都会では見えないかがやく星空を。



 町の光は星々の輝きを打ち消す。



 田舎いなかに最初に来て気付いた事だ。



その中でもこの浜辺は街灯がいとうの一つも無く、

完全な闇が支配する聖域せいいきだった。



そこから見上げる星々の輝きは、

見た人にしかわからないだろう。



すべてが新次元の輝きでちていた。



僕はその輝きにみいられ、

その星空を何時間も見上げていた。



優しく寄りそう親子星。



決して届かないけど、

たしかにそこにある温もり。



現実の きょうしゅう は心にみ込み、

ゆるやかにまれて行く。



寄せては返す波の音。




      命の鼓動こどう



     地球の鼓動こどう




海は無償むしょうの愛に包まれている。



その重みに深さに浸透しんとうしてゆく。



自分の体の形が無くなっていくような。

世界の中に溶け込むような。



揺りかごにられるよう

優しい波しぶきにいだかれ、

いつの間にか僕は眠っていた。



唐突とうとつあたりがさわがしくなる音で僕は目覚めざめた。



海辺で鳥達がギャーギャーとさわいでいた。



誰か来たのか?



小山にはさまれ雑木林ぞうきばやしを抜けないと来れない

この場所を知る者は少ない。



とは言え警戒心けいかいしんまったくなかった。



都会にくら田舎いなかの防犯意識は極端きょくたんに少ない。



近所のほとんどの家がカギをかけてないし、

だからこそ夜中でも、僕が家を抜け出して、

この浜辺に来れるのだが。



僕はさわがしく鳥がむらがる浜辺に、

近づいていった。



街灯がないとはいえ、

あたりは完全な闇ではなかった。



満天の星々が柔らかく

辺りを照らしてくれている。



僕は足元から伝わる砂の感触かんしょくたしかめながら、

その中を泳ぐように、

波打ちぎわまで歩いて行った。



砂利じゃり感触かんしょくが、

砂漠のそれに変わるのを感じながら、

僕はその場に到着とうちゃくした。



鳥のむらがるその場所に。



僕が近づく気配けはい察知さっちし、

波打ちぎわで固また鳥達が一斉いっせいに飛び立った。



白い影が一斉に夜空にるさまは幻想的げんそうてき

まるで線香花せんこうはなのように夜空にはじけ、

消えていった。



そして鳥の山がいなくなったその場所には、

何かの残骸ざんがいが転がっていた。



怪獣かいじゅう!?



一瞬そう思ったそれは、

もちろん怪獣などでは無く、

見たことの無い生き物のしかばねだった。



まるで、

恐竜時代からタイムトラベルして来たような、

爬虫類はちゅうるいてきなフォルムをした何か。

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る