第230話 デーモンスレイヤー

俺とブラックジャガー獣人のノワ、ジャイアントハーフの聖騎士リン、Aクラス冒険者の剣聖ルイの4人は、数日前よりオトキ帝国にあるクシンジュ領の領都ウカブキに来ていた。


「タクミ様、冒険者ギルドに行かなくて良いのですか?」


ルイが俺に心配そうに聞いてくる。


「まだ約束の時間じゃないし、大丈夫だ」


「でも10分前ですよ」


「良いって、出来るだけギリギリに行くよ」


「そ、そうですか」


俺がウカブキに来た初日に冒険者ギルドに寄った際、「魔王に関する話があるので、来て欲しい」とギルド職員に言われて、今日冒険者ギルドに行く約束をしていた。


通常なら「断る!」と言って拒否するところだが、魔王に関する話と聞いて気になったので熟慮の末、話を聞く事にした。


「しかし、総ギルドマスターからの呼び出しに失礼があったら拙いのでは……」


ルイは独り言をぼそぼそと呟いている。真面目だから、総ギルドマスターの呼び出しを重く受け止めている様子だ。


「ルイ、タクミ様に任せておけば良いんだよー」


ノワは串焼きを食べながらルイの肩を軽く叩き、リンは無言で俺の後ろからついてくる。


「じゃあ、そろそろ行くか」

俺はノワが串焼きを食べ終えるのを見届けて、3人に声を掛けた。


俺達が冒険者ギルドに行くと、職員に案内されたのは「大会議室」。


「タクミ様がお見えになりました」


職員がノックの後、会議室内からの了承の言葉を貰いドアを開ける。


スクール形式に配置された机の後方にあるドアから会議室に入ると、30人以上の一癖も二癖も有りそうな男女が訝しげに振り向いた。


「はあ? 何だコレ」

俺は眉を顰め目を細めて会議室内を見回す。


「おう!良く来たな。俺が総ギルドマスターのキアラだ」

立ち上がり講師席から声を掛ける髭面の男。


「……」

俺は無言でキアラを睨む。


「諸君に紹介しよう。本日のゲスト、ドラゴンスレイヤーでデーモンスレイヤー・・・・・・・・・である特級アンタッチャブルのタクミだ!」


「デーモンスレイヤー!!……」


キアラの紹介でざわつく会議室。


「タクミ、俺の横の席が空いている。前に来てくれ」


「断る!」


キアラの誘いを断る俺。


「魔王に関する話を聞く約束のはずだが? 見せ物になるつもりは無い。……帰る」


俺は振り返り会議室を出る。

ノワ、リン、ルイの3人も無言で俺に続く。


すると俺の前に突然現れた細身の男。


「ちょ、待てよ。お前はデーモンスレイヤーらしいな。キアラ! デーモンスレイヤーのこいつを倒せば勇者パーティーに入っても良いよなぁ!」


「あ"あ?」

俺と細身の男が睨み合う。


「エ、SSランクの冒険者、常闇のボーク?」

剣聖ルイが呟く。


「何だ! それなら俺がやる」

「俺に任せろ」

「アタイが可愛がってやるわ」


会議室の冒険者達が立ち上がり俺の方に歩いて来る。


「ひぃ、タ、タクミがナンデココニ……」

エルフのババアがおののく。


「良し! 俺もタクミの実力を見てみたい。訓練場で模擬戦だ!」

キアラが叫ぶ。


「はあ"? 断る! 勝手な事を言うな。俺は見せ物じゃない。これ以上とやかく言うなら命を懸けろよ」


俺は会議室内に向き直り威圧した。


なんなんだよ。本気で怒って来たぞ。

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