第233話 総ギルドマスターキアラ3

「ああああああ」

白目を剥いて泡を吹き悶絶する総ギルドマスターのキアラ。


「なんだ、元SSSランクもたいしたことないな」


俺は後ろを振り返ると、机の下に隠れているエルフのババアに声を掛ける。


「おい、ババア! そこにいるんだろ。コイツにエリクサーをかけろ」


しかし、地震の避難訓練じゃ無いんだから、机の下に隠れるって何だよ。


「なむなむなむ……、ひゃあ、許してたもう。逆らう気はないのじゃ」


何だか拝んでいたババアが、俺に声を掛けられた事に気付いて謝り始めた。


「何でババアがここにいるか知らんが、ババアに敵意が無い事は知ってる。危害は加えないから、コイツを復活させろ。ちょっと強く殴り過ぎて、話を聞けなくなっちまった」


「はぁ、分かったのじゃ」


ババアはヨロヨロと立ち上がり俺の方に歩いて来た。


ババアはエリクサーを取り出すと、キアラに振りかけた。


みるみるうちに両手両足が生えて、殴られた顔が元に戻るキアラ。


「う、うううう」


目を覚ますキアラ。


俺はキアラに馬乗りになって、キアラの両手を両膝で押さえて動けない様にしている。


バチン!


そして俺は魔王の手甲を装備した右の手の平で、キアラの頬をビンタした。


「ぎゃ! いたたたたたた。何だ、何が……、タ、タクミか」


「おう! お前は俺達を始末する為にここに呼んだのか?」


バキッ!


気絶しないように手加減して左手で殴る。


まあ、痛さ100倍だからそれでも凄く痛いはず。


「ぐはっ! そ、そんな事はない。魔王が攻めて来ているのに、そんな事はしない」


「そうじゃ、なんでも魔王軍は北のドーホッカイから出陣し、リアオモ王国、ターキ王国、テイワ王国を占領したらしいのじゃ」


ババアは恐る恐るキアラの言葉を補足する。


「ふ~ん」


魔王? 魔王が攻めて来ているのか。


「じゃあ、何でお前は剣を抜いて俺に襲ってきた? 冒険者達も俺達を襲ったぞ」


ドゴッ!


右手でキアラを殴る。


「ぐふっ……、タクミの実力を見定めようと思ったのだ……」


「それだけの為にこんなに冒険者達を集めたのか?」


ガツッ!


左手で殴る。


「ぐひぃ、そん……な事は……ない……」


「どうやら、魔王軍は各国から派遣された同盟国軍が対応するが、軍とは別に少数精鋭の勇者パーティーで魔王を倒すらしいのじゃ。そのメンバーを決めようとしていたらしいのう」


勇者? 俺以外にも勇者がいるのか。


「ほうほう、そうか、勇者パーティーの参加なら断る! 話はかわるが、俺達を呼び出していきなり襲い掛かるのは理由を問わず許さないからな」


「え? ま、まさか……」


キアラは嫌な予感がしたのか、顔を左右に振り、涙目でイヤイヤの動作をした。


キアラを殴る。

バキッ!

「ぐひゃ、いたっ……」


キアラを殴る。

ドカッ!

「あひぃ、もうやめてくれ……」

涙が溢れてくるキアラ。


キアラを殴る。

ズゴッ!

「ぶへっ……、頼む……」


キアラを殴る。

ドゴッ!

「ああっ、助けて……」


バキッ!ドゴッ!ズゴッ!バスッ!バキッ!ドゴッ!ズゴッ!バスッ!バキッ!ドゴッ!ズゴッ!バスッ!バキッ!ドゴッ!ズゴッ!バスッ!バキッ!ドゴッ!ズゴッ!バスッ!


「ああああ……、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」


心が折れたキアラだった。


「さて、ババア。ソイツらも直してやれ」


俺は立ち上がり後ろを振り向き、両手両足を斬られ蠢く冒険者達を指差した。


「え! こんなにエリクサーはないのじゃ…………」


(エリクサーはエルフの秘蔵の薬だって説明したのを、きっとタクミは忘れているのじゃ。そんなの何本も有るわけないじゃろう。はぁ、困ったのじゃあああああ)

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