LONG LOVE LETTER

名前ですか？

２０１８・４・２

新年度が始まった

僕のチームは元来４人で行う仕事なのですが、定年で抜けた先人の穴を埋める人材を未だ採用できておらず、３人で仕事を分担しながら平行して採用面接をするような珍しく多忙な日々を過ごしていた

事務チームも同様でしたが、あちらは既に次世代の人材を確保できており、今朝の朝礼で新たに採用された二人の女性が挨拶をした

一人は色白のふくよか

一人は色黒の濃い顔

僕は他人の顔と名前を覚えるのが大の苦手で、この二人についても業務上に必要があれば、いずれ嫌でも覚えるだろうと言ういつものスタンスだ

黒ちゃん・白ちゃん

でも、こんな感じでは覚えていた

彼女達は研修期間を終え、各々の仕事を割り当てられたようですが、白ちゃんは９時に出社して１５時に退社するし、黒ちゃんに至っては１０時に出社して同じく１５時に退社してしまう

対して僕は、８時に出社するものの、９時過ぎには出かけて帰社するのは１６時頃なので、かろうじて白ちゃんは見かけるが、黒ちゃんにいたっては全く見ない日が殆どだったので彼女達の本当の名前を知るのは半年以上先の事となる

なのに何故彼女達の事を、白と黒扱いながらも覚えていたのかは不思議だが、とにかく白と黒がいるのはなんとなく認識はしていた

６月には遂に僕のチームにも新人が入り、９月には移動していく事務員がいたりと、白と黒も交えた歓送迎会が二度あったのだが、僕は人見知りなのでそういう場で積極的に席をまわるタイプではなく、結果として白黒コンビと話しをする事も、彼女達の名前を知る事もなかった

しかも、仕事上彼女達と絡む事はなかったので、特に不都合もなく日常はどんどん流れていった

今となっては、その流れていた日常の時間が惜しくて惜しくてたまらない

出来る事なら時を戻して、その頃の僕に何をすべきなのかを教えてあげたい

その年の忘年会兼送別会

１２月の中旬だったと思います

僕は近距離の出張があり、開始時間間際に会場に着くと空いている席が１つのみ

選択権もなく、その席に座ると隣には白ちゃんが鎮座していました

僕　初めまして、でいいかな？

白　いいと思います

白　ところで、私の名前ってわかりますか？

わからないので答えに窮したが、とりあえず質問には質問で返す事にしてみた

僕　それは置いといて、僕の名前はご存じですか？

白　勿論です

白　須磨課長ですよね？

僕　そうです

即答されてしまったので、往生際悪く抵抗してみる

僕　フルネームは？

白　須磨義明さんですよね？

僕　そうです、よくご存じでしたね・・・

白　だって私は皆さんの提出した書類とか確認してますので

白　名前を知ってるのは当たり前なんですよｗ

僕　そうなんだ・・・

僕　なら知ってても不思議じゃないよね・・・

僕　そうなんだ・・・

どこまでいっても往生際が悪い僕です・・・

白　で、私の名前はなんでしょう？

白　そろそろお答えくださいますか？

僕　鈴木さん！

日本一多い苗字に賭けてみた

白　はぁ？だれですか鈴木さんって？

白　私ショックですー

白　半年以上も一緒にお仕事してるのに苗字も知らないとかあり得ないですよね？

とても怒っているとは思えない表情だったが、失礼と言えば失礼である事に間違いはないので、ここは素直に詫びを入れる事にしました

僕　申し訳ない、今覚えるから名前を教えてもらえないだろうか？

白　まーでも殆ど顔も合わせないから仕方ないですよねー

白　私は斎藤です

僕　覚えた、絶対忘れません

僕　で、下のお名前は？

白　必要あります？

僕　必要です

何故か受けてる斎藤さん

斎　ミキです

僕　斎藤ミキさんね

漢字は後で確認しよう

僕　ミキティーでいいかな？

斎　はぁ？

僕　冗談ですよｗ

僕　斎藤さん、これからもよろしくお願いします

斎　こちらこそです

その後わかった情報

斎藤さんは既婚で子供はいない様子

年齢は多分３０代半ばと思われる

かなりの酒好き

明るく楽しい性格で、多分頭の回転も早い

事務能力は抜群で仕事はかなりできる

白くて丸いと思っていましたが、実はそんなに白くも丸くもない

美人タイプではないが、とても可愛い女性である

ついでにわかった情報

黒ちゃんの名前は森川幸子さん

今日のような事態にならないように、しっかり覚えておこうと思う

仕事上殆ど接点のない斎藤さんは楽しく可愛いい、うちの事務のお姉さまとは全然タイプの違う魅力的な女性だった

次の機会には、黒ちゃん改め森川さんともお話してみたいと思う