第18話

 卓球をして盛り上がり、それぞれで温泉に入り、たっぷり楽しんでチェックアウトしたのが昼の1時。帰りの車内では、後部座席に女性陣が眠っていた。

「……寝ちゃいましたね」

「うん」

 悠真は助手席でナビ役をし、幹也は運転手を務めていた。

「次の信号、左です」

「マッピング能力高いな」

「昔から地図見るの得意なんです。社会科目で地理だけ得意でした」

「岸里ってなんかアンバランスだよね」

「う……」

 得意分野がひどく偏っていることには自覚があった。

「俺も似たようなもんだけど……あ、そうだ。観察日記のことで聞き忘れが」

「え」

「……今ここで内容の朗読と指摘はしないよ」

「は、はい」

「ゼミで修正してるの見て気になってたんだけど……原文と和井田先生に提出するのと、二つ書いてんの? 大変じゃね?」

「ああ、あれはですね。出来事を忘れないよう、夜に日記を書いてるんですんですが……深夜テンションとでもいうのか恥ずかしい思いもそのまま書いちゃうことが多くて……」

 色んな意味で赤面するほかない。

「わかるわかる。俺もよくある。紀衣香相手に血迷うことが、」

「えーと。そういうことなので! ……なので、ですね。最初に書いたテキストファイルを原本にしておいて、コピーしたファイルを提出できる内容に書き直してるんです」

「頑張ってるなー」

「書き直さないと恥ずかしい文章で送っちゃいますから」

「そんなこと言って、またうっかりそのまま送っちゃうなんてやるなよ?」

「あはは、そう何度もミスなんてしませんよ」

「はは、これは邪推か。ごめんごめん」

 ナビをしているうちに知った道に出たようで、幹也は丁寧に礼を言った。

 悠真も会釈を返して地図をグローブボックスに戻す。

「岸里の家に、羽菜ちゃん先輩と乙女さんで戻る。で、大丈夫だっけ?」

「はい。羽菜先輩、まだ僕の家に荷物を置いたままなので……」

 プロジェクターやスピーカー、そのほか細々とした衣服などが残っている。

「温泉決まったのいきなりだったからねー」

「でも、凄く楽しかったです。紀衣香先輩にもお礼を伝えてくださいませんか?」

「わかった。起きたら伝えるよ」

「よろしくお願いします」

「また明日、ゼミでな。良ければ乙女さんとも、大学で」

「はい!」

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