第24話 思わぬヒーロー
「うわ、やっべ……」
「鍵閉めてなかったのかよ……」
不良先輩たちが急に弱気な声を上げる。僕への暴力はピタリと止まり、急に慌て始めた。いくら戦闘民族でも鬼のスドーにはタジタジのようだ。
「……何をしているのかと聞いているのだ」
須藤先生は低い声で唸る。そして、ただ歩いているだけなのに、なんだかすげえ威圧感がある。後ろに仁王かなんかのスタンドがいるような感じ。
「お、オウッ!? やんのか!?」
そして、須藤先生はゴリラ先輩の前に立つと、胸倉と制服の袖を掴んで、背負い投げの構えをとる。体格面ではゴリラ先輩の方が有利に思えたが、いとも簡単に持ち上げてしまい、そのままコンクリートの地面に叩きつけた。派手な音からして手加減をしているようには思えない。
「きょ、教師が暴力を振るってもいいのかよ!?」
「どうしようもない馬鹿はこうするしかないだろ」
「……せ、センコーだからって調子に乗ってんじゃねえ!!」
残された不良先輩2人が、須藤先生に向かって突進していく。
だが、須藤先生は少しも怯えることなく、握手をするように手を伸ばした。2人はその手に触れただけで不良先輩は地面に転がってしまう。超能力か何かかと思ってしまったが、塩田剛三。合気道でそんな技があったような気がする。
圧倒的な実力差を目の当たりにして、勝てる相手ではないと悟ったのか、不良3人組は「覚えていろよ!」と捨て台詞を吐いて屋上から出て行った。
「……大丈夫か?」
須藤先生に手を差し伸べられ、立ち上がる。
手を伸ばせばさっきの不良先輩のようにみたいに転がされるのではないかと思ったがそうはならなかった。
「大丈夫です。助けてくれてありがとうございました」
相手が多数だったとはいえ、こうして助けられるのは男としてなんだか負けたような気がする。かと言って、助けられなかったらもっと悲惨なことになっていそうだし、結果としては判定勝ちだよな。
「私を庇ってくれたんだよね……ごめんね……」
今度は逢坂先輩が瞳をウルウルとさせて申し訳なさそうに近づいてくる。
自分のせいでこんなことになったと勘違いしているのだろうか。
「逢坂先輩は関係ないですよ。僕の方こそ巻き込んでしまってすみませんでした」
「私はなんともないから平気だよ。でも後輩が……」
「怪我も無いし気にしないでください。こうして無事助けられたんですから何も問題なんてないですよ」
そう言って再び辺りを見回すと、須藤先生は既に居なくなっていた。
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