23

少女の言葉に僕はふっと、

港町に残して来た婆ちゃんの顔がよぎった。


「婆ちゃん無事だと良いけど。

 町の人は逃げびたかな?」


彼女はそんな僕を見つめつぶやく。


『心配?』


「それは心配だよ」


『家族を心配するのは当然。

 でも町の人は浜辺に住み着く害虫よ。

 心配じゃない・・・  』


僕は彼女の言葉の意味がわからず、

彼女の真意を探ろうと彼女を見つめた。


彼女は静かに続けた。


『私が浜辺にいたのは、

 はぐれたピーピーとキーキーを助けるため。

 町の人を助けるためじゃない 』


僕は彼女の言葉にその先に深い闇がありそうで、

何もな言えずただ彼女の言葉を聞き続けた。


『ピーピーのパパとママは・・・

 私のパパとママは、

 町の人達に殺されたのよ・・・ 』


そう言ってから彼女は、

何かに気づいたようにハッと我にかえり、

慌てて窓の外を見てアクアボイジャーをはずした。


ピーピーが何か言いたそうに、

「ピーピー」と泣いていた。


『ごめんピーピー。

 ピーピーに聞かせるつもりはなかったの。

 ごめんねピーピー 』


そう言って彼女はうつむきすすり泣いていた。


つないだ手が強く強く握りしめられていた。


何かのきずなを繋ぐように硬く強く。


僕はそんな彼女をうらむ事は出来なかった。


彼女が落ち着くまで僕はただそっと

その姿を見守った。


彼女はうつむいたまま話を続けた。



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