逮捕されたら

2019・8・16


中途半端な時期だが、移動する女性社員の送別会が行われた

僕を含めて何人かは盆休み中だったがが、幹事のお局様に押し切られる形で参加を促されたので出席した

斎藤・森川ペアも出席すると聞いていたからかもしれない


前日に新しい服を買うと言うはしゃぎっぷりをみせながら、夕方からの送別会に少し容姿に気合を入れて出かけた


どうせ出席するならS席を確保したい

さりげなく斎藤さんの真向かいに座り、森川さんを隣に座らせようとしたのだが、タイミングが合わずに森川さんは遠い席に離れてしまった

津島は何処にいたか覚えていない


それでも斎藤さんの近くは確保できたので、それなりに楽しく過ごす事ができた

一次会も終わりそうな雰囲気になった時に、携帯電話がポケットの中で震えます


ラインだ

しかもいつものグループラインではなく、個人のアカウントへのライン


森:二次会どうしますか?


ん?

基本的に僕が二次会に行かない事は知っていてくれてると思うのだが、文脈とタイミング的に判断して、これは二次会へ一緒に行きませんかと言うお誘いだと判断


僕:貴方が望むならご一緒しますよ


酔っていたので、少しふざけてみた


森:では行きましょうw

僕:ついていきます、何処までもw


僕は初めて会社の飲み会の二次会へ参加してみる事にした

二次会はカラオケが定番との事


お店への移動途中で斎藤さんが不調を訴えて離脱

何故か僕に森川さんへの伝言を託して消える斎藤さん

託されたので先頭クループまで追いつき、森川さんへ遺言を伝える


僕:斎藤さん、無念の離脱です・・・

森:え?大丈夫なんですか?

僕:本人は周りに気を使われたくない様子でしたので大丈夫でしょう

森:そうですか…残念ですね


会場に着くと津島の姿もなく、何故か天敵のオッサンまでいる始末・・・


森川さんゴメン!

と、心の中で土下座して逃亡する事に決定

首尾よく下駄箱から靴を取り出し、そそくさと退散しようとしたのですが、すんでのところで森川さんに逮捕されてしまった


森:ダメです!

僕:申し訳ないけど帰るわ・・・

森:ダメですって!


僕の腕を両手で抱える森川さん、肘に弾力を感じた気がした


僕:わかったよ・・・行くよ

森:さ、靴なんか脱いで脱いで


そのまま連行されて二次会へ合流

僕はずっと森川さんの隣に鎮座

はたから見れば少し変な感じだったかもしれないが、はばかる事もなくずっと隣で歌う彼女を見ていた

多分、酔っているのだろうと周りの皆は思っていたと言う事にしよう

でもそれは大きく間違ってない

僕は彼女に酔っていたのだから


誰が何を歌ったのかは全然覚えていません

天敵のオッサンもいたが、特に気にならなかった

フワフワと浮いているような感覚だった

今考えれば、この時から僕は彼女の毒に侵食され始めていたのかも知れない


二次会も終わり、各々の路線で帰路に着く

地下鉄組は僕だけなので、ひとりで電車に乗った

すると、また携帯が震えてライン


森:よかったらこれからお茶でも如何ですか?


??????

時刻は23:30

この時間からお茶だと?

暫し思考停止した後に返信


僕:もう電車に乗ってます

森:もうこんな時間だったんですね・・・

森:おつかれさまでした

森:おやすみなさいw

僕:おやすみなさい


改めて思考停止した後、再起動する僕


はぁぁぁぁぁぁぁぁ?

この時間からお茶だと?

あの綺麗な彼女から誘われてるのか?

マジで?


そして気づく


電車降りて戻れば良かったのか?

終電無くなったらどうなったの?

マジで?


そうこうしているうちに最寄り駅まで電車は到着

僕は「マジで?」を心の中で連呼しながら、たまには声に出しながらフワフワと歩きながら家に帰り着いた


時計の針は天辺をまわっていて、家族は既に眠っていた

僕は静かに風呂に入り、そのまま布団にもぐりこんだのだが全然眠れない

布団の中でも「マジで?」を繰り返し、興奮が全然収まらない

外がうっすらと明るくなるのを確認した頃、いつの間にか眠れたようだが、翌朝起きても興奮が収まる事はなかった


あの綺麗な彼女が何故?


最初に飲みに誘われた時とは違い、ネガティブな思考には至らない

飲み仲間としてそれなりに親密になっているので、背中にお絵かきした恐い人が控えているとは思えない

僕がそうであるように、彼女も僕の事を気にしてくれているのかもしれない

そんな事ばかり考えながら一週間が過ぎる頃、僕は大きな勝負に打って出た



後に、この時の真相を彼女に聞いたことがあるのだが・・・


彼女としては、自分から誘った二次会で不快な思いをさせてしまったかもしれないと感じて、フォローの意味でお茶に誘ってくれたらしい

23:30と言う時間については、時刻を確認していなくて、ラインを送った後に思いのほか遅い時間であった事に気づいたらしい

つまり、僕に対して特別な感情はなかったと言う事だそうだ


彼女がそう言うのであれば、それが真相だと言う事にしておいてあげようと思う

僕は全然信用していないが


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