第3話 ログアウトできない

 結局あの後、色々な単語を頭に浮かべて試したり、叫んだりして見たが

一向にログアウトできなかった。


「くそ、どうしてログアウトできないんだろう」


 何をやっても反応が無かった。それでも諦めず、ログアウトを試みて思いつくまま単語を言ってみる。


(強制終了してください、運営に繋げて、運営お願い、……)


 ぐるぐると、ベッドの周辺を歩き回る。


 色々と試したけれど、やっぱり何の反応もなかった。考え付くことは試してみたがすべてダメだった。


 場所が悪いのかと、部屋から出てみる。村のあらゆるところ、最初の家から離れた場所、村の外れ、更には街道まで出て行ってログアウトを試したが、残念ながら何も変化は起きなかった。


 次にオレは、NPCに問いかけることにしてみた。


 外に出ているNPCと思われる人を発見したので、話しかける。朝、少しだけお話したチュートリアルのおじさんだ。


「すみません」

「どうしたんだい?」


 声をかけると、彼は笑顔で対応してくれた。


「ログアウトできなくなったんですが、運営へ連絡できませんか?」

「え? ログアウト? 運営? ギルドの事を言ってるのかい? ギルドなら、この村には無いから町の方へ行かないと、連絡はできないよ?」


 返ってきた答えは、求めるモノではかなった。運営との連絡もできないようだ。


 しかし、ヒントを得た。ギルドに連絡? もしかすると、町の方へ行ったり、何かイベントをこなさないといけないのだろうか。


 モンスターを狩った後に、この村へと戻ってきたのは間違いだったかな。


「ありがとうございました、町の方へ行ってみます」

「町の行き方は、分かるかな? あの道をずっと辿って行けば、一番近くにある町へ到着するはずだよ。あっ、でも今日はもう日が暮れるから。今からじゃ森の中を行くのは危ないよ」


 親切に教えてくれた。おじさんが指さす方向を確認して、町への行き方を知る。


「ありがとうございます」

「あ、うん。気をつけてね」


 もう一度お礼を言って、その場から離れた。


 今から道をたどって、町の方へ行こうかとも思ったが、おじさんの言葉の通り夜になるから、今から行くのは難しいかも。ゲームの設定では、夜になればモンスターが狂暴化して強化されると書かれていたはず、だから危ないだろうと考えたから。


 最初の家へ戻ってきて、ちょっと固めなベッドの上に飛び込んだ。頭の後ろに手を組んで、寝転がる。あーでもない、こーでもないと考えていると、ある一つの可能性に気付く。


「そうだ、12時間制限!」


 『Make World Online』をプレイするためのヘッドギアという機器には、生存機能というものが標準装備されていたはず。12時間以上のVRゲーム連続プレイは健康を損なう恐れがあるので、強制的に終了させられるはず。


 時間が経てば、ゲームから強制ログアウトされるはずだっ。


 ならば、12時間以上経つまでここで待っていれば、もしかしたら! 他に方法が考え付かなかったので、12時間経って強制ログアウトになるのを期待して待つことにした。


 それで本当にログアウトできるのか、分からない。僕が感じた、嫌な予感については考えないようにした。


 12時間経過するまで待機。待っている間は、暇だったので初めてのスキルを取得してみることにした。


 情報ウィンドウを表示して、習得できるスキルを確認してみる。スキルポイントを消費して、特殊な技を覚える事ができる仕様である。


 覚えられるスキルは、職業とレベルに依存しているために、冒険初心者Lv.50の俺は、冒険初心者が覚えられるスキルだけしか習得できない。強力なスキルを覚えるために、早く別の職業に転職したい。


 消費したスキルポイントは、戻すことが出来ないので慎重に覚えるスキルは選んでいく必要があった。


 とりあえず一度、スキル習得を体験するために技系スキルである”全力斬り”を取得してみる。ポイントを5消費して、覚える。


(全力斬りを習得しました)


 頭の中に、ゲームのアナウンスが流れるとともに、全力斬りの方法も頭の浮かんできた。技系スキルは、習得した瞬間にスキルの発動方法も頭の中に流れ込んでくるのだろう。便利だ。


 スキルには他に、防御系スキル、ステータスアップ系のスキル、職業専用スキル、常時発動スキルなどがあるらしいけど、冒険初心者で取得できるのはショボそうなのしか見当たらない。今は、とりあえずスキルポイントをキープしておこうかな。


 ということで、今日のスキル取得は終わりにする。


「さて、12時間経過するのを待つかな……」


 やることもなくなって、ベッドの上に寝転びながら天井をボーッと眺めて時間経過するのを待った。



***


 夕方から夜になり、夜が朝になっても何も変化はなかった。


 途中眠気に襲われたので、そのまま眠ってみて意識も手放した。たっぷりと時間が経ってから、眠りから覚めるとそのまま何も変わらず、ログアウトされていない。


 明らかに12時間は経過しているはずなのに……。


 目の前は、変わらずゲームない世界の景色が広がる、ベッドのある部屋に居るだけだった。俺はベッドから降りて立ち上がり、決意する。


 やはり、町まで行ってみよう。今のままベッドの上で待っても何も変化が無い。


 近くの町にあるという、ギルドへ行けば何かイベントが発動して、そうすることでログアウトに関する何かしら、変化があるかもしれない。


 オレは決意して、町へと向かう事にした。


 と、その前に腹が減ったのでどうにかしないと。『Make World Online』に関する前情報の仕様には無かった、腹が減る機能。そんな機能は無かったはずだが、オレは今、無性に腹が減っている。考えたら昨日から何も食べていないから。


 剣とアイテム袋が、腰からぶら下がっている事を確認してから、外へ出る。何か、食べられる物が欲しい。


「おや、おはよう。今日も森へ狩りに行くのかい?」


 昨日話しかけられた場所で、同じおじさんに同じ言葉を投げかけられる。


「いえ、ちょっと思うところがあって町の方へ行こうかと」

「そうかい、今日は天気もいいしちょうどいいかもしれないね。いってらっしゃい」


「ありがとうございます。あっ、それとこの村ってお店はありますか?」

「お店? お店なら、あそこに小さいけれど一応、物々交換してもらえるよ」


「何度も有難うございます」


 おじさんにお礼を言ってから、教えてもらった店へ向かう。お金は持っていないが昨日、モンスターからドロップして入手したアイテムを持っていた。お店でオレは、持ち物と食べ物を交換をしてもらった。


 林檎のような真っ赤な果物を交換してもらい、食べた。味をちゃんと感じる。


「ははっ……。うまいや」


 オレはまだ、何も気づかないふりを続ける。そして改めて、村の外へと立つ。町へ向かう道を歩き始めた。


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ユウ

Lv.50

STR:226

CON:291

POW:450

DEX:510

APP:17


職業:冒険初心者

EXP:1010

SKILL:45


スキル:全力斬り Lv.1


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