世界が終わっても構わない

不完全燃焼


実はそうでもなかった

一緒にいれるだけで良い


翌日も好天に恵まれ、僕と幸子は熱海を満喫していた

長寿祈願の神社に寄り、前回と同じ願い事をする


“もう1度、幸子とここに来れますように”


そして性懲りもなく、おみくじを引く


僕 大吉ゲットw

僕 幸子は?


ここで幸子も大吉ならば漫画だけど、現実はシビアだ


幸 小吉・・・

僕 でも凶から大躍進だよ

幸 そうだよねw

幸 でも私は結んで帰るね

僕 無論、持ち帰るよ!


熱海城に上り、イベントで景品を貰えたのだが、熱海の文字が入った景品は二人とも選ばなかった

駅ビルで遅い昼食を取り、僕たちは少し奮発してグリーン車で帰路に着いた

結局1枚の写真も撮らなかったが、電車の中で眠る幸子を僕は1枚だけ携帯に収めた

電車で眠る幸子の眠顔も可愛かったが、僕はそれ以上の寝顔を知っている

少し躊躇したが、僕は写真を消去した


横浜駅に着いたのは16時過ぎだった

いつまでも一緒にいたかったが


僕 キリがないから今日はもう帰ろうか

幸 そうね

幸 ありがとう、義明

僕 楽しんでくれた?

幸 凄く楽しかった

僕 僕もだよ


また行こう

今度は何処へ行こう


そんな事を語る時間は僕らにはない

僕はそれだけが悲しかった


17時には帰宅して、事前に用意していた盛岡土産を家族に渡し、僕の嘘はとりあえず綻ぶ事はなかった


泊まったけど

超えなかった


その続きを追いたかったわけではなかった

でも、時間が許す限り幸子と過ごしたい

僕は単純にそう思った


僕:今週の火曜日ランチ行ける?

幸:大丈夫です

幸:でも何故?

僕:ランチのお誘いに理由が必要かな?

幸:必要ですw


そう来たか


僕:理由は幸子と過ごしたいから、許可願います

幸:仕方ないから許可します

僕:感謝します

幸:何処に連れて行ってくれるの?

僕:前に行った個室カフェ、ランチもやってるから

幸:楽しみにしてるわ

僕:では現地集合13時で

幸:了解です!


僕達の関係は変わらない

超えなくても変わらない


時間の許す限り僕は幸子と過ごす事を改めて誓った

約束通りランチをしながら


僕 来週ミニ送別会しようか?

幸 ミニ送別会?

僕 4人で飲もうって事

幸 それ、嬉しい

僕 何処に行きたい?

幸 前に話してた肉のお寿司屋さん

僕 OK

幸 でも年末で斎藤さんと津島さん予定つくかな?

僕 来るよ、奢るから来る

幸 いいの?

僕 この前の競馬のが残ってるからね、たまには奢って株上げとくよ

幸 二人とも喜ぶよ、きっと

僕 じゃあグループラインよろしく

幸 予約は任せて良いのね?

僕 かしこまりましたw


結局23日に予定を合わせて集まる事になった


クリスマスイブのイブだったので、僕はノリでお菓子を3つ用意して行った

すると幸子もお礼の品と称して皆にプレゼントを用意していた

打ち合わせなど全くしていなかったが、同じ行動をしている事が妙に可笑しかった


余談だが、斎藤さんは幸子にプレゼントを渡していたが、津島は何も用意していなかった

らしい、と言えばらしい


大いに盛り上がったが、翌日も仕事があるので各々帰路についた

幸子は有休消化で明日は休み

僕も飲みの席で、明日代休を取っていることは公言していた


僕はいつものように帰るフリをして幸子の路線の改札に急ぐと携帯が震える

電話だ


幸 どこー?

僕 広い上り坂

幸 だから、どこー

僕 幸子は?

僕 見えた!今そっちに行く!


無事に幸子と合流し、東口に移動して目についたバーで飲み直した

僕はいつも幸子に愛を語っている訳ではない

二人で飲む時は、いつも他愛ない事を話しているのだが、自分でも不思議なくらい話題が尽きない

この日も小一時間くらい過ごしたが、まだ時間は9時前

僕達は店を変える事にした


僕 もうお酒はいいからコーヒーでも飲もうか?

幸 コーヒーじゃなくて

僕 まだ飲む?

幸 お酒もいい


幸子はそんなに飲んでいなかったが、我儘モードに入った様子だ

ならば


僕 じゃあ新横浜行っちゃう?

幸 新横でもいいよ


え?

いやいやいや・・・

このパターンはいつもの幸子

でも、もう少し合わせてあげよう


僕 新横の意味は説明したよね?

幸 うん、覚えてる

僕 だったら、西口にも沢山あるけどそこでも良い?

幸 西口でも新横でもどっちでもいい


まじ?

足を止め立ち尽くす僕の手を強く引く幸子


幸 もー

幸 行くよ!


はい?

なんなの?

どうなってる?


僕も幸子の手を引こうとして、二人は必然的に猛スピードで歩く事になり、そのまま一気に西口のホテル街へ

最初に目についたホテルを選んだ


ここは熱海とは違う

ただ、超える為だけの場所

今夜、こんな事になるのは全くの想定外


目の前の幸子が愛おしい

世界が終わっても構わない

幸子だけでいい・・・


その日、僕と幸子は遂に超えた

もう、後戻りはしない








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