第244話 帝国第三王女ミフジ2
勇者ハヤテと第三王女ミフジ達と出会った町、チマルノーを出た俺達4人(俺タクミ、ジャイアントハーフの聖騎士リン、ブラックジャガー獣人のノワ、剣聖ルイ)は、帝都ダチヨ方面に向かうべく駅に行こうとしていた。
「タクミ様、このまま、帝都ダチヨに行くのですか? 先ほどの件があったので、ちょっと拙い気がするのですが……」
剣聖ルイが俺に尋ねてきた。
「ん~……」
ああ、そうだった。帝国ダチヨに行こうと思っていたんだが、あれだけ第三王女に帝国と喧嘩を売る事を言って、このままダチヨの入場門に並ぶのは拙いな。
帝国と魔王軍が戦う前に、帝国に致命的なダメージを与えてしまいそうだ。
「帝都には行かない事にする」
「え? 何処に向かうのですか」
一番前を歩いていたリンが俺に尋ねて振り返った。
何処に行こうか……。
帝国と魔王軍が戦っているのをこの目で見ておいた方が良いからなぁ。
「……ギミヤ王国だ」
「ギミヤ王国!!! 今魔王軍と帝国同盟軍が戦っている前線じゃないですか!」
ルイが驚く。
「そうだよ、前線だ。リン、ギミヤ王国に向かうぞ」
「畏まりました」
と言ってリンが立ち止まりルイを見た。
「ああ、ギミヤ王国に行くならあっち。一度マサイタ王国に戻って、ギトチ王国とマフクシ王国を経由する経路ですね」
ルイは俺を見た。
「遠いな……」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
オトキ帝都皇帝の執務室。
「皇帝陛下、ミフジ王女がみえました」
ドアの外から、執務室を警護している近衛騎士の声がした。
「入室を許可する。入って来い」
ドオエ皇帝は近衛騎士に告げた。
近衛騎士が執務室のドアを開けると、意気消沈したミフジが頭を垂れて執務室に入って来た。
「勇者ハヤテが両手両足を斬り落とされて、逃げ帰って来た件の報告を聞こうか」
「申し訳御座いません…………」
ミフジは土下座して、泣きながらタクミとの件について皇帝に報告した。
………………。
「馬鹿者おおおおお!!!」
皇帝は手元にあった鉄製のペーパーウェイトを、ミフジに投げつけた。
ドカッ!!
「きゃあ!」
額にペーパーウェイトが当たり血を流すミフジ。
「サトウ国が大軍を動かしたぞ! このままでは、タクミが言う通り魔王軍と挟撃されるではないかああああ!!!!」
「……申し訳御座いません」
「ハヤテには帝国で数少ないエリクサーを使用して治療をしたが、精神的な疲労があり直ぐの出動は難しい」
「……申し訳御座いません」
「ミフジ!! ハヤテを籠絡しているのではなかったのか?」
「……申し訳御座いません。タクミの正体と実力を見誤っておりました。まさか、サトウ国の実権を握り、勇者を軽く凌駕する実力を持っているとは……」
「ええええい! 煩い! して、今後はどうする気だ!」
「はっ! ハヤテが復調次第、魔王を倒す為に魔王国に潜入致します」
「くっそおおおおお!!! 魔王軍は同盟軍に任せて、両者が疲弊した頃に帝国軍を派遣する計画だったのに……。対サトウ王国に帝国軍を出動させる事になったのだぞ」
「申し訳御座いません……」
「ああああ! もう良い。下がれ!!!」
「……失礼致します」
ミフジがよろよろと立ち上がり執務室を後にしたのを見届けて、皇帝の隣で微動だにせず終始無言で立っていた宰相に、皇帝が話し掛けた。
「宰相、何か策はないか?」
「サトウ王国には何度でも同盟の交渉を行いましょう。同盟を結べなくとも、停戦でも良いのです。そうすれば帝国軍を魔王軍に向かわせる事が出来ます。サトウ王国は魔王軍を倒した後、ゆっくり倒せば良いかと……」
「ふむ、そうだな。サトウ王国に外相を派遣しろ。王女でもなんでもタクミが欲しい物はくれてやれ」
「承知致しました」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます