第234話 対魔王軍
俺達4人はウカブキにある冒険者ギルドの建物から出て歩いている。
俺の前を歩いているのは、ブラックジャガー獣人のノワとAランク冒険者で剣聖のルイ。
俺の右斜め後ろからジャイアントハーフの聖騎士リンが、いつものように無言でついてくる。
「ノワさん、有難う御座いました」
ルイがノワにお礼を言う。
「あー、ボークって奴に弾き飛ばされた事かなー? 助けたのは気にしなくていーけど、ビビって動けなかったのはダメだねー」
「そ、そうですよね。SSランクの冒険者にすっかり気圧されました」
ショボンとするルイ。
「ルイもさぁ、かなりレベルが上がって強くなってるから、SランクやSSランクのヤツともそこそこ戦えると思うぜ」
俺は後ろからルイをフォローする。
「そ、そうですか。そう言っていただくと少し嬉しいです。次があれば頑張ります」
「まあ、ビビって固まる事がないようにな」
「はい……。ところでタクミ様、キアラ総ギルドマスターとSランク以上の冒険者達にあんな事をして、大丈夫でしょうか」
「ん? 報復されないかって事?」
「いやいや、あの戦力を一掃するタクミ様に報復出来る戦力が、冒険者ギルドにあるとは思えませんので、報復される心配ではなく……」
「なんだろ?」
「人類にとっての対魔王戦力が大幅にダウンしたのではないかと……」
「対魔王かぁ。ルイは魔王と戦うつもり?」
「え? タクミ様は魔王と戦わないのですか? 悪魔を倒しているので敵対していると思っていました」
「ん~、悪魔を倒したのは成り行きだからね。魔王軍と戦うかどうかはまだ分からんな。直接喧嘩を売って来たら戦うかもね」
「ええええええ! 魔王は人類を滅亡させる存在ですよ」
「ああ、ルイはその話を信じているんだな」
「え? 『その話』って、それ以外の説があるのですか?」
「説ねえ……、その話は恐らく各国の国王や皇帝達が、自分達に都合が良いように流した嘘だな。所謂、情報操作って奴だ。魔王は各国を傘下にしたいみたいだけど、人類を滅亡させる気はないらしいよ」
「えっ! そんな事は……」
「俺はそう神に聞いた」
「神!!!!」
「少しは考えてみろよ。エルフのババアが言ってたろ。『魔王軍がリアオモ王国、ターキ王国、テイワ王国を占領した』ってね。人類を全滅させる存在なら『占領』じゃなくて『壊滅』させているはずだろう」
「た、確かにそうですね」
「ルイ、いつもの考え方だよ。魔王を人間だと思って考え直してみな」
「……そ、そうか! 魔王軍が何処かの王国軍だとして考えれば、普通の、……戦争?」
「そうだ。種族差別の垣根を取っ払えば一般的な戦争とかわらない。戦争はどちらの国が正しいかなんて分からんよ。まあ、サトウ国に利がある様に動くか、俺に敵対した方を敵と見なすか。そんなとこだな」
「成る程……」
「まあ、とは言っても魔王と勇者は気にはなるな。ノワ、魔王と勇者を探ってくれ」
「畏まりー!」
ノワはそう返事した後、一瞬で姿を消した。
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