウターが反応しない? この人、かなりの美人なのに。


『私は長き時の間にアレを取り外しました! 今なら、なんの枷もありません! 以前は同性だからと気にされていましたが! 今はアレが無いから同性ではありません!』


 おうふ。オカマさんだったのかあ……。さっき迄は嫉妬に怒り狂っていた俺だが、一瞬で冷静になってしまった。


「あっあのボンテージさん、つかぬ事をお聞きしますが性別は?」


『私は男であった自分を捨て、ニュータイプになったのよ! 三倍の速さで動けるわよ!』


「何? 貴様、ニュータイプか!」


 これは、ニュータイプ同士通じ合える気が……。


「洋一、ヤバイネタをぶっこまないで」


 するわけないな、堺さんは男にモテるんだなあ。羨ましく無いけど。


 とりあえず蘭と2人で、堺さんはこの世界に居ないことを伝える。


『魔王様はこの世界にはいないのね……貴方達は魔王様の一体何なの?』


「「俺達の命の恩人」」


『ーーーそう、魔王様が貴方達を救ったのね。わかったわ! 何かあったらこの貝を吹きなさい私が助けに行くわ! 魔王様が救った命、私達が全力で護るわ!』


 ボンテージさんが、どうみても時代劇にあるような、ホラ貝を渡してきた。


「あっあのこれを吹いたら、馬に乗って現れるんですか?」


『よく分かったね! ホワイトホースで飛んで行くわよ!』


 よし! 封印決定!

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