第2話 ステータス確認
もう一度、自分のキャラクターのステータスについて確認しておく。最初に確認をする作業は非常に大事だから。
------------------
ユウ
Lv.1
STR:10
CON:12
POW:10
DEX:15
APP:17
職業:冒険初心者
EXP:0
SKILL:1
スキル:なし
------------------
「ほうほう、ほう」
次に、数値が高いのはDEX(敏捷性)の15ポイント。その他については、平凡な数値と言えるだろう。
EXP経験値は、まだ獲得していないのか。モンスターと戦って稼ぐのかな。
ステータスボードに表示されたポイントの他にも確か、隠し能力としてプレイヤーには確認できない、非表示の能力値が設定されているらしい。事前に公開されていた情報の通り、ステータスボードからは見えないのかな。
付属していた説明書には、概要だけ少し書いてあった”隠しステータス”について、ステータスボードには表示されていない、見えない事も確認する。
キャラクターのステータスについて確認し終わったので、目の前のステータス表示を消す。
今度は口に出さず、頭の中で"ステータス・クローズ"と表示を目の前から消そうと唱えてみた。すると、ステータスボードはちゃんと目の前から消えてなくなった。
「ちゃんと消えるね、良し良し」
次に確認するのは、プレイヤーの初期装備らしい左の腰にぶら下がっていた道具袋だ。スタート時から持っているプレイヤーアイテム。
麻のようなもので作られている、その袋の中に手を突っ込んで見る。そして袋から手を出すと、鞘に入ったショートソードと呼ぶに相応しい剣が一本出てきた。その袋の大きさに対して明らかにサイズ感が合っていない、大きな剣が出てきたけれども、そこは突っ込まないでおこう。
剣の他には、なにか無いだろうか。袋の中を探ってみたが他は出てこない。初期で支給されるアイテムは、武器の剣が一本だけのようだった。
部屋の中を見渡し、扉を見つける。そこから外へ出れるようだ。さぁ、ゲーム世界に足を踏み出そう。
さっそく外に出てみると、まず頭上にある太陽の光が目に飛び込んでくる。さすが体感型の新作VRゲーム。ほんとに現実と同じような世界が、そこにあった。
暖かな日差しが、あまりにもリアルだった。手を顔にかざして、太陽の光を遮って辺りを見回す。どうやら小さな村のようで、石とわらの屋根の建物があるだけ。村の中の周辺には木々が生い茂っていて、この村は森の中にあるのだと分かる。
これがゲーム最初のスタート地点となる村なのかなぁ。説明書にも書いてあった、ゲームを始めると開始される最初の村か。
「おはよう」
恰幅の良いおじさんに、いきなり話しかけられる。びっくりした……。
「あっ、はい、おはようございます」
オレは不意打ちの挨拶に胸がバクバクした状態。驚きながらもなんとか返事した。おじさんは、にっこりして俺に言った。
「今日は狩りに行くのかい?」
「えーっと……。そうです、狩りに行ってきます」
何の話かわからないが、とりあえず話を合わせる。本当に会話をしているようだ。最近のNPCプログラムはすごいな、と思いながら無難な対応をしていた。
まずは、キャラクターの強化からかな。レベルアップのためにモンスターを狩りに行こうと思うので、口に出した通り狩りに行ってくると言う。
「あなたは、この辺に来るのは初めてだと言っていたな。なら、あっちにある狩場がオススメだよ。気を付けて行ってらっしゃい」
「ありがとうございます」
男性はチュートリアルなのか、狩場の場所を指を差して場所を教えてくれている。そう言うと、向こうへと歩いて行ってしまった。行ってらっしゃい、なんて久しぶりに聞いた言葉だなと思いつつ、教えてもらった狩場へとさっそく足を向ける。
***
(レベルアップしました)
「おっと、早速レベルアップか」
最初に発見したのは、頭に”アントLv.1”と表示されているモンスター。
雑魚モンスターのような見た目、アリのような外見をした昆虫をショートソードを一振りして斬り捨てる。すると、頭のなかにファンファーレとともにその言葉が頭の中に流れるとともにアナウンスがあった。どうやら、レベルアップしたようだ。
初めての戦い。ショートソードを振り回したせいで流れた汗を拭い、一息つく。
「ステータス・オープン!」
ステータスボードを表示させる。目の前に浮かぶのを眺めながら、上がったらしい数値を確認する。
------------------
ユウ
Lv.2
STR:11
CON:15
POW:11
DEX:19
APP:17
職業:冒険初心者
EXP:20
SKILL:1
スキル:なし
------------------
「よしよし、上がってるな」
ステータスが上がったのを自分の目で確認してから、満足気に言う。このレベルが上がる瞬間がRPGの醍醐味だよな、なんて思いながらステータスボードを消して、次のレベルアップ目指して、モンスター狩りを再開する。
1分後、また頭の中にファンファーレが鳴る。
(レベルアップしました。)
「ん、もうレベルアップか……?」
『Make World Online』が発表した前情報だと、確かレベルアップするのに必要な経験値はかなりキツ目に設定されている、って話だったけれど。
先ほどのレベルアップからそんなに時間も経っていないのにもかかわらず、頭の中にファンファーレが鳴り響く。
早速ステータスボードを確認してみる。
------------------
ユウ
Lv.3
STR:12
CON:18
POW:14
DEX:24
APP:17
職業:冒険初心者
EXP:40
SKILL:2
スキル:なし
------------------
「上がってるなぁ……?」
さっきも、20の経験値を手に入れたらレベルアップしたけれど、それから必要な経験値が上がっていない。
「もしかして、ある程度のレベルに達するまでは必要経験値が一定なのかもな」
まぁ今は、あまり気にする必要もないかなと、モンスター狩りを再開する。
***
辺りが夕暮れになるまで、3時間程を費やして、森でモンスターを狩ってみたが、結局レベル50に達するまで、レベルアップするのに必要な経験値は変わらず20のままだった。
これはまだ、先行体験版だからレベルアップするのに必要な経験値が、低めに設定されているということなのかな。
モンスターを次々と倒していくと途中、ドロップアイテムもいくつか入手できて、とても充実したレベル上げの時間を楽しめた。お腹も減ったし、肉体的にはそんなに疲れはないが、連続してモンスターを狩り続けるのに精神的に疲れてきた。
とりあえず、未だに分からないレベルアップの謎はそのままにして、モンスターを狩るのを止めて村へと戻る。
確か、現実世界とゲーム世界は連動していて時間が同じように進んでいるはず。
だから、そろそろお昼を過ぎて夕方頃だと思う、ちょっと早めの夕飯でも食べようかな。そして、夕飯を食べたらすぐにゲーム再開しようか。
もうオレは、この世界にハマっていた。
最初にゲームが開始されたスタート地点に戻ってきた。ベットしかない部屋の中に入って、ログアウトを試みる。
「ログアウト!」
口に出す必要のない言葉を、また口に出して言ってログアウトしようとする。
しかし、何も起こらない。頭の中でもログアウトをしようと唱えるが、ログアウトが実行されることはなかった。
「あっれ……? おかしいな」
(ログアウトします!)
今度は思考操作でログアウトを試みる。だが、何の反応もしない。ログアウトするときは、"ログアウトします"と思考操作することで、ゲームが終了するとゲーム開始した時の説明と、あと付属の説明書にも書いてあったはずだが。
(強制終了します! 終了します! おわり! ゲームを出る! ゲームを出せ!)
思いつくままに、いろいろな単語を思い浮かべてみるが、何も反応してくれない。ログアウトできない……。
運営側の不具合か? 機器の故障とか? ログアウトの方法が間違っていたか? あらゆる原因を考えたが、解決する方法が分からない。
(運営へ連絡! 強制終了する!)
「強制終了します! 強制終了して!」
色々と試してみたがなんの反応もない。ログアウトができない。それは、一昔前に流行したマンガやゲーム、小説のストーリーの始まりのようで。
ある嫌な予感が頭をよぎった。
(どうしよう、ゲームの中に閉じ込められてしまった……)
------------------
ユウ
Lv.50
STR:226
CON:291
POW:450
DEX:510
APP:17
職業:冒険初心者
EXP:1010
SKILL:50
スキル:なし
------------------
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます