第66話 堕ちた神獣と神獣の契約者
いきなり現れたファンキー爺いだが……まあ、神殿に行ったら出て来るんだろうなって予想はできていた。邪神に汚染された神獣を倒さなきゃならないとは思わなかったが……。蘭の代わりに俺とリュイで、頑張らなきゃ!
「いきなり次の街に行けって、言われてもなあ。次の街の地図とか売ってないかな?」
「(あそこの道具屋とかにあるんじゃない?)」
蘭が、見ている先に少しぼろいが道具屋? ぽい店がある。うーん、ボロいなあ。
「向こうの賑わってる方で、買った方が良くないか?」
『(あそこの店がいい!)』
うーん大丈夫かな? リュイと蘭が彼処が良いって言うなら、とりあえず行くけど……。
「こんちゃーす。店やってます?」
店の中は薄暗く、品物がわかりにくい。
「ひえっひえっひえ。いらっしゃい。異世界人の坊ちゃんに、神獣様に精霊様」
「ふぎゃっ! ヨー○! すいません! まだ俺フォース使えないんです!?」
いきなりヨー○宜しくな、茶色ローブを羽織った小さな婆ちゃんが急に現れた。
「俺、ジェダ○じゃないんだけど大丈夫ですか? まだフォースを感じれなくて……」
「ジェ○イ? そんなものは知らん。なんの様じゃ?」
「あっえーと」
「アバドン迄の地図が、欲しいんです」
蘭が、俺の代わり答えてくれた。
「蘭、良いのか?」
『ヨーイチ、この人は大丈夫よ』
普段、外では念話で話すと決めていた、蘭とリュイが普通に喋り出した。この婆ちゃんは何者だ?
「婆ちゃん何者だ? 蘭もリュイも警戒してないし」
「ひえっひえっひえっ。アバドン迄の地図だったな? ちょっと待ってろ」
婆さんは、笑いながら店の奥に入って行った。
「なあ蘭、あの婆さん何者だ?」
『あの人はねえ、神獣の契約者だったエルフよ』
「エルフ!? あのちっこい婆ちゃんが!?」
『ちっこい?』
「あーお婆ちゃんの魔法ね。洋一にはちゃんとした姿が見えてないのね。あの人、エルフだけあって凄い美人よ」
えっ? 俺魔法かけられてるの? 凄い美人なら見たいんだけど!
「婆ちゃん! エルフの姿みせて!」
「ひえっひえっひえっダメじゃなあ。ほれ地図じゃ」
ダメなのかあ。ダメなら仕方ないか。婆ちゃんに地図を渡される。神獣の契約者であるなら、きちんと伝えなきゃいけない。
「あのそれで……」
蘭が、言い淀んでいる。
「俺達……創造神の試練で、邪神の影響を受けた黒い狼をその……」
「ひえっひえっひえっ。彼奴はようやっと逝けたのか、そうかそうか……なら私の役目も、終わりじゃな」
婆ちゃんは、涙を流しながら笑っていた。
「婆ちゃんあのごめんなさい! お別れ言う前に━━」
婆ちゃんは、泣きながら俺の手を握って
「ありがとう、ありがとう。彼奴もこの地を護り、次代の神獣様にも会えたのじゃ、戦って逝けたなら本望じゃよ」
何度もお礼を言ってくれた。その姿が、俺にはとても綺麗に見えた。
「次代の神獣様に巡り合わせてくてありがとう。大事にするんじゃよ? 思いはきちんと伝えるんじゃよ? 伝え忘れてからじゃ遅いからの」
「うん! 蘭は、家族だしずっと大事にするよ」
「私も洋一の家族として、神獣として恥じない様に生きたいと思います」
蘭はそう言うと婆ちゃんの肩に止まり、頭を擦り付けた。婆ちゃんは、優しく蘭を撫でていた。
「優しい神獣様と、優しい異世界の坊やを宜しくお願いします」
婆ちゃんは、リュイに頭を下げた。
『任せなさい、精霊王様の名に誓って護るわ』
リュイは、婆ちゃんに加護を与えた。
「こんな老いた私にまで加護を頂けるなんて、何とお礼を申し上げたら━━━━」
『貴女のこれまでの戦い、傷ついてなお、堕ちた神獣の側を離れなかった貴女の優しき心への、私からのささやかな贈り物です』
リュイが、いかに婆ちゃんを評価しているかがわかる。リュイも、婆ちゃんに対して、思うところがあったんだな。
『ヨーイチと同じ様に、私の最大限の加護を与えたわ。貴女のこの先の人生が幸福である事を祈っているわ』
婆ちゃんは、一際大きく泣いてしまった。俺は何も出来ず、その場に、棒立ちしていた。
俺達は、婆ちゃんの家に一泊する事にした。婆ちゃんが、泣き疲れてその場に倒れてしまったからだ。
「婆ちゃん、ずっと神獣の側にいたんだな。ギリギリの精神状態でさ。俺だって、蘭がああなったらきっと婆ちゃんと同じ事をするだろうな、ずっと離れないでさ」
離れられるわけがないからな……。
「洋一、邪神を必ず倒そうね」
「ああ。婆ちゃんみたいな人を増やしたくないし、苦しんでる神獣を解放してあげなきゃな」
蘭が、あんな姿になったら俺は耐えられるのだろうか? いや、きっと耐えられないな。婆ちゃんは、ずっと一人で見守り、耐えてきたなんて凄すぎる。
『ヨーイチ達は、私が護るから安心しなさい。フレイとは状況が違うわ。貴方達にはアタチがいるんだからね!』
ふんすと鼻を鳴らすリュイ
「ありがとうリュイ! 後ろ向きにばっか考えても仕方ないしな」
「そうね。私達に出来る事を精一杯やろう」
リュイは、いつも俺達の為に頑張ってくれる。友達だからって危険な旅にまで付いてきてくれるし、精霊だから優しいって訳じゃない、リュイだから優しいんだ。
「リュイはいつも優しいよな、本当にありがとうな」
『友達が困ってたら、助けるのは当たり前だって、精霊王様も言ってたからね』
「精霊爺いもたまにはまともな事を言うんだな」
「洋一、精霊王様は姿こそアレだけどまともな話しかしてなかったわよ」
「ハハハそんな馬鹿な」
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