第220話 ダンジョン2

炎を纏った雷撃が目の前を赤く染めたが……。


あれ、何ともない。


「なんぴとたりともタクミ様に傷ひとつ与えません!」


ジャイアントハーフの聖騎士リンが、魔槍アムドゥスを掲げ、『聖騎士の守りPaladin guard』を発動していた。


「流石だリン、有り難う」


「当然です」


リンは満面の笑みで胸を張っていた。


俺は魔王のブーツを履いた右足で空を蹴る。


回し蹴りだ。足が異常に長ければ、丁度ベビーデビルの首辺りを薙ぎ払う軌道。


蹴りは届かないはずの距離であるが、ベビーデビルの首をもぎ飛ばした。


2体のベビーデビルの首が転がる。


報酬は『悪魔の尻尾』、呪われるアイテムの様だ。


要らねー。


「さあ、次いってみよう!」


20階に中ボスは悪魔の使い。白い服に紫のマント、ひとつ目で角の生えたお面をつけて、両手にモーニングスターを持っているが、攻撃は魔法だけ。サクッと倒して報酬は『雷の杖』……。

持ってるよー。


25階は地獄神官。悪魔の使いの色違いで赤いマント。サクッと倒して報酬は『魔導師の杖』……。


炎が出るらしいが、マグマの杖の劣化版みたいだ。


要らねー。


さて、問題の30階。


「ノワ、冒険者達はここのボスをクリア出来ないんだろ」


「はい。ボス部屋では、ボスを倒さないと出る事が出来ない為、ボスの情報はギルドにはありませんでした」


ブラックジャガー獣人のノワが、申し訳無さそうに俺に頭を下げる。


「いいよ、ノワは何も悪くない。行けば分かるさ」


ボス部屋の扉を開けた。


ボスはひとつ目の巨人サイクロプスだった。


頭の上に角1本、筋肉質の身体に青い毛皮を右肩から腰に巻いてベルトで留めて、左手には巨大な木の棍棒を持っている。


「ぐおぉぉぉぉ!」


叫び声をあげて棍棒を振りかざし、どすんどすんと足音をたてて迫る巨体。


いつも通り時を止める。


かなり大きいので、通常の攻撃は届きそうもない為、アイテムボックスから聖剣を出した。


聖剣の刃が光に包まれ、ビームサーベルの様に光が伸びて、サイクロプスの首を横薙ぎに斬ろうとしたが……。


ガキン!


首で聖剣の光が止まる。


堅いなぁ。


ガキンガキンガキン。


何度か繰り返したが、結果は同じ。

こりゃ冒険者達では敵わないよ。

聖剣で斬れないなんて……。


どうしよう……。


普通に考えて弱点は目だよなぁ……。


「トォー!」


俺はジャンプして、一番高く上がったところで、魔王のブーツで空を歩く。


目指すはサイクロプスのひとつ目。


空で両足を前後に開いて、聖剣を後ろに構えて、聖剣をサイクロプスの目に突き刺す。


そして捻る。抜く。


死んだか? 


うっ、フラグっぽく言っちゃった。


ちょっと心配……。


聖剣をアイテムボックスにしまい、かわりに雷の杖をアイテムボックスから2本出した。


目が潰れて空いた穴に2本の雷の杖を突き刺す。そして、2本の杖から同時に雷撃を放った。


身体の中に直接雷撃を喰らわせれば、流石に倒せただろう。


「トォー!」


俺は空中から飛び降りて、雷の杖をアイテムボックスにしまい、時を動かした。


ズドーン!!


倒れるサイクロプスの巨体。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る