【第4話】__何やら空気が悪いぞ!!__

 この席から眺める景色は何時もと変わりわしない、下らない会話をする同級生に何がそんなに楽しいのか分からないじゃれ合い、お前ら疲れないのかと聞くのは野暮だろう。

 聞き耳を立てるのは、ぼっちの証、自分が何か話題に出てないかだとか悪口を言われてないかとか、顔には決して出さないが考えているのである。



「こいつら元気いいなぁ、あっ__今日の昼はどうするかなぁ」



 そしてクラスの中心人物達で構成されたリア充部隊が大きな笑い声を出しているが、はっきり言おう、うるせぇ。

 あとそこの呪文みたいな言葉を発する奴等も凄くうるせぇ。



「てか和くんウケるんですけどッ!!」


「和ちゃんウケるわ、マジまんじだわ」



 お前ら何でもウケるんだな、てか、なんで寺院の地図記号を言ったんだろ、まぁどうでもいいか。



「まぁそんな事ないと、思うけどね」



 和くん大変だな、どこかの部族か何かに絡まれてるのかな、おい部族共、和くんの顔が引きつってるぞ。

 そう言えば、そろそろクラス内の派閥が決まる頃だな、俺は一人孤高の兵士。

 まぁただ単にコミュニケーション能力が足りないのと人と関わるのが面倒なのでこうなった訳だから俺が一方的に悪いのだろうな。


 そんな事を考えていると二名の女子が此方に指をさしているのが視界へと入る、それが何故かすごく不愉快であり、俺は後悔するのを知っていて聞き耳を立てた。



「てかさ、あの子さっきからこっち見てるんだけど」


「キショいよね、あっしのストーカーだったりしてぇ」



 安心しろ、お前みたいな心が腐った奴を好きにはならないからな。


 何時までも見てると本当にやばい奴になりかねないと思った俺は、視線を東城の席に向ける、気が付かなかったが氷山といつの間にか仲良くなったのだろうか。



「美夜子? この本読んだ?」


「いえ読んでないわ......あと呼び捨てはやめてくれるかしら、不快よ」



 仲が良いわけじゃないみたいだな、東城の表情は相変わらず笑っていない、それはまさに冷徹な暗殺者のような顔つきである、本物は見た事ないけどな。

 二人を見て思い出した、そう言えば先日の氷山の一件から数日たったわけだが、大して何も起こってはいないな。

 それどころか東城と俺の関係を指摘するクラスの生徒はいないようだが、どうしたのだろうか。

 そして俺は氷山から逃げるように教室から出て行く東城を見送った。




 __俺は残りの休み時間の邪魔をされて職員室に向かう途中である。

 それにしても良い一日だ穏やかと言うかなんというべきか、ん、東城の奴あいつ何してるんだ。


 視線の先の東城は廊下に張り出されている掲示板を眺めながら口に手を当てて集中してる、幸いにも此方には気が付いていないようだ。



「よし、関わらないでおこうっと」



 知らないふりをして東城の後ろを通り抜けようとした瞬間、俺のフリータイムが終わりを迎えた。



「挨拶も無しにどこ行くのよ? 総賀くん」



 お前は背中に目でも付いてるのか、いやむしろ凄腕の暗殺者は気配に敏感なのだろうか。


 東城は此方に振り向くと俺の顔を見てくる、それが何故だか心を奪われそうになるのだが。



「何をじろじろと見ているの? 気持ち悪いわよ、ただでさえ気持ち悪いのにこれ以上気持ちの悪さに磨きをかけなくていいわよ」



 同じ事を三回も言うなよ聞こえてるよ、こいつには俺と同じ血が本当に通っているのだろうか、ちょっとだけ見とれた俺が恥ずかしいぞ。

 そんな事を考えていると東城が俺を見つめだす、まさか、まさか本当は。



「気持ち悪いわよ、私に何回言わせるのよ」



 それは知らんよ、てか何回も言うなよ、それは心から願うわ。



「なら、言わなければいいんじゃないのかな~なんてね」



 もう少し強く言えよ総賀明人よ、俺は男なんだから。


 だが全ての能力値で東城に負けている、俺が言い返そうものなら論破されるのがオチか。



「あぁ、そんな事よりこれを見て頂戴?」



 急に掲示板を指さすと頭を抱える東城、そこに書かれた文章を見ると俺は内心ほっとして期待する、解放されるやもしれんぞ。



「ん、東城美夜子と総賀明人に恋人偽装疑惑だと?」



 最後に新聞部よりと書いてあるのが分かる、よくやってくれたな新聞部、そんな部があるなんて気が付かなかったがな。

 まさかクラスの奴等が何も言わなくなったのはこれのお陰なのだろうか。

 ん、まてまて東城よ、それを剥がすな。



「東城さん、それを剥がしたらだめだろ? いくら正しい情報が流されるのが

嫌だからって言ってもな」



 つい素が出かけた話し方をしてしまったが、まぁいいだろ、この関係とさよならッグッバイだぜ。

 すると、何かを考える仕草をする東城はその場で停止すると呟いた。



「ん、まさか彼女じゃないわよね? この情報流したの......ちょっと行ってくるわ」


「ちょっと待て__氷山ぁ逃げろぉ!! 暗殺者が向かうぞ~!!」



 すげー形相で行ったが大丈夫か、まぁいいか、いやいや今回が氷山とは関係ないかもしれないだろ、あとなんか今回は面白そうだから付いて行くとしよう。

 俺は小野寺先生に頼み事をされて職員室に呼び出されていたのだが、教室に戻る事にした。

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