引き出しの中の人形
加藤ともか
引き出しの中の人形①
「ただいま」
「お帰り、
母の言葉に甘え、俺は家のリビングルームへ行き、ダイニングの椅子に腰掛けた。母がお茶を持って来てくれる。俺が昔、
「ありがとう、母さん」
俺は母に感謝を述べた。
さあ、これから持ち物を整理しよう、俺の部屋に、沢山残っている筈だ――
持ち物の整理は、さながら遺品整理のようだ。
たまにしか帰らない実家だもの、
そして残念な事に、部屋の中に使えそうな物は殆ど残っていない事が分かった。精々、電源タップくらいか? 高校時代の参考書は勿論のこと、小学生時代の通信教材など、
さあ、次はここにあるゴミを始末だ、そう思って机の引き出しを開けた。すると――思わぬものが見付かった。人形だ。小学校時代、友達と共通の話題を作る為だけに観ていたアニメの、しかも安物の人形。この前中古店で、同じ形の美品が百円で投げ売りされていたが、それ程価値が無い。俺の使い方が雑だったのか、破けた箇所さえあり、中の綿が
「
思わず声に出した。例え価値が無かろうと、この人形は、俺にとって何よりも大事な物なのだから。あの頃の事が、
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