言葉に出して伝えよう
11月
彼女が会社を辞める日まで2か月を切った
なんとなく彼女が言うには
森 寒くなって来たから、たまには鍋でも行こうよ
僕 いいよ、何鍋がいい?
森 斎藤さんがちゃんとしたモツ鍋食べた事ないって言うの
僕 僕は一応あるけど、行ってみる?
森 じゃあ、久しぶりに4人で行こうか?
僕 良いよ、鍋はある程度人数いた方がいいし
森 4人飲み楽しみだわw
僕 じゃあ来週金曜で
森 何処にする?
僕 この前の歓迎会のビルの1階がモツ鍋やってたから、そこで
森 わかった、グループラインに入れとくねw
僕 予約は任せてくれ
特に寒い日だった
彼女、斎藤さん、津島、僕
いつもの4人は久しぶりだったが、以前と変わらず和気あいあいと飲んだ
4人で飲む時も、彼女と二人で飲む時も楽しさはさほど変わらない
それは僕には不思議な感覚だった
彼女は親しい友人であり、且つ僕の想い人でもある
斎藤さんも津島も満足してくれた様子で各々の帰路に着いた
駅までの移動中、小声で
僕 東横線のホーム一番前で
森 わかった
確認するまでもなく、当然の流れで僕たちは一旦解散した後に再度合流
お互いの乗換駅に出来る日吉まで移動し、目についた居酒屋で飲み直す
相変わらず、とりとめのない話しをしていた
今夜も含め、一緒にいる時間は間が持たない事など皆無で、常に幸せな時間を過ごせていた
こういうのを気が合うとか、相性が良いと言うのだろう
しかし今夜は少し違った
僕は遂に言葉にして伝えた
僕 世の中には、いろんなロスがあるよね
森 福山ロスとか、安室ロスの事?
僕 そう
森 あるねー
僕 僕もある訳ですよ
森 なにロス?
僕 知ってて聞いてるよね?
森 そんな事は・・・
僕 いいよ、そうだから
僕 福山ロスとかは、ファンの方には失礼だけどテレビの中の人な訳で
僕 僕の場合は目の前の、手を伸ばせば触れる事ができる訳で
森 ・・・
僕 僕は貴方の事が好きな訳ですよ
森 それは言っちゃいけないでしょ?
いつになくシリアスな雰囲気だ
僕 それは充分過ぎるくらいに分かってるよ
森 そうね・・・
僕 気づいてたでしょ、僕は分かりやすい人間だから
森 それは分かってたよ
森 本当にありがたいと思ってた
僕 ありがたい?
そう思ってくれるだけでホッとした
正直、玉砕もあると思っていたから
僕 拒絶されなくて良かったよ
森 そんな事する訳ないよ
僕 タイムリミット間際で勇気出したよ
森 そうね、よくできましたw
僕 時間いっぱいまで、できるだけ一緒にいたい
森 離れても逢えるよ
え?
社交辞令でも嬉しいんですけどw
森 私、来週の土曜日なら結構自由に遊べるけど
僕 じゃあ遊ぼう
森 土曜日とか平気なの?
森 奥様はお休みじゃないの?
僕 妻は土曜仕事、仮に休みだとしてもどうにかするから心配しないで
森 無理しないでね
僕 多少の無理は承知だよ
ここは思いきって
僕 温泉いこうか?
森 日帰りでなら
僕 日帰りでもいいけど、できれば泊まりたい
少し考えて彼女
森 泊りは無理だと思う
僕 無理なら仕方ないね
森 それより鎌倉行きたいけど、ダメかな?
僕 貴方が望むなら鎌倉でも地獄でもOKだよ
森 地獄・・・
森 笑えないんですけど・・・
ちょっと失言だったかな?
僕 鎌倉にしよう
森 ありがとう
僕らは居酒屋を出て、終電間際までカフェでコーヒーを飲んで、各々の帰路に着いた
言葉に出して想いを伝えた
これまでも僕の気持ちは伝わっていたが、言葉に出す事で課せられた錘も同時に具現化したような気がした
僕の好きメーターは一体何処まで上がるのだろうか?
そして今夜、彼女にも好きメーターは有り、それは僕程ではないにしても高い位置にある事を感じ取れた気がした
新横浜で日和った僕は、もう何処にもいなかった
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