幸運の女神

12月14日土曜日


横浜駅で待ち合わせ

僕はいつものように少し早めに着いたのでラインを入れてみる


僕:もう着いたけど、今どの辺り?

幸:私ももういるよ

僕:ならば予定より1本早い電車に乗ろう

幸:そうしよう、8番乗り場にいる

僕:そっちに行くよ


8番乗り場に着いたが幸子がいない

一番都合のいい電車がホームに入って来た

僕は電話に切り替え


僕 どこにいる?

幸 だから8番乗り場

僕 僕もだけど

僕 電車来たのわかる?

幸 目の前だから

僕 とりあえず乗って、中で落ち合おう

幸 わかった乗る


幸子を目視しないまま僕は電車に乗った

再度電話


僕 乗った?

幸 乗ったけど、私乗り場間違えたみたい

僕 でも、多分同じ電車だよ、前の方?

幸 一番後ろの車両

僕 わかった、そっちに移動する


僕は車両の中を移動していったが、グリーン車を通過する時にベビーカーで塞がれていたので移動を諦め

再度電話


僕 ベビカで塞がれてるから移動できない

幸 どうするの?

僕 戸塚で一回降りてホーム走って移動するから待ってて

幸 ごめんね

僕 結構楽しんでるからw

幸 そうだね・・・待ってるw


戸塚駅で僕は一旦降り、ホームを加速装置を効かせながら移動して再度乗り込む

そしてやっと一番後ろの車両に移動し幸子を見つけた


僕 久しぶりw

幸 ごめんね

僕 いやいや、これも楽しいイベントだよw

幸 そうなのね、実は私もドキドキして楽しかったわw


これも江の島の神の嫌がらせだろうか?

だとしたら全然逆効果で、僕と幸子にとってはちょっとしたスリルのある出来事に過ぎなかった

良い思い出の1つになるだろう


無事に熱海に着き

幸子の用意したガイド雑誌に載ってる蕎麦屋で昼食を取り

寛一お宮の像を見に海岸へ歩く


好天に恵まれ、絶好の観光日和だが僕たちは写真を撮らない

一緒に移る事は勿論、景色も自撮りもしない

今日、熱海へ来ている事は誰にも知らせる必要はない

知られてはならないのだ


幸子が初島に渡りたいと言うので観光船に乗った

船に乗るとマリンルージュを思い出さずにいられないのだが、きっと幸子もそうなのだろう

言葉に出さずとも目を合わせただけで、その事は確認できた気がした


初島を一周歩いたが、思いのほか観光客はまばらだ

島は風が少し強かったが寄り添うように手を繋ぎ、貸し切りの様な散歩道をゆっくりと歩いた

途中、灯台の展望台から何処までも続く水平線を眺めた

特に風が強く少し寒かったので、僕は後ろから覆いかぶさるように幸子を包み込みしばらくそのままでいた


初島から戻る前に折角なので浜辺の食堂で少し飲む事にした

幸子に注文を任せ、その隙に携帯で確認すると


僕 あっ、当たったよw

幸 何が?

僕 今朝、待ち合わせに向かう途中でネットで買った競馬

幸 いくら勝ったの?

僕 これ


敢えて画面を見せる僕


幸 これって20万円なの?

僕 そうだよ

幸 凄くない?

僕 凄いねw

幸 私って幸運の女神かな?

僕 女神ね

幸 ・・・

僕 女神なんだw

幸 ・・・

僕 女神ねー

幸 もう、恥ずかしいわ・・・


充分に女神だし、もっと言えば女神なんて軽く凌駕している

ギャンブルなんてものは、所詮運まかせであり、ある意味神に祈りを捧げてお願いするものだ

今日の僕は神に愛されていたのだろう


画面を見せたり、競馬の事を自慢するのもどうかと思ったが、お金の出所を競馬にしておけば、幸子の遠慮も軽くなるかもしれないと判断した上での事


幸 じゃあ何食べてもいいかな?

僕 うん、アワビいこうか?

幸 私、サザエがいいわw

僕 サザエメインの刺し盛お願いします

幸 おいしそうねw

僕 おいしいに決まってるよw


都市伝説で言われる程、江の島の神様も悪い女ではないようだ

もっとも、僕と幸子は江の島には行ってないのだが


熱海の街に戻り、これまた幸子のガイド雑誌に載っている店で夕食を済ませ、少々の酒とツマミを買い込み僕たちは宿へ着いた


熱い海と書いて、熱海

熱海の夜はこれから始まる



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