【第3話】__裏と表と俺と誰__
すまないな、お前を名前で呼んだら連鎖で何かが爆発する仕組みなんだよ。
だって周りの人間の頭の中では俺は東城美夜子の彼氏な訳だろ、それなのに他の女子を名前で呼べるわけないだろ。
いや、まてよ、そもそも世間的にどうなんだ、何でもない女子を名前で呼ぶのか俺にはわからんぞ、普通は好きでもない男子に名前で呼ばれるのは好きじゃないだろ。
「氷山さんって他の男子になんて呼ばれてるの?」
お、上手く回避できたかもしれないな、大丈夫だぞ俺、上手く__
「他の男子にも彩夏って呼んでもらってるよ? 親近感が大事だと思ってさ」
いや俺はそんな親近感なんて欲しくないですね、もういいだろ名字で。
てかさ、東城が俺の彼女なのはお前も知ってるはずだろ、え、何か俺を巻き込もうとしてるの。
彼女がいる男子をたぶらかすつもりか、この女も危険人物かもしれないな、気を付けよう。
「まぁ俺は彼女しか名前で呼びたくないんだよね」
あっ、自分から本題に入ってどうすんだよ、しまった。
てか周りの女子の目付きが優しくなった気がする、何故だ、男子の視線はきつくなった気がするがな。
「あぁ、ごめんね、東城さんが嫌がるよね」
「別に私は好きに呼んでも構わないわよ? ねっ総賀くん」
席についたままでもいいけど、せめて此方を向いて喋りましょうか、そんで私は関係ないって空気を醸し出すなよ。
「だってよ? それじゃいいわよね明人君って呼ぶからよろしくね」
「氷山、俺はこの方がしっくりくるな、敬称なし、これでカンベンな」
これでも譲歩した方だと俺は思うが、どうだ、ダメか。
「う~ん、まぁ今は我慢するよ、でもわたしは知ってるからね__」
行っちまいやがったか、随分と自分勝手な奴だな、やはり女子の考えは俺には分からんな。
まてよ、今何かすごく重要な事を聞き逃した気がするのだが、まぁいいか考えるの面倒だしな。
____そんでもって日が暮れ始めた午後、公園を抜けて何時もの人通りが少ない通学路を、俺は辿る途中である。
これが一人なら非常にありがたいのだが、残念、余計な人物が二人いるのだ。
「東城さんって髪の手入れって大変じゃないの?」
「二回に分けて洗っているわよ......それより何故あなたが付いて来るのかしら?」
後ろで俺には理解出来ない話を繰り広げているが、それよりも東城の言う通り、どうして氷山が付いて来るのか。
そういえば気になる事があった気が、あ、知っていると言われた事を思い出したぞ、遠まわしに聞くのも面倒だから聞いてみよう、そうしよう。
「氷山あのさ、単刀直入に聞くが__」
「知っているよ、わたし、二人が付き合ってない事」
まぁむしろ校内での俺等の会話や、東城の俺に対する態度を見て気が付かない方がおかしいか。
黙る俺と東城の顔を見ると嫌な笑みを浮かべてやがる、お前って実は性格悪いだろ。
「でもきっと何か訳があるんだよね?」
氷山、お前は関わる必要は無いぞ、聞くな、巻き込まれるぞ。
「ええそうね、あなたなら言っても平気そうね、だけどその化けの皮を剥いでくれたら、うれしいのだけど」
東城、お前もいちいち言わなくていいぞ、あと化けの皮はお前自身も脱いだらどうだ、いや常に東城はこんな感じか。
「それに疲れるでしょうからね、当たり障りのない発言も疲れるでしょうし」
何を言ってるんだ東城よ、氷山さんが困ってるだろ怖い顔しはじめてるんだが、え、どうしたあぁ氷山ッ!!
「何で分かったの? 腹立つんだけど、てか総賀は見てて気持ち悪いんだけど」
あれ氷山さん、さっきと別人ですかね目付きが悪いですよ、あとちゃっかり俺に罵声を浴びせるなよ、これ以上メンタルなんて強くなりたくないわ。
少しだけ氷山がまともだと思ってた数時間前の俺が憎いぜ、てか俺の周りってロクな女子がいないんだが、関わりたくない女に何故かまとわりつかれる、俺は呪われてるのだろうか。
「さてと、なら氷山、それでこれからどうするんだよ、この事をばらすか?」
「なんでよ? こんな面白い事を台無しにしたくないっての」
お前だけだな楽しそうなの、というより俺は早く家に帰りたいんだが。
「まっいいや、わたしの事を言わないようにしてくれればいいよ? 東城さんどうしたの」
「あなたはクラス替えをした当日、自己紹介する前にすでにクラスの男子全員の名前を知っていたから気にはなっていたの、だから探りを入れたのよ今朝、私が流したこの茶番劇に食いついたなら、あなたを敵として認識しなければいけないから」
氷山、なんか知らんがお前は暗殺者の目標になったぞ、頑張れ、つまりなんだ、最初の考察が正しかったって事なのか、ん、情報流したのは東城お前か!!
男子との距離を詰めてから落とそうと、やっぱりな、俺の予想は正しかったんだな氷山。
「別に言っても構わないわよ? そうしたら私の持つ力を全て注いで潰すから」
何でもいいが、何かに俺を巻き込むなよ、ただでさえ面倒事に巻き込まれてる最中なんだからな、今回は氷山、たぶんお前の負けだ、東城のこの自信満々な態度は覆りそうにないからな。
「潰す? 何を__」
「あなたのお父さんの会社は私の父の会社の下請けなのよ、氷山セメントってあなたの会社の商品よね?」
あぁ成程ね、東城よ、私・じゃなくてお前のお父さんの力で潰すんだな。
あっなんか氷山の顔が青ざめて行くぞ、あらあら大変だな、俺には関係ないから知った事じゃないけどな、世の中から見たらこんな事を思う俺は最低かもな。
だが言わせてもらう、俺はこの状況が一番最低だと思うぞ。
「東城さん、ごめんなさい!! 嘘だからさっきの無しだから!!」
「てか、わたしの親父は関係ないだろ!! この根暗女~」
氷山彩夏、お前のそれはころころと変わるな怪人百面相か何かか、それと疲れないのか。
「いいわねそれ、今のうちに言いたいことをすべて言っとくのね」
まぁ助け船だすか可哀想だから、俺って優しいじゃんかよ、自分で言って虚しくなるけどね。
「まぁ俺は別に氷山をどうにかしたいわけじゃ__」
「総賀、お前には聞いてないから口閉じてろ」
「うるさいわね、あなたは黙っててくれるかしら」
皆さん聞きましたか、これが本当に最低な奴らの言動ですよ。
こいつら冷たすぎだろ、もういいや面倒だからこのまま置いて帰ろう、寒いし、腹減ったし。
こうして俺は氷山の面倒事を東城に押し付けて帰る事にした、まぁ朝の仕返しとでも言っとこうか、それではさよならお二人さん。
「どこ行くんだよ総賀」
「どこ行くの、総賀くん」
ほっといてくれて構わないから、俺は家に帰るんだよ!!
はぁ~本当に先が思いやられるな。
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