第245話 移動手段

俺とジャイアントハーフの聖騎士リン、ブラックジャガー獣人のノワ、剣聖ルイの4人はマサイタ王国に戻ってきて、城で一休み中だ。


マサイタ王国の王都で待っていたノワの祖父ケント。現在はマサイタ王国の統治者兼お目付け役としてサトウ王国から派遣している。


ミヤキザ王国の元暗部の隊長だけあって、国内や周辺国にも目を光らせているのだ。


ケントジジイ、次はギミヤ王国に行って魔王軍と帝国同盟軍の戦いを直接見たいのだが、ギミヤは遠いな。なんとかならないか? あまりにも時間がかかると戦いが終わってしまう」


まあ、時間があればゆっくり各国を見て周りたいところだけどな。ああ、こんな時に勇者ハヤテの転移のスキルがあれば楽なんだけどなぁ。


「ふむ……。そうですな、以前使ったヒッポグリフはどうですかな?」


「ヒッポグリフは3頭しかいないだろ?」


「そう言えばそうですね……」

ケントはルイをちらりと見る。


「わ、私! 一緒に行くわ! 置いていかないでください~!」

俺の左手をルイは両手で確りと握った。


「あ、ああ……」

ポリポリと頬を掻く俺。


「あああああああ、今、置いて行こうか迷ったでしょ」

俺の左手を左右に振るルイ。


「ははははは」

俺、乾いた笑い。


「まあ、それは冗談として。実は良いのがいるのです。取って置きのヤツです」

ケントが優しくルイの両手を俺の左手から外して俺に言った。


「冗談なのぉ!」

拗ねるルイ。


「ほう! 取って置きか」

ルイを無視してケントに聞く俺。


「はい。取って置きです」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「コイツか! 成る程たしかに取って置きだ」


翌日、城の庭でケントに紹介されたのは……。


ワイバーン!!!


前足が翼になっている翼竜だ。翼を広げると12mぐらいか。首が長く後ろ足は鷹の鉤爪のように見える。


「どうやって仲間にしたんだ?」


「サトウ王国の亜人のリーダー達は戦場でレベアップして、今やキング種やその上のエンペラー種になっていますから、ワイバーンを捕獲して従属させる事も出来るようになりました」


「おお! 凄いな、皆頑張ったんだな」


「そうですな、牧場にいた初期のメンバー達もその御言葉を聞けば喜ぶでしょう。……それから、コイツなら4人を乗せて飛ぶ事が出来ます。しかも飛行に特化した竜種ですから、ヒッポグリフより速いのです」


「おお! 良いね」


「それからヒッポグリフより高く飛んで、雲の上を飛行出来ますので、見つかる心配もあまりありませんし、仮に見つかっても手出しは出来ません」


「成る程ね、それは良いな。後は降りる場所だな」


「それも問題ございません。ギトチ王国とマフクシ王国、ギヤミ王国には、サトウ王国に従属している亜人が多くいますので、彼らの集落で降りて、そこから目的の場所へ行って下さい」


「へえ、亜人は魔王軍に従属していると思っていたが、違うんだな」


「魔王軍に占領されたリアオモ王国やターキ王国、テイワ王国の亜人は確かに魔王軍に参加していますが、どうやら魔王軍では使い捨てに近い扱いらしく、まだ魔王軍に占領されていない国では、サトウ王国の傘下に入りたいとお願いされました」


「そうか、それは良かったな。魔王軍に占領された国の亜人達はどうなんだ?」


「人類から身を守る為には、魔王軍の傘下に入るしか選択肢がなかったから、魔王軍に入ったみたいですが、一応の成果があって、集落の領地を保証された事と、戦争の余波で滅んだ村なども与えられたので、今更サトウ王国に寝返る事はないでしょう」


「うむ、分かった。取り敢えずギミヤ王国にある前線に近い亜人の集落まで、ワイバーンで行く事にしよう」


「承知しました、集落の長達に連絡しておきましょう。そう言えばギミヤの亜人達は今、コボルトのコウキが統括しているので、是非顔を見せてやってください」


「おー、コウキか懐かしいな。分かった顔を出すように伝えてくれ」

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