引き出しの中の人形②
この実家の近所には凛奈という娘が住んでいた。色白で、長い
凛奈は
その話を聞いて、ショックの余り俺は無気力に陥った。まさか、凛奈が難病で、長く生きられないと、信じたくなかったし、受け入れられなかった。一時期、不登校にすらなった。そんな中、凛奈は俺の元を訪ねた。
「涼平君、元気出して! つまらない物だけど、これ、受け取って。ほんの少しの、私の気持ち……」
その時に貰ったのが、そう、この人形だった。量産型の、安物の、別に好きでも無いアニメのキャラクターの人形だったけれども、たまらなく嬉しかった。
「ありがとう、凛奈ちゃん。生きる希望が湧いてきた」
俺は目一杯の感謝を込め、凛奈に言った。
「私は奇跡を信じて闘っているから、だから私を信じて! もし奇跡が起きたら……涼平君と…結婚したい……な」
「うん、信じる。だから……結婚できる歳になったら…結婚しようね」
でも……でも……奇跡は起きなかった。凛奈が俺の元を訪ねた翌日、凛奈は入院した。どうやら容態は想像以上に悪かったようで、
それでも、
「バカ、凛奈っ! 俺に元気を出して欲しくて、嘘言ってただろ!」
「ご…め…ん……だっ…て……」
凛奈の声は
「ありがとう、凛奈。あの人形……大事にするからね」
この『大事にする』と言うのが、あの頃の俺にとっては『
俺は餞別として、凛奈の
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