第2話

気が付くと知らない部屋の壁に立て掛けられていた。あの勇者さんは聖剣を置いてどこへ行ってしまったのか...暇だな。


(それにしても不便な身体だよな~)


移動が不可能。これが痛すぎる。手足の無い生活より質が悪い。カタカタ揺れるだけしか俺には出来ないのだ。


こんなか弱い俺を使うらしいあの勇者さんとは今後について早めに話をつけたい所だが、とっとと帰ってこないものか...。


(んっ?来たかな)


暫くボケーっと待っていると勇者さんが部屋に入ってきた。


(おーい、勇者さん、聞こえますか~?)


勇者は無反応。やっぱ声は出てないのだろうか?触られてる間は聞こえてたっぽいけど、カタカタ揺れれば来てくれるかな?。


そう思いカタカタ揺れようとして、止まる。いま動いてはならない。何故ならーー。


(うおっ!!すげぇ!生着替えや!)


なんの警戒もせずに服を脱ぎ始めた勇者さんは見られてるとも知らず、ズボンをベッドに脱ぎ捨て白い神聖なパンツを晒す。


(良い足、良い尻してるじゃぁ、ないか)


あれは天使だ。間違いない。そう見とれていると勇者さんは続けて上も脱いでスポーツブラのようなブラに包まれた大きな乳房を解放する。眼福眼福...。


そして部屋着のような服に着替え終わった頃に俺は本来の目的を思い出してカタカタ揺れて勇者様の注意を引く。


「なんだ?聖剣が...まさか敵がくるのか?」


なんか勘違いしてるが、計画通り勇者は聖剣を取って扉に向かって構える。


『あの~勇者さん、勇者さん。あんま強く握らないでもらえます?苦しいです』


「なっ、なんだ!?聖剣が...喋ってる?」


おお!やっとコンタクトに成功した!。


『あっ、はい、そうです。なんか触られてる時しか喋れないんすけどね』


「そっ、そうか...で、どうしたんだ?」


『それがですね~自分こんな剣だから動けないし、触れてないと喋れないわで暇なんですよ。だからてきれば常に身に付けて連れ回してくれると嬉しいな~って』


「別にそれはかまわないが...」


『あっ、後さっきのお着替えシーン良かったですよ~良い身体してますねっ!』


「なぁっ!?いや、武器に怒ってもーー」


『言い忘れてましたけど俺、元は人間です』


そう言うと勇者さんにぶっ叩かれる。それは凄まじい衝撃だった。刀身が曲がったか折れたんじゃないかと思うほどの...。


『ぐわあぁぁあ!!!』


「あっ。おっ、お前が悪いんだからなっ!」


『ぐぅ...ふふっ、いつも通り振る舞ってください...自分は友達みたいな関係を望みます』


そう言い終わると俺の意識は途絶えた。


*


目が覚めると勇者さんの横、鞘に入れられた状態で移動していた。別に怒ってはいなそうだ。連れて歩いてるのが良い証拠だろ。


『勇者さん、おはようございます』


「ん?あぁ、聖剣か。もう痛くはないか?」


『はい、すみませんね』


「いや、こちらこそ。そいえばあの時お前は言っていたな?元は人間だと。あれってどういう意味なんだ?」


『それは俺もよく分かりませんよ。そもそも自分はこの世界の存在じゃないんです。元の世界で死んだのかどうか知らないですけど、気が付くと剣になってた感じです』


誰がなんの目的でか検討もつかない...。


「それは...難儀なことだな。人から剣となり歩くこともできないとはさぞ辛いだろう」


『いえ、そこまでは。前世に未練はありませんし、人の体に戻りたいとは思いますけど、こんな可愛い勇者に使ってもらえるならそう悪い気はしませんよ』


「ははっ、こんな私を可愛いと言うか」


『そりゃもう。抱きしめて好きだ!って告白してお嫁さんにしたいぐらいですよ。まぁ、この姿じゃできませんけどね』


「っ!?そっ、そうか...ありがとう」


赤面させる勇者さん。可愛い...。


『そいえば勇者さん、いまこれどこ向かってるんですか?』


「ん?そうだな...外で素振りでもしようかと思っていたが、お前はどうだ?」


『え?俺使うなら優しくお願いしますよ?』


「ふっ、優しくか。実戦でそんな事は言ってられないぞ?全力に慣れてもらわねば」


『この聖剣は敏感なんですからね?』


「そう言われてもな...」


勇者さんは困ったように剣の柄の部分の先端をトントンと叩く。


『あっ、それ駄目...勇者さん』


「ほっ、本当に敏感だな...使えるのか?」


『どうでしょうね?布でも巻けば行けるかもしれませんよ?』


「布か...試しに包帯でも巻いてみるか」


勇者さんはそう言うと腰のポーチから包帯を取り出して俺にくるくると巻いていく。


「どうだ?これなら大丈夫か?」


『あ~なんか窮屈に感じますけど触られる分には全然大丈夫です』


「...ひとまずはそれで我慢してくれ。必要な時にいちいち巻くようでは使い物にならないからな」


そう言うと無意識なのだろう、包帯の巻かれてない先の部分を勇者さんはトントン叩いてくる。意味無いんやで?それじゃ...。

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異世界転生したら聖剣になっていた件 愉愚怒羅死留 (ユグドラシル) @11202052

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