カクヨムで中堅作家やってたら学校一の美少女にバレて、なんか付き合うことになった件 〜最高級お嬢様()と放課後喫茶店でダラダラ仲良くする日々って良くないですか?〜
第2話 私は美人で賢く自分に芯のある女性です。
第2話 私は美人で賢く自分に芯のある女性です。
なかやまきんにくんより面白い芸人がこの世に存在しない事は皆さんもご承知の通りだ。
彼の代表的なネタと言うと、マグマ中山によるマグマスパゲッティというのが、万人の共通見解と一致することだろう。
確かにあれは面白い。僕もYouTubeなどで、何十回も同じネタを見ているが、次に何を言うのか完全に知っているのに毎回笑わされてしまう。
攻撃が来るとわかっているのに防御不可能と言う、何かの武術の奥義みたいなことになっている。
だが、僕にとってこの他に個人的にイチオシのネタが存在する。
それは、「健康の為なら、病気になっても構わない!」と言うネタだ。
彼のキャリアの初期の方で使われたネタであり、登場時にこれを言ってから「どうもーなかやまきんにくんでーす」と続く導入用の軽いジャブ。
本人的にそこまで手ごたえがなかったのか、次第に使われなくなってしまったネタだが。
僕はこの倒錯感というか、本末転倒感が実に好きだった。
とは言え所詮、ネタはあくまでネタだ。
現実世界でこのレベルの錯誤をする人間などそうはいない。
そう思っていた。
だから。
文武両道。才色兼備。質実剛健。品行方正。その他諸々エトセトラ。
完璧にして究極にして最高のお嬢様。
そんな存在が同じレベルの錯誤を。
いわば「楽をするためならば、どんな苦労もいとわない」とでも言うべきずれた決断を下したときの衝撃は、一生忘れられそうにない。
そんな、黒雛アスカと僕の出会いを伝えるために。
高校の入学式の時点まで時系列を戻したいと思う。
ーーー
「ここが今日から僕が通う高校か……」
県立馬路卍(まじまんじ)高校。
県内でも1番の進学校の、それも特進コース。
中学時代は野蛮な猿どもに抑圧されてきた僕だけど、ここならばきっとうまくやれるはずだ。
ケホン、ケホン。
緊張に詰まった胸を、咳払いで解す。
落ち着け、力むんじゃない。
きっと入学式の後にクラスの中で自己紹介の時間があるだろう。
でもそこで、何かしようなどと思うな。
無難でいいんだ、無難で。
何しろ普通科6クラスに対して、特進コースは1クラスだけ。
つまり、3年間クラス替えなしで同じメンツで過ごすのだ。
ここで何かやらかしたら、3年間「こいつは軽く扱っても問題のない奴だ」と言う“正当な評価“の下で生きていくことになる。
一度そうなってしまったら、覆す事は不可能に近い。
だからこそ、無難に。
きっと他のクラスメイトも同じようなことを考えていたんだろう。
だからこそ、入学初日の自己紹介の時間。
そんな空気、雰囲気の中。
「〇〇中出身、黒雛(くろひな)アスカです。
私は美人で賢く自分に芯のある女性です。
よろしくお願いします」
黒雛アスカの自己紹介に、僕らは度肝を抜かれた。
ウケ狙いというような抑揚もなく。
ツッコミ待ちの照れ笑いもなく。
かといって本気で言っているようなマジッぽさもなく。
何の感情も読み取れないような平坦な口調。
どえらい美人が何の表情も浮かべずに。
一体何を考えているのか。どんな反応を返せばいいのか。
初対面のクラスメイト同士が互いに顔を見合わせている中。
「なにそれ、超ウケるんですけど」
クラスで1番派手な雰囲気のギャルっぽい女子が気安く突っ込んだことで、みんなが安心して笑い声をあげはじめた。
そうだ、これはネタだ。
ウケた、ウケたんだ。今面白いことが起きたんだ。
そう確かめ合うような、なごやかで暖かな雰囲気。
当の黒雛自身はそれに対して何の感情も浮かべていないようだったが、その熱にうかされた馬鹿がいた。
僕だ。
この雰囲気ならいける、そう思ってしまった。
「はい、じゃあ次は男子の出席番号6番」
担任の指名を受けて。
「は、はい。
△ △中出身の、き、桐島カズトです。
か、か、かの、彼女、ぼ、募集中、です!
ヨロシクオニャギャイシマシュゥ……」
やべえことをやっちまった。
もう全然言えてないし。特に最後がひどい。
しかもちゃんと言えてたとしても、「え、なんでわざわざそんなこと言ったの?」と素朴な疑問を呈されてしまうような内容だ。
あの時の空気は思い出したくもない。
静寂。圧倒的静寂。
さっき突っ込んでたギャルも、この大ヤケドに巻き込まれる気はないのか、自分の爪とか凝視してるし。
「あー……。じゃあ次は、女子の6番」
何事もなかったかのように担任が進行してくれて救われたと思ったが。
「× ×中出身の琴寺シズクです。
……どうしよう今のの後とか、ちょっとキツいんだけど!」
ドッ!!!
張り詰めた空気が弾けるように、教室中に笑い声が上がった。
よかった……ウケたんだぁ(白目)。
さっきまでは「なかったことにしようぜ」的なムードだった僕の自己紹介だが、可愛くて優しそうな琴寺さんが取り上げたことで、「てゆうかさっきのやつクソ程滑ってたわ!!!」と皆が再認識した。
控えめに行って地獄だった。
___
早いもんであれから3ヶ月。
僕は孤立した。
息をするように孤立した。生来的な習性に従うように孤立した。
思えば物心ついた時からそうしてきたように、僕は孤立した。
孤立した。孤立したんだ…… (絶望)。
あの悲惨な自己紹介以来、僕の存在はクラスの中で完全にアンタッチャブルなものとなった。
同じ状況でも、陽キャタイプの人間ならば持ち直すことも可能だっただろう。
逆にスベリ芸を極めるなどして、いい感じのいじられポジションを目指す道もあったはずだ。
でも、僕にそれはできなかった。
生来気が小さいくせにプライドの高いこの僕だ。
気さくなクラスメイトたちが「あの時は勇気出したね(笑)」とか救いの手を伸ばしてくれた時も、「べ、別に……(震え声)」みたいにしてコミニケーションを遮断してしまったからな。
クラスの総意としてこいつもうええわとなるのに時間はかからなかった。
もはや高校生なのに、高校生と会話をすることがほとんどない生活だ。
昼飯を友達と食べるとか皆無だからね。
昼休みの度にそそくさと教室を出てるもんだから、クラスメートの中で「今日の桐島はどこに行ったかゲーム」が流行っていると言う絶望的な噂もある。
「おい桐島、今度のロングホームルームの内容だけどさ。
ほら、夏休みの前に自由に企画していいってやつ」
「う、うん……!な、何?大沢くん」
このクラスで唯一僕と会話をしてくれる大沢君が話しかけてきた。
といっても、彼が僕の友達になってくれたわけではない。
「男女混合のドッジボールかバスケかで多数決なんだけど、お前はどっちがいい?
俺、集計係だからさ。好きな方教えてくれ」
シャーペンでノートに票数を記ししながら、僕と目も合わせずに問い掛ける。
コミュニケーション不全の僕に、このように事務的な会話が必要になる場合、彼がその役を負うというのがこのクラスでは暗黙の了解となっている。
単純に席が近いと言う事と、彼がお人好しで断れない性格なことも相まって、「桐島くん係」を担っている感じ。
申し訳ない……が、正直助かっているのは事実だ。
「う、うん……。
ど、どうしよう……。え、ええと、どっちがいいかな……」
僕がしどろもどろになって回答できずにいると、みるみる大沢くんがイライラしてきているのが表情からわかる。
やばい。早く選ばなくては。
でも、そのプレッシャーにますます頭の中が真っ白になる。
「……一応、今のところバスケ優勢だけど」
「あ、じゃ、じゃ、バスケ、かな?」
「でも、女子的にはドッジの方が人気なんだよな。体力差考えると、こっちの方がみんなが楽しめるかもな」
「じゃ、じゃあドッジかな……」
ハァーっ。
大沢くんが大きなため息をつく。
気持ちはわかる。
自分でもコミュ障すぎて死にたくなるわ。
対面式のコミュニケーションって、マジで苦手なんだよな。
リアルタイムアクティブバトルとかホント無理。
ターン制にしてくれ。シンキングタイムをくれ。
メールとかの文章でのコミュニケーションなら、もうちょっとマトモにやるから!
「じゃぁまぁ、明日の朝にもっかい聞くからそれまでに考えといてくれ」
「あ、ありがとう……ごめん……」
「別にいいけどさぁ。
なお、桐島。別にどうでもいいんだけどさ。
自分の好きなこととかやりたいことぐらい、普通に言えるようになったほうがいいんじゃね?」
「ご、ごめん……!」
「別に謝らなくていいけどさ。俺に関係ないし。
んじゃ、また明日」
そう言って、大沢くんは部活に向かっていた。
はぁ。また迷惑かけちゃったぜ。
どうして僕は、こうなんだろう。
うちのクラスにイジメは無い。
さすが県内トップの秀才軍団は合理的だ。
みんな自分の生活を豊かにするのに忙しくて、他人をいじめている暇なんかないんだろう。
誰もが思い思いに、勉強したり、部活を頑張ったり、バイトをしたり、街で遊んだり、ギターを始めたり、ギターをやめたりと自分の青春に集中している。
誰1人、わざわざ僕に関わろうとはしてこない。
喜びもなければ苦しみもない、吉良吉影が追い求めたような平穏な生活。
地獄のような中学時代を思えば、理想的な環境かもしれない。
それでも。
「ねぇねぇ黒雛さん!今日こそ俺らと遊びに行こうぜ!」
「御免なさい。今日も少し用事があるの」
「えぇー!?前もそう言ってたじゃん!」
「ちょっとやめなよ男子ぃー!
黒雛さん困ってんじゃん!」
「ねぇねぇ黒雛さん!なんで部活やらないの!?
体育の時とか、さりげにスーパーテクニック見せてるじゃん!
黒雛さんだったらウチのソフト部に来たら即レギュラーだよ!ねぇ一緒にやろうよ!」
「御免なさい。持病があって、あまり無理ができないの」
「ご、ごめん……」
「ねぇ黒雛さん。
黒雛さんってめっちゃ髪きれいだよね!どこの美容院行ってんの?私も行ってみたい!」
「御免なさい。近所の適当なお店に行っているから、店名が思い出せないわ」
すぐ隣の席でリア充全開してる奴がいるとさすがに惨めな気持ちが湧いてくる。
入学してから3ヶ月も経っているのに、ちょっと慕われすぎだろこの人。
黒雛アスカ。
あの鮮烈な自己紹介をぶちかました美少女は、今や学校中の人気者にまで登りつめていた。
今彼女を囲んでいる大量の取り巻きたちも、半分以上が他のクラスや上級生だと言うのだからすごい。
5月に行われた中間試験で学年1位を取り、体育の時間でも無双。家庭科の調理実習や音楽の授業でも他を圧倒するパフォーマンスを見せつけていた。
それでいて偉ぶることもなく周囲には親切に接して、品行方正無遅刻無欠席の生活態度に教職員の信頼も厚い。
1年生にして生徒会役員に推薦されながらも、自らそれを辞退したと言う噂もある。
超絶美人でスタイル抜群。
黒髪のロングヘアーは、濡れているのではないかと思うほど常に艶やかだ。
透き通るような声に、品がありながらもどこかセクシーな仕草。
その上実家は超がつくほどのお金持ち。
入学以来30人以上もの男子による告白を全て蹴散らしてきたと言う噂にも、奇妙なリアリティーが宿る。
世の中不公平なもんだ。
僕も黒雛のような人間に生まれていたなら、もっと楽しい高校生活だっただろうに。
ちなみに僕は中間試験ではクラスでも底の方だった。
とは言え所詮、人は人だ。
僕はさっさと帰宅して、いつもの“日課“にシコシコ勤しむこととしよう。
そう思って荷物を持ち、立ち上がったところ。
—-ゾワリ。
背筋に冷たい何かが走る。
……視線?
そう思って、違和感の方向に向き直るが、そこには引き続き誘いをたおやかに断る黒雛の姿しかなかった。
だが……。
いや、僕の勘違いかもしれないけれど。
一瞬。ほんの一瞬。
黒雛の瞳の奥底から、恐ろしく冷たい何かが顔出したことを感じた。
「ちょっとアンタ、何見てんだよ。
マジでキモいんだけど」
「ひっ!ご、ごめん……」
クラスメートのギャルに罵声を浴びせられ。
「そんなこと言っちゃダメだよ〜。
桐島くん、帰るのかな?また明日ね!」
「う、うん。さ、さよなら……」
見かねた女子、琴寺さんが助け舟を出してくれる。
ギャルと聖女。
黒雛に次ぐルックスの、今やクラスの中心人物達にへつらいの笑みを浮かべつつ教室を出る。
さっきの黒雛の瞳……。
—-いや、気のせいだよな。
僕はすごすごと帰り途についた。
—-
ウチの学校には、東門と西門がある。
僕がもっぱら利用するのは、東門の方だ。
今日も退屈な1日だった。
でもまあ、琴寺さんと少し会話できたのは、幸せポイントゲットかな? (底辺の発想)
誰にでも優しい人だからね。僕みたいな陰キャに勘違いされることも多いんだろうな。
とは言え、僕の戦場は学校ではない。
家に帰ってからが本番だ。
さぁ今日も“日課“を頑張るぞ!と気合を入れて自転車をこいでいたところ……。
わん!わんわんわん!
聴き慣れた犬の声を背中で聴いた。
「コロタン!コロタンじゃんか!」
振り返った僕は鳴き声の元へ駆け寄る。
声の主である中型犬が、はっはっはっ!、と息を切らしながら僕の胸に飛び込んできた。
うりうりうり。
相変わらず不細工だな、この雑種野郎!
顔面をベロベロと舐められながら、頭を撫でてやる。
「おお、よしよしよし!
久しぶりだなぁ。元気にしてたか?」
「こんにちは、カズトちゃん。
学校から帰るところかい?」
「うん、おばあちゃん。久しぶり。
おばあちゃんも、お出かけ?」
コロタンを連れているのは、この辺に住んでいる僕のおばあちゃんだ。
シワだらけの顔に、優しい笑みを浮かべている。
会うのは、中学の卒業式以来かな?
「うん。ちょっとそこのSマートにね。
食材が切れて来ちゃったから、お夕飯の買い物しなくちゃ。
ティッシュや洗剤もなくなって来ちゃったから、少しずつ買い足さないとね」
Sマートか……。
近いのはいいけど、色々とイマイチなんだよなぁ、あのお店。
なんか薄汚いし、生鮮食料品とかあんまり状態が良くないし、狭くて品揃えも悪いし、それでいて高いし。
言っちゃ悪いけど、「近い」以外に利用する理由がない店だ。
少し移動することになるけど、学校の向こう側にあるLマートの方が、あらゆる面で優れている。
ドラッグストアも併設していて、洗剤やティッシュなんかも品揃えが豊富な上に安い。
プライベートブランドも充実していて、食料品も安くて良いものが揃っている。
「ねぇおばあちゃん。
僕が付き合うから、Lマートまで行かない?
ティッシュとか洗剤とかもおばあちゃん1人だと一回で運び切れないかもしれないけど、僕が持てばストックまで買い込めるからさ。
コロタンのお散歩ついでに、どうかな?」
おばあちゃんも昔は車に乗ってLマート使ってたけど、少し前に池袋の事件を機に運転免許を返上したから、遠出が難しくなっている。
近場のSマートだと買い物が楽しくないらしく、ついつい既製品のレトルトや出来合いの惣菜で済ませてしまうことも多いっていうし。
ここはひとつ、協力させてもらいましょう。
有無を言わせずおばあちゃんのカバンを自転車のカゴに入れてしまう。
最初は遠慮していたおばあちゃんだったけど、一緒に歩きながら話していると、だんだんうれしそうにしてくれた。
僕も久々にコロタンの散歩ができて嬉しいし、win-winだ。
Lマートでは、おばあちゃんも火がついたのか、大量の買い込みを決行した。
ティッシュやトイペ、台所洗剤や洗濯用洗剤、シャンプーリンス石鹸のストック。
醤油にサラダ油、米。お茶っ葉にコーンフレーク。冷凍食品。
災害対策かと思うほど、大量の物資を確保した。
さすがに重い……。
自転車のカゴに入れて、ハンドルの両サイドに買い物袋を大量にぶら下げ、後ろの荷台まで利用しながら帰路についた。
「ごめんねぇ、カズトちゃん。
おばあちゃん、嬉しくなってついいっぱい買っちゃったわ。
重たいでしょう?迷惑かけちゃってごめんねぇ」
「いや……大丈夫大丈夫。
これでも男子だしね!」
汗だくになりながら強がりを言う。
ヒッヒッフー。ヒッヒッフー。
“息吹“。
肺の中の空気を全て吐き出すことで、強制的に深呼吸を促し大量の酸素を摂取すると言う、武道の技術だ。
たかだか買い物で潜在能力の全てを発揮せざるを得ない自分の体力のなさを嘆きつつ、僕は必死で自転車を押す。
やっとの思いでおばあちゃんの家にたどり着き、僕は買い物の荷物を片付けた。
ティッシュはこことここ。トイレットペーパーも包装を外して設置。
サラダ油とごま油も開封して所定の位置へ。マヨネーズも古いのを捨てて冷蔵庫に入れよう。
空き瓶やペットボトルが溜まっているから、整理して玄関の近くに置いておく。
おばあちゃん、きれい好きでし掃除上手だけど、非力で重いものが持ち上げられないからな。
数年前におじいちゃんが亡くなってから、いろいろ不便も多いだろう。
「ありがとうねぇ、カズトちゃん」
おばあちゃんが入れてくれたお茶と茶菓子で、ほっと一息つく。
ああ、おいしい。
僕は和菓子系が好きなんだよね。
家だとあまり出ないから、おばあちゃんの家だとついがっついちまうぜ。
「ところでカズトちゃん。
高校生活はどうかしら?お友達、いっぱいできた?」
「う……、ウン。タクサンデキタヨ……?」
あまりの不意打ちにこしあんが喉に詰まる。
「そう!よかった!
カズトちゃんはとっても優しくて面白いから、きっとみんなカズトちゃんのことが大好きなのね!
おばあちゃんわかってたわ!
カズトちゃんは絶対クラスの人気者になるって!」
「ソ……ソウナンダヨネ。
マッタク、ミンナ、ボクガイナイトダメデサ……。
コマッタモンダヨ」
途中、ロボットみたいになりながらも、久しぶりにゆっくりとおばあちゃんと話ができて嬉しかった。
コロタンのこともたっぷり撫でてやれたしね。
「カズトちゃん、よかったらお夕飯も食べていってほしいけど……」
おばあちゃんが遠慮がちな態度で言う。
本当は食べていきたい。
おばあちゃんの作る煮物、めちゃくちゃおいしいからな。
ウチで出てくる作り置きの惣菜なんかよりずっと。
でも……。
「ごめんね。
今日はもう帰るよ。母さんたちも心配するし」
そう言うと、おばあちゃんは残念そうに引き下がった。
まぁ、いろいろあるのだ。
なんだかんだで帰った頃にはまあまあの時間になっていた。
夕飯を食べて風呂に入って宿題を雑にに片付けるともう23時半だ。
おばあちゃんの家に行っていたからだな。いや、それはいいけど。
もう寝たほうがいいんだろうけど……いや、“アレ“をやるまでは寝るわけにはいかん。
今日取り出した僕は、シコシコと“日課”を始めた。
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