有頂天な笑み

二次会終了後の事件から何日か過ぎ

僕は大きな一歩を踏み出した

相変わらず家からラインを送信するのは気が引けるので、通勤電車の中から


僕:仕事終わりました

森:お疲れさまでした

僕:ご相談があるのですが・・・

森:なんでしょうか?

僕:来週のどこかでお食事など如何でしょうか?

森:ランチですか?

僕:ランチでも構いませんが、出来れば仕事終わりに飲みでもと思って

森:いつものメンバーですか?

僕:いや、今回は二人でいきたいです

森:二人きりですか?

僕:先週の二次会の続きなので二人です

森:そうですね、たまには二人で飲みましょうか?

僕:では夜飲みにしましょう

森:金曜ですか?

僕:それでもいいですが、水曜はどうでしょうか?

森:私は木曜が休みなのでいいですけど、大丈夫ですか?

森:次の日お仕事ですよね?

僕:代休取ってるから大丈夫です


彼女の休日が毎週木曜と知っての確信犯


森:そうなんですねw

森:では来週の水曜日で

森:何処に連れて行ってくれますか?

僕:これから探します

僕:何かご希望があれば受け付けますが如何でしょうか?

森:おまかせします

僕:では、お店を決めたら連絡します


あらかじめ候補のお店は調べておいたので、その中から1つを選びお伺いを立てる

今どきはネットで探せばいくらでもいい店が出てくるのだ

今回の検索ワードは、横浜・デート・個室・雰囲気


僕:(店の情報を張り付け)ここで如何でしょうか?

僕:OKなら予約します

森:いいですけど


いいですけど?

けど?

やはり個室カフェはまずかったかな・・・

と、心配していると追撃のライン


森:コースだと多そうなので、コース以外でお願いします

僕:了解です、席だけ予約しておきます

森:よろしくお願いします

僕:おまかせください

森:楽しみにしていますw

僕:では当日17:00にお店の前で待ち合わせましょう

森:そんなに早くて大丈夫?

僕:津島に任せて速攻で離脱するから大丈夫w

森:優秀なお弟子さんで良かったですね

僕:師匠が僕だからw

森:wwwwwwwwww

森:流石ですwww

僕:では当日

森:楽しみにしていますw


無事にデートの約束を取り付けて、僕は有頂天になっていた

帰宅後も顔が緩んでいたようで、妻からにやけた顔の理由を聞かれる


妻 あなた、なんかいい事あったの?

僕 うん、今度の10月で位が1つ上がるから給料増えるみたいだよ

妻 そうなんだ、そんなにグーンと上がるの?

僕 そんなには上がらないけど、少しは上がるよ

妻 そうなんだ、それは助かるわねw

僕 うん、やっぱり嬉しいもんだよ


そもそも僕は入社月が10月なので、毎年の昇給は10月なのだ

とっさに答えたにやけ顔の理由として適切だったかどうかは別として、とりあえず不信感は持たれていないようだ


この頃から僕は、彼女との関係が不適切な方向へ進みつつあることを自覚していた

でも、それはせいぜい二人で食事をする程度の事で、大騒ぎするような深い関係にはなるわけがないと思っていたし、家族に迷惑をかけてまで続ける関係ではさらさらないとも思っていたのだ

いわゆる不倫なんてものは、ドラマみたいな別世界の話しで僕には一切関係ない事だと高をくくっていたのだ


予定通り僕と彼女は二人で飲み、翌日お休みという解放感から二軒目でも盛り上がった後、各々の路線で帰路に着いた

僕が自宅に帰りついたのは23:30

妻は起きていたので、明日は代休を取っている事を再度伝え、いつも通り風呂につかり布団に入った


僕の中で彼女の存在がどんどん大きくなっているのを感じていたが、お互いに帰らなければならない大切な場所がある事は重々承知していたので、気持ちを伝えるような言葉は勿論、素振りさえも見せないように一定の距離は保っていた


それでも親密さは徐々に増し、僕は何かと理由をつけては頻繁に彼女と過ごす時間を増やしていった


そんな幸せな日々が続いていたのだが、ある日知りたくもない衝撃の事実を僕は聞かされてしまった

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