第207話 カソウ大将軍2

「ちょ、ちょっと待ってくれ。お主らには、敵わない事は充分分かった。どうすれば、許して貰える?」


カソウ大将軍が、両手を前に出して、止まって欲しいゼスチャーをする。


「ん? 敗北を受け入れると言う事か?」


「うむ、まあ、そう言う事だ」


「ふ~ん、白旗を上げてる奴らを殺す趣味は無いから、敗北は受け入れよう。しかし、俺達に剣を向けたり、矢を放ったり、殺そうとしてたからなぁ。全面降伏だぞ。ん? お前大将軍だよな? そんな権限あるのか?」


「……権限は無い」


「だったら、降伏自体が成り立たないんじゃないか?」


「国王を説得する。無条件降伏だが、この国は残して欲しい」


「ふむ。この国をまるっと俺に寄こして管理も任せると言われても困るからなぁ。国を潰さなくても良いっちゃあ、良いんだが……、取り敢えず国王と会っておくか」


「いや、儂が説得するのを待ってくれないか?」


「ははは、それは無理だろう。国王に『無条件降伏しました』って言って、『そうか、仕方ないな』って納得する訳がない。死に物狂いで王座にしがみ付くに決まってる。直接俺が引導を渡さないと、この城ごと消滅する事になる。さあ、行くぞ」


俺はノワを振り返る。


「ノワ、ザニイ将軍を連れて来い。発端はこいつだ。国王の前に連れて行こう」


「分かったー」


ノワは闇の触手を展開し、ザニイ将軍を再度拘束した。


「ひぃ、すいません、すいません、すいません、すいません……」


俺達はカソウ大将軍を連れて王城に入った。


何があったか分からず驚く城内の人々を素通りして、国王のいる執務室に向かった。


城内の人々は変わり果てたザニイ将軍を見て驚くが、カソウ大将軍を見て黙って見過ごした。


国王の執務室にの前まで来た。


「ちょっと待ってくれ、儂が先に国王に───」


「止めておけ、納得せんだろう。俺に任せろ」


俺はカソウ大将軍を押し止め、執務室の扉を開けた。


「何事だ! ノックぐらいしろぉ! 無礼者!」


山の様な書類が乗る執務机の椅子に腰掛けた国王が、此方に顔を向けて怒鳴る。


国王の隣には宰相らしき老人が立っていて、此方を見る。


「カソウ大将軍、どう言ったご用件ですかな? その者達は何者ですか?」


宰相は眉を顰めて、カソウ大将軍と俺達をじろりと見た。


「──」

カソウ大将軍が話すのを遮り、俺が国王と宰相に喋り掛けた。


「俺は、タクミだ。この男がこの国のザニイ将軍が、俺に喧嘩を売って来たので、この国と戦っていたが、カソウ大将軍の降参を受け入れた。全面降伏を受け入れろ!」


「「はぁ?」」


呆れて声が出ない国王と宰相に、俺はノワに合図して、ザニイ将軍を国王と宰相の前に投げさせた。


ドサッ……。


変わり果てたザニイ将軍の姿を見て、違う意味で驚き声が出ない国王と宰相。

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