第266話 大災

俺とジャイアントハーフの聖騎士リンは騎士達を倒しながら、王城にて皇帝を探していた。


騎士達を死なないように倒して、リンが魔槍で「溶かすぞ!」と脅しても、俺が魔王の手甲でタコ殴りにしても騎士達は何も言わず、皇帝の居所はつかめなかった。


「魔王の手甲で殴っても話さないって事は、本当に知らないっぽいな」


「そうですね。身体をちょっと溶かしても話しませんでしたから、本当に知らないのですね」


「ちょっと……?」

俺はリンをジト目で見る。


「えへ」

笑って誤魔化すリン。


「ちょっとって……」

リンに魔槍を持たせたのは間違いだったか、魔槍を持つと人が変わるんだよね。


はぁ……。


リンに両手を溶かされて失禁して気絶している騎士を見ながらため息をつく。


ああ、怖い怖い。


その時。


「皇帝の居場所を突き止めたよー」

影から現れたブラックジャガー獣人のノワ。


「お、何処にいた?」


「地下に行ったらしいですよー」


「地下か! どおりで見つからないはずだ。城から出ていなくて良かったよ」


「行きましょー」


俺とリンはノワの後について王城の地下に向かった。




「この中にいますねー」

王城の地下の最深部にある部屋の前に到着した俺達。


「なんか、いや~な雰囲気だねー」


「うむ、禍々しい何かを感じるな」

腕組みをして扉を見詰める俺とノワ。


「さっさと溶かしましょう」

リンは魔槍を振りかざすと魔力を込めた。


「ちょっ──」


ドカッ! ドロリッ……。


俺が「待て!」と言う前に魔槍で扉を溶かしたリン。


「え? ダメでした?」


「……いや、良いよ。中に入ろう」


俺達は部屋の中に足を踏み入れると、部屋の中には皇帝ドオエと近衛隊長がいた。


「陛下! だ、だ、だだだだ大丈夫でしようか……。何か善くないモノが溢れてきたような……」


「がっはっは、これでいいのだ」


「おい! 皇帝! 何やってんだ!」


「……ん? タクミか。がっはっは、もう遅いぞ。大災は解き放たれた、みんな死ぬのだ!」


部屋の中では、何処からともなく妖しく黒い霧が少しずつ立ち込めていく。


「ナニコレー?」

「気味悪いですね」

そう言いながらリンは「聖騎士の守りパラディンガード」を発動した。


「これは瘴気です」

リンは皇帝と近衛隊長を注視しながら俺に言う。


「瘴気?」


「見てください」

リンが皇帝と近衛隊長を指差す。


「ああああああああ……」

「ぐががががががが……」

皇帝と近衛隊長は膝をつき苦しんでいる。


そして……。


二人の身体がゆっくりと溶けていく。


「た……す……け……えひゃ……」

「ぐげげげげげ……」

崩れていく二人の身体。


「気持ち悪いよー」

「なんだァ、これェ!」


そして、部屋全体を細かい振動が襲う。


ガタガタガタガタガタガタガタガタ……。


揺れはユッサユッサと段々大きくなっていく。


ピキッ!


どこかにひびが入った音がする。


「これってヤバいんじゃない?」

「ヤバいな!」


壁が床がひび割れていく。

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