第229話 総ギルドマスターキアラ
オトキ帝国クシンジユ領の大都市ウカブキチヨの冒険者ギルド。
ここは、オトキ帝国の冒険者ギルドの総本部となっている。
尚、ウカブキチヨと言う都市の名は呼び難いので、通称「ウカブキ」と呼ばれている。
その入り口の前に立つ女一人。
ミヤキザ王国の王都にある冒険者ギルドのギルドマスターであり、元Sランク冒険者で「災厄」と呼ばれているエルフのババア。
「ちっ、なんと面倒な事になったものじゃ」
ババアは独り言を言いながら冒険者ギルドに入ると、勝手知ったるようにギルドの中を歩いて行く。
そして迷わず2階の会議室に進みドアを開ける。
会議室内の机はスクール形式に配置されており、既にほとんどの席は埋まっていて、ババアに振り向く人達。
「お! ババア、よく来たな」
講師席に座る男が立ち上がり、ババアに声を掛けた。
その男、元SSSランクの冒険者でオトキ帝国の総ギルドマスターであるキアラと言う。
髭面の強面で猫科の猛獣を思わせる男。
「ふん、人類の重大な問題で緊急召集とならば、来ざるを得まい」
「まあ、好きなところに座ってくれ。何なら俺の隣でも良いぞ」
講師席には椅子が3つ並んでおりキアラは真ん中に座り直す。向かって右の席には女性が座っており、左の席は空いていた。
「遠慮しておくのじゃ」
ババアはそう言うと空いている席を探し。
「ちょっと御免よ」
真ん中あたりに空席を見つけて座る事にした。
「さて、
キアラは会議室に集まった人達を見回す。
「うむ。否は無いようだな」
満足げに頷くキアラ。
「諸君!この度は良く集まってくれた。大陸中のSランク以上の冒険者と元Sランク以上の者が勢揃いするのは、俺がこの国の総ギルドマスターになって初めてだが、なんとも心強い事よ」
「お題目はいいから早く始めろよ」と言いたげな無言の視線を受け流し、キアラは話し始めた。
「諸君も知っているとは思うが、魔王軍が北の大地ドーホッカイから南下を始めて、既にリアオモ王国、ターキ王国、テイワ王国は魔王軍の手に落ちた」
「………」
冒険者達は黙ってキアラを見ている。
「魔王軍は各国から派遣された同盟国軍に任せるとして、我々冒険者は軍とは別に、帝国が新たに召喚した勇者と共に少数精鋭のパーティーで魔王を倒す事とした」
「勇者!」
「おお!」
やる気に満ちた目でキアラを見詰める冒険者達。
「今回はその人選を行いたい!」
「俺が行こう」
「我が相応しいだろう」
「私が行きます!」
次々と大声で名乗りを上げる冒険者達。
自信がありSランク以上に登り詰めた冒険者達。ここで魔王討伐パーティーに入り、討伐すれば英雄になる事は確実。
「ふむ」
満足げに冒険者達を見回したキアラ。
バン!
「静粛に願います!」
キアラの隣に座る女性が手のひらで机を叩くと大声で叫んだ。
不承不承静まった会議室。
キアラは再度口を開く。
「今代の魔王は、72柱の悪魔を召喚する魔王ソロモンだ。実績からするとデーモンスレイヤーを優先するべきだろう」
「デーモンスレイヤーじゃなくても悪魔ごときに遅れはとらん!!」
憤る冒険者達。
「がはははは、まだ時間はあるぞ、文句がある奴は悪魔を討伐してこい!」
冒険者達を煽るキアラ。
「デーモンスレイヤー……」
デーモンスレイヤーと聞いてタクミを思い出し、不安にかられるエルフのババア。
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